もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

予防拘禁を学ぶ

2021年10月16日 | 社会・政治問題

 不可解で残忍な事件が相次いでいる。

 愛媛県新居浜市では一家3人が「電磁波攻撃をやめろ」と云う53歳の男に刺されて死亡、山梨県甲府市では長女に失恋した同じ高校に通う19歳少年が50代夫婦を刺殺・放火、上野駅では出所して間もない男が行きずりの男2名を刺傷、・・・。一連の犯人に共通していると思われるのは「心に何らかの闇」を抱えているらしいことが窺われるもので、「予防拘禁」が必要な一面を持っているのでは?と考えて、予防拘禁について調べて見た。
 予防拘禁とは、「犯罪常習者や触法精神障害者などによる犯罪その他の触法行為の予防のために拘禁する刑事司法上の処分をいう」とされているが、刑期満了後に引き続き拘禁することや、逃亡等のおそれのある被告人の拘禁を含める主張もあるらしい。
 現在でも「予防拘禁制度」は各国に存在しているが、多くが思想犯・国事犯やテロ活動家の隔離を目的にしているようで、途上国では司法判断に依らず行政権限だけで予防拘禁する国もあり、中国のウイグル族収監も予防拘禁の一亜種かとも思える。
 日本では警察官職務執行法、精神保健福祉法、少年法で予防拘禁に近い制度が存在するとされており、警職法では「精神錯乱又は泥酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼすおそれのある者」について、原則24時間(最大5日間)保護できる規定があり、かっては「トラ箱」と呼ばれていたと思っている。
 精神保健福祉法では「入院させなければ、精神障害のために自身を傷つけ、または他人を害するおそれがある者」について、都道府県知事や政令指定都市首長や精神科病院管理者が、措置入院又は緊急措置入院(72時間)、医療保護入院(期限なし)、応急入院(72時間)できるとなっている。
 少年法で虞犯少年(一定の不良行為があって、その性格又は環境から罪を犯すおそれがある少年)を、家庭裁判所が少年院等に送致することも予防拘禁とされるらしい。
 トラ箱送りや少年院送致については、概ね世間も納得するところであるが、精神保健福祉法による精神病院収容については、刑法犯の裁判で「刑事責任能力の有無」が度々争われるように精神科医の判断もまちまちで、かつ基本的人権との兼ね合いにも論が分かれるために、実施は困難であるのではないだろうか。

 現在予防拘禁の必要性が取り沙汰されるのは、精神疾患者や薬物中毒者による犯罪であるが、少年A(酒鬼薔薇聖斗)事件や池田小学校事件のたびに予防拘禁の必要性と強化が叫ばれるものの、一部の団体や関係者の抵抗が極めて強く、野放しに近い状態であるように思う。
 加えて、テロの礼賛や教唆に近い言動も「表現の自由」のもとに規制されない現状を考えると、近い将来には治安が悪化し、「子供だけの通学」や「女性の夜間独り歩き」を危険とする列国並みの治安社会となる危険性もあるので、予防拘禁についても考えるべきではないだろうか。