もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

新MD構想の行方と岩屋毅議員

2020年07月30日 | 与党

 イージスアショア配備断念に伴って、新しいミサイル防衛(MD)構想を模索する自民党検討チームの活動が停滞している。

 停滞の根本は敵基地攻撃能力保持の是非にあると思うが、検討チーム内では岩屋毅前防衛大臣に代表される専守防衛堅持論者の厚い壁が取り沙汰されている。岩屋議員の主張は、従来の矛(米)・盾(日)論を堅持しようとするもので、日本を取り巻く安全保障環境や軍事環境の劇的な変化(悪化)から目を背ける退嬰的なものに映る。現在でさえも、尖閣諸島に対する中国脅威の顕在化、朝鮮半島における軍事バランス崩壊の懸念、北朝鮮の核武装と高度に近代化されたミサイルの実戦配備等を考えれば、常識的には安保条約改定前後の1960年代には日米両国が合意していた矛盾理論は破綻しつつあると考えるべきではないだろうか。それよりも、アメリカが自国第一とするモンロー主義に回帰して南シナ海以北における米軍の軍事力は相対的に低下して矛の打撃力が鈍っていることと極東における軍事バランスを対中経済戦争の交渉材料にしかねないアメリカの変質を等閑視しているのではないだろうか。検討グループで有力とされる新MD構想は、「レーダー・発射機分離配備」「メガフロートにシステムを搭載」「イージス艦の増強」が主なものとされているが、その何れにも具現化には少なくとも5年、常識的には10年以上かかると考えられるので、その間の米軍の動向、とりわけアメリカが日本のために矛を振ってくれるか否は予断を許さないものと思う。以前から言われていることであるが、専守防衛の致命的な点は、武力攻撃を受けて初めて防衛力行使が可能となるために、最初に攻撃を受けた国民は守れないことにある。瀬戸内寂聴氏は9条堅持を持論とされており、そのためには一部の国民が外敵によって殺されるのはしょうがないとの覚悟を述べられているが、大多数の護憲・専守防衛堅持論者に共通するものではないだろう。マイナンバー制導入に際して徴兵制復活のためと反対し現在も議席を保持している議員も存在するが、中国コロナの給付・支援金の支給作業遅れは当該制度の未整備と指摘されることに対して沈黙している。中曽根康弘氏は、政治家は将来の歴史の被告席に座る覚悟を信条としたが、頑なな専守防衛で国民に被害が及んだ時、岩屋氏や野党党首は被告席で裁かれる覚悟で政治活動をされているとは思えない。

 岩屋氏には、IR汚職の1員として中国企業(500ドットコム)から100万円の賄賂を受け取ったという気懸りな面がある。アメリカの変質が明らかな今も、防衛大臣として四囲の緊迫した軍事情勢に接した今も、専守防衛堅守の姿勢を崩さない議員の心底に、利敵行為を良しとするダーティーな焔は無いのだろうか。少なくとも瓜田に沓を履いた議員の動向には注視する必要があるように思える。