もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

アジアの火薬庫

2021年10月26日 | 歴史

 10月22日にアメリカと台湾外交部高官との電話協議が行われたことが報じられた。

 協議のテーマは、国連や他の国際機関への台湾参加であるとされている。1,971年に台湾(中華民国)が国連を追われてから50年経過したが、先進国の中国疲れに伴って国連・国際機関に台湾を迎え入れようという空気が徐々に高まっている。
 中国コロナ禍の教訓として、感染症のパンデミック対処に空白地帯があってはならないことが明らかとなったために、G7は既に台湾のWHOオブザーバ参加支持を共有しているが、気候変動などの場にも台湾参加を認めようとの空気が広まっている。
 一方の中国は、25日に習主席が国連加盟50周年に際して「国際舞台への台湾招聘は重大な内政干渉で、国連機関への参加は国連総会の決議が必要である」と演説したとされている。
 現在、台湾を国家として承認する国は少数であるので、国連総会決議となれば台湾の国連加盟や国連機関参加が否決されることは明白であるように思える。
 総会決議に依ることなく台湾が国連・国連機関に名を連ねるには、どのような方法があるのかと調べて見たら、永世中立のために国連に加盟しないスイスが、1946年に事務総長から「総会のオブザーバとして参加するための恒久的な招待状」を得ていることを知った。この非加盟国に対する恒久的な常任オブザーバの地位は、国連の慣行として認識されてバチカンにも適用されている。しかしながら、パレスチナ自治政府が、国連加盟国イスラエルとの係争を抱えているために同様の処置を得られていないことを考えれば、台湾も加盟国中国との関連から国連・国連機関にオブザーバとして席を得ることは中々に困難であるように思える。
 さらに条約加盟国であれば自動的に参加できる国際機関にあっても、前提として台湾が条約に参加できる国家と認められる必要があり、正式参加については国連と同様に困難であるように思える。

 途上国に対して、経済援助と引き換えに台湾排除票を得ている中国であるが、債務と引き換えに空港・港湾施設を租借したり、地下資源の全てを収奪する新らしい植民地政策の危険性が知れ渡り、ひと頃のような無法が通りにくくなっている。反面、機密情報共有の枠組みファイブ・アイズの一角であるニュージランドが中国寄りに転舵するなど、新しいシンパシーを獲得しているように、中国を巡る情勢は複雑な様相を見せてもいる。
 中台の武力衝突の危険性もさりながら、それ以外についても中台関係はアジアの火薬庫の状況を呈してきたように思える。


中露合同訓練と帽振れ

2021年10月25日 | 自衛隊

 新華社通信が配信した、中露合同演習を終了して両国艦隊が分離する画像を見た。

 中露合同演習は、2012年から毎年(昨年はコロナ禍で中止)行われており、「海上聯合2021」と銘打たれた今年の演習には中露艦それぞれ5隻が参加したとされている。
 防衛省発表等によって合同演習等の概要を振り返ると、10隻の艦船は10月11日に対馬海峡を通峡して日本海に、10月14~17日にウラジオストック周辺海域で潜水艦・露空軍機も参加した合同演習、18日に津軽海峡を通峡して太平洋に、その後日本列島に沿って南下、23日に大隅海峡から東シナ海に入ったとされている。
 このように、ほぼ日本を一周したことで、中露海軍は自衛隊の対応力や通信能力について少なからぬ情報を得たものと推測されるが、防衛省・海空自衛隊が正しく評価して適確な対応策を採ってくれるものと期待している。

 本日のお題は、海上自衛隊の「お別れ」や「見送り」の儀式についてである。
 「お別れ」や「見送り」の際、映画等ではハンカチを振る場面もあるが、一般的には手を振ることが多いと思う。今回新華社から配信されて映像でも、中露艦隊の分離に際しては両艦乗員がお互いが手を振り合っている。
 海上自衛隊では「お手振り」ではなく、旧海軍の伝統に倣って帽子を振り「帽振れ」「帽元へ」という立派な号令詞もある。真珠湾攻撃のために発艦する攻撃機に対して乗員が、ラバウル基地を離陸する攻撃機に山本長官が端正に、帽子を振る映像でお馴染みであるが、現在でも「洋上給油を終えて離脱する米艦に」「桟橋での見送り者に」「離任する指揮官や退艦する乗員に」「定年退職者に」・・・と、数限りない場面で「帽振れ」「帽元へ」の号令が掛かるが、実は「帽振れ」は礼式規則には定められていない儀礼である。
 何故に海軍・海上自衛隊では「お手振り」ではなく斉一に帽子を振るのかは定かではないが、勝手に手を振る行為は、視認距離内の僚艦に対する場合は手旗信号と誤認されたり信号員の手旗信号を見落とす危険性が有ることや、運用作業時にあっては部下に対する手信号と錯覚されることを予防する意味から、始まったのではないかと考えている。
 自分も幾度となく「帽振れ」の号例を掛けたり「帽振れ」に送られたが、「帽元へ」で着帽した際の寂寥感や区切り感は、殊更であったように思う。

 最後に、忘備録として中露合同演習の参加艦船を記す。
〇中国海軍
 ・レンハイ(南昌)級ミサイル駆逐艦1隻
 ・ルーヤン(旅洋)Ⅲ級ミサイル駆逐艦1隻
 ・ジャンカイ(江凱)Ⅱ級フリゲート2隻
 ・フチ(福池)級補給艦1隻
〇ロシア海軍
 ・ウダロイⅠ級駆逐艦2隻
 ・ステレグシチー級フリゲート2隻
 ・マルシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦1隻

 


立共の確執露呈

2021年10月24日 | 野党

 枝野氏と志位氏の街頭演説において、立民と共産の協調が破綻しかけている現実が報じられた。

 報道によれば、共産党の志位委員長は「野党4党との政策合意と選挙協力によって、枝野政権に於いては共産党の政策が実現できる」と共産党の実質的な政権(立法)参加を大々的に述べているのに対して、一方の枝野代表は枝野政権における共産党の閣外協力の範囲・程度はおろか、選挙協力にさえ触れないとされている。
 「羊頭狗肉選挙と呼ばれようとも、選挙に勝利すれば何とかなる」と考えていたであろう枝野氏に対して、プロパガンダに長けた共産党は獲得した「選挙協力・閣外協力という曖昧模糊とした地歩」を「抜き差しならぬ政権合意言質」にまで高めて、来たる枝野政権は「容共・親共政権」と着色することに成功しつつあるように感じられる。
 更に枝野氏は、共産党が「日米安保破棄」を選挙公約に盛り込んだことから、演説の大半はコロナ・経済で、外交・安保にはほとんど触れないともされているが、富の再配分や格差是正は共産主義の階級闘争の原点であることを思えば、それらを声高に云えば云うほどに容共・親共理念と理解され、「やはり選挙協力は政権合意・連立政権の布石・前触れであったのか?」との疑いを益々濃いものにしてしまう。
 理念を埒外とした選挙協力という民主主義の禁じ手を指してしまった枝野氏は、今更ながらに臍を噛んでいることだろう。「ローマは一日にして成らず」が格言として永らえているのは、目標が高邁であればあるほど道程は厳しく、安易な近道などは無いことが真理であるからではないだろうか。

 2党代表の街頭演説をもとに立民支持者の投票行動を推測すれば、赤松Gに代表される急進左派支持者は統一の共産党候補に投票するであろうが、強固な立民支持であっても穏やかな中道左派路線を求める支持者は、棄権若しくは国民・維新に投票する可能性が大きいと観る。また、エネルギー政策に対する不満から統一候補支援を見送った電機労連のように、自主投票とする単産も増えることも予想される。
 宣伝巧者の共産党は、「ソ中を始めとする社会主義国とは全く異なる社会・共産主義国を目指す」として、共産党独裁の全体主義とは一線を画すソフトな社会主義国家を目指すとの広報に躍起であるが、権力に目が眩んだ枝野氏は騙せても、賢明な有権者を騙せるとは思えないのだが。


金門島砲撃と尖閣諸島

2021年10月23日 | 中国

 バイデン大統領が「アメリカは台湾を守る責任を持つ」と発言した。

 バイデン氏は、8月にも同様の発言をしたが直ちに政府高官が「従来の戦略的曖昧政策の変更ではない」とした経緯があり、今回も報道官が政策変更では無いと火消しに大童である。一連の発言はバイデン氏の痴呆に由来すると片づけるのは簡単であるが、「隠すより現れる」の結果であり米政権内部では台湾防衛について相当にツッコんだ議論が行われているのではと思っている。
 台湾防衛のシナリオの一つが、1958(昭和33)年、米国のダレス国務長官の台湾訪問を前に起きた第2次台湾海峡危機(金門島砲撃事件)である。
 1958年8月23日、中国軍は中華民国(台湾)領の金門島に対し上陸侵攻を窺わせるに十分な火砲459門による砲撃を開始、2時間で4万発・23日だけで5万7千発もの砲弾を金門島に打ち込んだ。台湾軍は直ちに応戦するとともに、アメリカも最新鋭戦闘機F104と空対空ミサイル「サイドワインダ」を緊急供与して制空権の確保を図かるとともに、金門島への補給のための制海権を維持するために空母7隻(ハンコック、レキシントン、シャングリラ、プリンストン、ミッドウェイ、ベニントン、エセックス)を急派した。まさに一触即発の状態であり、米軍ではソ連からの報復攻撃をも考慮した上で中国本土に対する戦術核攻撃も検討されたとされている。
 実質的な金門島砲撃は双方に450名の死傷者を出して10月5日に中国の一方的宣言で終結したが、それ以後も1979(昭和54)年1月1日の米中国交樹立時までの約21年間にわたって、毎週月・水・金曜日の0800時から30分間に砲撃が継続されたが、終盤には炸薬ではなく宣伝ビラを詰めた砲弾が無人の山地に打ち込まれるという国際社会へのアピールに注力された。
 金門島(金門県)は、台灣の西方100km・中国の厦門東岸から僅か2km沖合に位置する12の島で構成され、総面積は153㎢・人口13万人の飛び地で、欧米が実施する自由の航行作戦航路より遥かに中国寄りに位置しているので、金門県や馬祖県まで含めた台湾全土を防衛するためには、アメリカとしても相当の覚悟が必要であるので「曖昧戦略」にならざるを得ないのが実情に思える。

 日本にとって金門島砲撃事件には見逃せない事実がある。それは、米軍が本格的支援に先立ち台湾に対して「金門・馬祖の放棄」を提案したことである。時のアメリカ大統領は先の欧州戦線の最高指揮官で共和党のアイゼンハワー、さらに当時の米軍は中国軍など問題にしないほど強力であったが、それでも本格的な支援には躊躇している。結果的に米提案は、台湾の反対と台湾軍の強硬な反撃によってアメリカは本格支援に踏み切ったわけであるが、核を持ち通常戦力でも米軍に肩を並べようとしている中国と弱腰の老民主党バイデン氏という現状を見ると、本格的に中国が尖閣に牙を剝いた時にアメリカが「尖閣放棄」を提案してくる可能性無きにしも非ずと覚悟しておかなければならない。その際、アメリカを本格支援・介入に動かし得るのは、日本政府・国民の領土維持の覚悟であり、自衛隊の奮闘であることを教えているように思える。


総選挙結果に期待

2021年10月22日 | 社会・政治問題

 総選挙告示後3日経過したが、既に選挙結果の予測が盛んである。

 自分自身には結果の予測は不可能であるので、報道各社の予測を「概ね外れることが定番のプロ野球解説者のシーズン前予想」と同程度と割り切って眺めているが、報道機関の体質・社是によって若干は異なるものの、現時点では自民党が過半数(233議席)を獲得することでは一致しており、衆院の全常任委員会で委員長と過半数の委員を確保できる「絶対安定多数(261議席)確保」に届くとの予想もある。
 また、今次総選挙で政権交代を呼号している立憲民主党は微増にとどまり、共産・維新が漁夫の利を得ての倍増を予測する報道も多い。このことは、選挙のみの協力と言明していた枝野氏が告示直前に「共産党の閣外協力容認」を打ち出したことで、反自公の受け皿としての存在価値を自ら放棄したことによることが大きいと思っている。
 勿論、選挙は水物と云われるように地滑り的大勝利の可能性は双方にあるが、立民微増と予測される背景には、日米安全保障条約破棄を選挙公約に、自衛隊違憲を綱領に掲げる共産党との協力に、漠然とした「左傾不安」を感じる有権者が多いことを示しているように感じられる。
 枝野氏の昨今の常套句は「ブレる自公、ブレない立民」であるようであるが、枝野氏が「ブレずに目指す日本国」の姿が一向に見えない。北朝鮮がSLBMを発射しても、中国が極超音速ミサイルを発射しても、多数の中國空軍機が台湾領空を侵犯しても、敵基地攻撃能力や長射程巡航ミサイルの整備に反対するのみならず、共産党の意を受けるかのように在日米軍の弱体化に肩入れし、中国人の土地使用規制を骨抜きにする外交・安全保障姿勢、根本的には憲法の変更を必要とするLGBTの社会的地位確立や教育基本法についても、憲法論議すら拒否する現状では、健全な有権者は枝野立民に投票する気にはならないだろう。
 未だに立民への政権交代を希求する意見の多くは、新自由主義打破による所得漸増であり「貧者・微力であっても国のために」とする意見は見当たらないように思う。

 高市総理でない今、自分が今回の総選挙結果に望むのは、自民党が過半数を若干割り込んで、維新が倍増し、自民+維新で絶対安定多数を得る展開である。永田町のこれまでから見て直ちに自公連立解消とはならないだろうが、維新が連立の一角を占めることで公明党の発言力(ブレーキの具合)を低下させることができると思っている。公明党を政権から外すことは、中国に対する明確なメッセージになるだろうし、何より、国民の福祉よりも教祖に忠実な鵺の如き宗教者を国政中枢から排除できる。
 教祖とは、日蓮・創価学会会長のみならずカール・マルクスも含んでいることは言うまでもない。