イギリスのメイ首相が、EU離脱の頓挫から6月7日に保守党党首と首相を辞任すると表明した。
次期保守党党首・首相には、離脱強硬派のジョンソン氏が有力視されている。しかしながら、誰が・どの党が首相に就任したとしてもEUが離脱協定の再交渉には応じないとしていることから、合意なき離脱か、再度国民投票を行ってEU残留の民意を得るという2つの選択肢しか道はないように思われる。イギリス与野党の主張を単純化すれば、①国民投票の結果であるのでEUからは離脱する、②アイルランド以外の国境を閉ざす、③EU諸国とはEU内の関税ルール適用を求める、ということに集約されると考えるが、金は出さずに移民も阻止するが関税は優遇して欲しいとするもので、とてもEUが容認できるものではない。現在、五月雨式に行われている欧州議会選挙でもEU懐疑派やEU解体派が各国で軒並みに得票を伸ばしていることから、イギリスに甘い離脱を認めれば離脱が相次ぐという危機感をEUは持っている。メイ首相の辞任に対して、氏の調整力や交渉力不足とする意見も多いが、もともとEU離脱を問う国民投票でも賛否は拮抗しており、拮抗した民意が選ぶ下院議員も拮抗した勢力図になり、首相個人の調整力で克服できる命題ではなかったと思う。3年間に及ぶ猶予期間を経ても統一できなかった国論を、離脱最終期限である10月末までに纏めることは不可能と思われるので、最終的には前述したEU残留・合意なき離脱のいずれかになると思う。EUに残留した場合はEU内での発言力と信頼感は低下して往時の存在感を示取り戻せることはないであろうし、一度逃げ出した海外企業が戻ってくることもないだろう。合意なき離脱に至った場合は、移民を含む人的流入は防げるであろうが経済的には大きな痛手を受け、既に中国資本の影響下にある原発や電力インフラが足枷になって更なる中国支配に甘んじなければならなくなり、米中関税戦争の余波をまともに受けることになる。かって”7つの海を支配する””日が沈むことのない帝国”と謳われた大英帝国は、欧州戦線におけるアメリカの助力要請、第2次大戦後の貴族・指導者階級の腐敗・堕落によって凋落したが、大英帝国という体面をかなぐり捨てて現在の地位を回復したものの、安易な民意妥協と衆愚政争の果てに再び没落の瀬戸際に立たされているように思えてならない。
韓国では、政権が作為した”反日”というテーゼが独り歩きして、もはや制御不能となり国際的な孤立化の道を辿っている。イギリスと韓国の現状を見ると、国民の多くは目先の利には敏感に反応するが、その前途に横たわる大きな不利益を耐え忍ぶ覚悟までは持っていないように感じられ、国家戦略の選択を直接民主制に委ねることには大きな不安を感じるところである。日本においても、有効な対案を持たないにも拘らず安全保障や普天間基地移設に反対する勢力が存在し、彼らの主張はEU離脱問題を政権交代や首相の座を射止めるための政争の具と矮小化した勢力の主張にダブって見える。
国連総会は英国に「6か月以内に英領チャゴス諸島の植民地統治を終えるよう」勧告を決議した。
チャゴス諸島は、英領であるがアメリカの対中東・インド洋地域に対する最重要拠点であるディエゴ・ガルシア島を含んでいる。ディエゴ・ガルシア島の帰属展望に関しては、3月24日附の本ブログで「英領終了・基地消滅のおそれ」を書いたが、あながち杞憂とは思われない進展を見せている。3月24日の時点では、①イタリアとイギリスに中国勢力が拡大したこと。②イギリスの合意なきEU離脱が観測されること、という側面から書いたものである。チベット併合やインドのカシミール州への武力侵攻を見るまでもなく、中国は力の均衡が破れた地域やアメリカの軍事力の空白時期を狙って我意を伸長する戦略を得意としている。今回の国連決議の提出国がセネガル等のアフリカ諸国であり、チャゴス諸島とは数千キロも離れているとともに、必ずしも人道支援や人種差別撤廃に熱心でない国々であることから、アフリカ諸国に大きな影響力を持つ中国の使嗾を受けた提案であることは確実で、中国のインド洋戦略の一環と観るものである。決議は賛成116、反対6、棄権56であり、日本は独仏等とともに棄権に回ったと報じられているが、オーストラリアは米英とともに反対票を投じている。オーストラリアの反対表示はかっての英連邦としての紐帯と見る向きもあるが、チャゴス諸島がオーストラリアと中東地域の中間に位置することから、安定的な原油確保を優先した結果であろうことは疑いのないところと考える。日本を考えると、第一次オイルショックを契機として原油確保のためのシーレーン防衛が叫ばれて半世紀近くが経過し、その間にはペルシャ湾掃海のための掃海艇派遣、海賊対処のための護衛艦派遣や多国籍軍への給油支援を行ってきたが、原油シーレーンの大部分を占めるインド洋安定のためには核心の要因であるディエゴ・ガルシ基地存続を左右する今回の決議案に対して、棄権という消極的な反対しか表明できなかったのだろうか。消極的な反対では英米からの支持は得られないだろうし、提案諸国や中国からは反対者と観られ、将に蝙蝠外交の極致で得られるものは少ないと思うものである。この背景には、円満外交という美辞に隠れた事なかれ主義が外務省内部に残っているせいではないだろうかと危惧するものである。
提案国のアフリカ諸国といえば、海やクジラとは無縁の内陸国でありながらIWSで反捕鯨を唱える等、国際社会では常に大国の代弁者として行動することで有名である。地理上で見れば一目瞭然であるが、提案国のセネガルとチャゴス諸島はアフリカ大陸の反対側に位置しており、チャゴス諸島の帰属が海上輸送に対して殆ど影響を受けない。にも拘わらず、人道上の見地からと島民の帰島を言い立てることは中国の世界戦略を代弁しているのは確実である。外務省も、国連決議に対しては中国の覇権阻止の意思を鮮明にして議決に臨んで欲しいと願うものである。
auやソフトバンクなどの国内携帯電話会社が、ファーウェイ新型スマホの販売や受付を停止・延期すると発表した。
理由はアメリカの禁輸措置で新スマホ搭載の基本ソフト「アンドロイド」や関連アプリが使用できない可能性が浮上したためである。アンドロイドを開発したGoogle社は、既に販売された端末に搭載されているソフトに対するサービスは継続するとしているがアップデートやセキュリー対策が打ち切りになる可能性は排除できないと考える。ファーウェイ社はアメリカからの輸入規制措置によって既に滞りを見せているチップ等の電子部品について「国内生産で対処できる」と強気を示しているが、基本ソフトが使用できなければ携帯端末は軽金属の塊に等しく大きな打撃となることは否めない。基本ソフトは何年も掛けて改善されて来たために多くの特許で守られており、それらの特許に抵触しない基本ソフトを新たに開発することは不可能に近いとともに、使用法についてもユーザーに定着しているために、ファーウェイ製品から他社製品に乗り換えるユーザーが急増するのは確実であろう。ファーウェイ(中国政府)は、中国国内に対しては、国際特許を無視して海賊版アンドロイドを使用することだろうが、他の国において販売することは不可能である。これまで中国は、中国で活動する海外企業に対して中国企業(中国政府)に技術移転を強要して技術力を蓄え・高めて、中国製造2025に結実させると暗に公言してきたが、今回のアンドロイドの提供中止は同計画にも少なからぬ影響を与えるのではないだろうか。米中の関税協議の土壇場で中国が技術移転強要に代表される知的財産保護を蹴った背景には、今回のgoogle社の決定を事前に察知して知的財産保護で一歩譲っても同様な事象は避けられないので従来の方針に戻ったのかもしれないと考える。
アメリカは、中国製のドローンが飛行データを無断で製造元に送信する機能を持っており、中国政府と情報が共有されているとも警告した。ドローンは近い将来物流端末での利用拡大が見込まれているが、アメリカの主張するような飛行データを中国に送信できる機能は、中国がドローンの飛行を変更させたり無力化することをも併せ持つと考えるのが当然で、物流テロが警戒される。日本でもドローンに対して航空法改正を始めとする各種規制が見直されているが、メディアが取材用ドローンについて規制の適用除外を求める等、ドローンに起因するテロに対する危機感は薄いようである。中国政府と中国企業の主張には眉に唾する必要があるのでないだろうか。
菅官房長官は記者からの質問に対して「内閣不信任案の提出は解散の大義になる」と述べて、衆参同日選挙の可能性に含みを持たせた。
質問の背景には、野党が国会会期末に内閣不信任案を提出することが慣例となっていることが挙げられる。毎回のことであるが、重要法案の廃案を狙ったりポイントを稼ぐために、否決されることが明らかな内閣不信任案が出されることに飽き飽きしていたが、今回は些か趣が違うようである。モリ・カケやデータ改ざんの傷も癒え、安倍政権の支持率が高値安定しているとともに、参院選においてさえ野党共闘が頓挫しそうな現状から、与党内からは衆院を解散して衆参同日選挙を望む声が聴かれたが、我田引水的な解散は政権与党横暴の誹りを免れないために指導部は解散には口をつぐんでいた。しかしながら、慣例的な内閣不信任案を提出した場合にも内閣が”渡りに船”と解散することを明言したため、野党は安易な恒例行事すら打てなくなってしまった。更には、現在の政局では大向こうを唸らせるような不信任理由を見出せないとも思う。今、政府を糾弾して欲しいのは、韓国に対する弱腰であり、中国伸長の対応策であるが、中韓の薬籠中に取り込まれた感がある野党が不信任理由とすることは考えられない。憲法改正問題を理由とすることも考えられるが、野党自身が憲法審査会の議論はおろか開催にまで反対していることから強烈なブーメランを浴びることは確実であろうし、政府与党が改正案を明示していない状況では理由たり得ないと思う。
内閣不信任案と内閣解散は、それぞれに”伝家の宝刀”と呼ばれるが、伝家の宝刀であればこその絶妙の抜刀タイミングと鋭い切れ味が要求される。今回の官房長官談話を契機として、会期末に内閣不信任案を提出するような慣例は終わりにして欲しいものである。