褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 フリック・ストーリー(1975) 先日亡くなられたジャン=ルイ・トランティニャン主演です。

2022年06月19日 | 映画(は行)
 先日ヨーロッパ映画の名作に多く出演したジャン=ルイ・トランティニャンが亡くなった。たまたま彼が死亡したことを知った前日ぐらいに見た映画が今回紹介するフリック・ストーリー。タイトル名にあるフリック(Flic)とは警察の俗称。本作はフランス映画なのだが原題はFlic Storyで英語が使われている。
 ちなみに本作はアラン・ドロンジャン=ルイ・トランティニャンの二大スターの共演。アラン・ドロンは30歳代半ば、ジャン=ルイ・トランティニャンは40歳ぐらいと役者として最も充実している時。今の映画好きの人にはジャン・ルイ=トランティニャンと聞いても誰だ?となるが、俺のブログでも彼の出演作ではベルナルド・ベルトルッチ監督の暗殺の森離愁、ミヒャエル・ハネケ監督の愛、アムールをブログに挙げているし、他にもクロード・ルルシュー監督の恋愛映画の名作男と女、コスタ・ガブラス監督の政治サスペンス映画Z、ルネ・クレマン監督の仁義を感じさせるアクション映画狼は天使の匂い等は観ているし多くのヨーロッパの名監督の作品に出演している名優だ。
 本作は犯罪サスペンス映画。どうやら実話を原作にしているからか、それほど捻りがあるわけではないが出世欲丸出しのアラン・ドロン演じる刑事、脱獄しても犯罪を繰り返して刑事に情報を差し出すような人間を迷わず拳銃で殺す凶悪犯がジャン=ルイ・トランティニャン

 それではストーリーの紹介をできるだけ簡単に。
 戦後間もない1947年のこと。恋人と結婚するために早く係長に昇進したいと思っているボルニッシュ刑事(アラン・ドロン)に新たな事件を任される。それは戦前から人殺しを繰り返していたエミール(ジャン=ルイ・トランティニャン)が脱獄したので国家警察の威信を賭けて捕まえること。ボルニッシュ刑事は昇進のチャンスとばかりにエミール逮捕に乗りだすが、エミールは高級レストランで金持ちの客から宝石類を強奪し、ボルニッシュ刑事の追及も難とか逃れていたのだが・・・

 何と言ってもジャン=ルイ・トランティニャンの表情を変えずに、すぐに拳銃を取り出して無表情で射殺してしまう冷酷さが良い。アラン・ドロンもいつもの如く格好良いのだが彼も犯罪者役の方が個性を発揮するので本作では少し損している印象がある。
 ストーリーのテンポも良いし、普通にサスペンス映画として面白い。しかし俺が本作を観ていて特に驚いたのが、ジャン=ルイ・トランティニャンはジョン・マルコヴィチに似ているし、それ以上にアラン・ドロンがジャック・ニコルソンに相当似ていることに気付いた時は、少々笑ってしまった。
 昔の映画でありながらそれほど刑事と凶悪犯の対決という設定に新鮮味がないが、今や大ベテランのハリウッドの名優と似ているかを確かめたい人には映画フリックス・ストーリーをお勧めとして挙げておこう。

 監督はジャック・ドレー。これまた本作と同じくアラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンド(昨年享年88歳でお亡くなりになりました)のフランスの二大スターがタッグを組んだボルサリーノが面白い

 
 
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映画 犯罪河岸(1947) 良質なフランス製サスペンス映画

2022年04月11日 | 映画(は行)
 漢字四文字のタイトル名で「はんざいかわぎし」、「はんざいかぎし」・・・結局何と読むのかわからなかった。読み方はわからなかったが、映画の方は人物の描写が素晴らしく、また人間の悲喜こもごもが描かれており、人情を感じさせる。そして殺人事件が起きてからフランスを代表するジャン・ギャバンと並ぶ名優であるルイ・ジューヴェ演じる刑事がバリバリの存在感で引っ張る。色々な名作に出演しているが、この人が出てくると映画が締まる。

 主な登場人物は4人だが、殺人事件を巡っての各々の思惑が描かれることによって一筋縄では行かぬストーリーの紹介を。
 頭は禿げかけていて、見た目は冴えないピアニストである夫のモーリス(ベルナール・ブリエ)だが、けっこう可愛くて、色気がある場末の二流歌手であるジェニー(ジュジー・ドレル)という妻が居るのだが、モーリスは嫉妬深いためにジェニーに近づいてくる男には苛ついているところを見せる。何かと喧嘩が絶えない夫婦だが、2人は愛し合っている。
 そして彼らの階下に住んでいるのがモーリスの幼馴染みであり金髪美女で独身のカメラマンであるドラ(シモーヌ・ルナン)。ドラはモーリスを好いているが、ジェニーとも非常に仲が良い。

 ある日の事、ジェニーはドラの部屋で写真撮影をしていると映画会社の社長で金持ちの老人ブリニョン(シャルル・デュラン)から映画出演させてやるから、会わないかと言われる。そのことが気に食わないジェニーの夫のモーリス。ブリニョンとジェニーが会う前にモーリスが現れ、ブリニョンに喧嘩を売り結局話はおじゃんになる。
 しかし、出世欲が強いジェニーがモーリスにばれないようにブリニョンの自宅へ行こうとしていることを知り、怒りや嫉妬に駆られたモーリスは拳銃を持ち、アリバイを作ってからブリニョン宅へ行くのだが、ブリニョンは頭から血を流して死んでいた。驚いたモーリスはその場を去ろうとするのだが、目の前で車を盗まれてしまい、何とか走って家へ帰る。モーリスはジェニーがブリニョンを殺害したと思っているのだが、やっと現れたルイ・ジューヴェ演じるパリの刑事アントワーヌだが、彼はモーリスがブリニョンを殺害した容疑者の第一候補として捜査を開始する・・・

 モーリス、ジェニー、ドラの麗しき仲間意識に涙が出そうになる。モーリスは完全にジェニーがエロ爺であるブリニョンを殺害したと確信しているのだが、決してルイ・ジューヴェ演じる刑事に妻が犯人であることを言わない。そしてジェニーはドラに対して「私がブリニョンを殺したのよ」と言ってしまい、警察へ行って自供しようとするのだが、その時のドラは「そんなことをしたらモーリスが悲しむから警察へ行かないで」なんて言うところなんかは女同士の友情、意地、幼馴染みのモーリスに対する熱い想いを感じることができる。しかも、ドラはジェニーのためにブリニョンの自宅へ行ってジェニーの指紋を消したり、証拠品を燃やしたり、ジェニーが置き忘れたマフラーを持って帰ってやったりする。このあたりのモーリスとドナのジェニーに対する愛情や友情は感動もの。しかし、そんな3人を抜群の推理力と行動力を持ってルイ・ジューベ演じる刑事が追い詰める。
 単なるサスペンスに終始した映画ではなく3人の男女のそれぞれの思惑を考えるだけでも切なくなるし、またルイ・ジューヴェ演じる刑事にしても、なかなか面白い冗談をいったりするのだが、彼の今までの人生には苦労が付きものだったことに、人間を描いた奥深いサスペンス映画だということに気付かされるのが良い。
 事件の結末はここまで読んだ人はもうわかったと思うかもしれないが、実はかなり意外な結末を迎える。正直なところ犯人が誰か推理しながら観る映画ではないので、その手のタイプの映画を期待すると失敗するが、人生を感じさせるサスペンス映画としてはハマる人にはハマるだろう。今回は人間の悲喜こもごもを感じさせるサスペンス映画として犯罪河岸をお勧め映画として挙げておこう。

 監督はアンリ=ジョルジュ・クルーゾ。フランスを代表するサスペンス映画の名手。ナチスドイツの侵攻によって多くのフランスの映画監督はアメリカへ逃げたが、この人はフランスに留まって映画を撮り続けた。ナチスドイツの影響を感じさせる心理サスペンス密告、ホラーのようなどんでん返しの妙を感じさせる悪魔のような女、メガトン級のスリルを感じさせるハラハラドキドキさせる恐怖の報酬がお勧めです。


 

 
 


 

 



 











 



 


 
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映画 波止場(1954) これこそ男の中の男です

2022年03月03日 | 映画(は行)
 ついにロシアのプーチン大統領が、ワケのわからん理由でウクライナに侵略を開始した。世界はウクライナを助けろ。そして、ロシア国内の中にもプーチンが武力を行使したことについて批判している人がたくさん居るはずだが、正義を信じるならば勇気をだしてプーチンをひっ捕らえて鉄槌を下せ。
 なかなか平気で人殺しをするような奴に表立って批判することは勇気がいるし、しかも殆どの人間は心の中では批判はしたいが、凶悪な権力者に対して命を賭してまで盾突くことができない。こんな偉そうなことを書いている俺自体が、実は全くの臆病者なのが情けない限りだ。さて今回紹介する映画波止場だが、ギャングの不正にたった一人で立ち向かう男のストーリー。プーチンを怖がっているロシア人には是非観て欲しい映画だ。

 正義と良心の呵責に悩み、そしてボロボロに殴られ、蹴られても立ち上がる男のストーリーの紹介を。
 ニューヨークにある波止場が舞台。元プロボクサーのテリー(マーロン・ブランド)は兄のチャーリー(ロッド・スタイガー)と一緒に、港湾の労働組合を支配するギャングのジョニー(リー・J・コッブ)の手下として働いている。ジョニーは日雇い労働者をピンハネして働かせ、組合費を高くカツアゲし、港湾の利益を殆ど独占していた。
 ある日の夜、テリーの友人のジョーイがアパートの屋上から突き落とされて殺されてしまう。ジョーイは労働組合の不正を犯罪調査委員会で暴露するつもりだったのだが、先手を打ってジョニーの手下どもによって殺されたのだ。ジョニーはジョーイ以外にも自分にとって邪魔になる者は殺害して口を封じ込めていて、多くの労働者たちも殺されるのが怖くて誰もジョニーの不正を告発しようという気になれないでいた。
 ジョーイの死体の側で彼の妹のイディ(エヴァ・マリー・セイント)は泣き崩れていた。結果的にジョーイの殺人に関わってしまうことになってしまったテリーは、悲しみに暮れているイディを見て、良心の呵責に悩まされ、イディに好意を抱くようになる。しかし、イディはテリーが兄の死について何かを知っているとにらんで質問攻め。自分は関係ないと言い張るテリーだったが、イディの事を愛するようになったテリーは、勇気をだして犯罪委員会でジョニーの支配する港湾労働組合の不正、ジョーイの殺人について真実を述べるのだが・・・

 次第に良心に目覚めだすテリーだが、運命は彼に厳しい現実を突きつける。ボスのジョニーはチャーリーに弟のテリーを殺せと指示し、結局弟を殺せなかった兄のチャーリーは見せしめの如く無惨にも殺される。最初こそは同じく兄を殺されていたイディは随分強気に出ており、不正を告発できないテリーに対して弱虫扱いしていたのだが、イディはこの場所がどれほど恐ろしい場所か理解してしまい、テリーと一緒に遠くの西部へ逃げて暮らすことを望み始める。しかし、兄チャーリーを殺されたテリーはボスのジョニーに対して復讐心で一杯だ。そしてテリーは逃げることなくジョニーに立ち向かっていくのだ。イディとテリーの心情が逆転してしまう構成がなかなか上手い。
 そして、勇気あるテリーの行動はさぞかし労働者の仲間達から賞賛されるのかと思いきや、自分の命が惜しい労働者達はテリーを遠ざける。俺がテリーなら金髪の綺麗なネエチャンであるエヴァ・マリー・セイント演じるイディと一緒に遠くへ逃げてしまう所だが、テリーは男の中の男だ。テリーの行動を今のロシア人は見習え。そして、本作にはカール・マルデンが演じるカトリックの神父がいるが、彼の言葉の数々が本当に素晴らしい。テリーを突き動かしたのは無惨に殺された兄の姿もあるが、神父が放つ言葉の数々によってテリーは自らの信念に火が点いたように思える。俺はキリスト教ではないのに、なぜかイエス様に見守られている気分になった。
 骨太なドラマを見たい人、弱者が強者に向かって行くストーリーが好きな人、二十世紀最高の俳優であるマーロン・ブランドに興味がある人、何時までも色あせない名作映画を観たい人・・・等に今回は映画波止場をお勧めしておこう

 監督は名匠エリア・カザン。多くの名作を遺した監督ですが、マッカーシー旋風の赤狩りは彼の人生に暗い影が付きまとい続けているだけに、少しばかり彼の人生を知ると今回紹介した波止場に対して色々と違った角度から見ることができます。他にお勧めは伝説と化したジェームズ・ディーン主演のエデンの東、アメリカ国内におけるユダヤ人差別を描いた紳士協定、テネシー・ウィリアムズの同名戯曲の映画化であり、ビビアン・リー、マーロン・ブランド共演の欲望という名の電車、これまたマーロン・ブランド主演のメキシコの英雄を描いた革命児サパタ等がお勧め。
 
 

 
 
 

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映画 パフューム ある人殺しの物語(2006) 凄いクライマックスを見れます

2022年02月18日 | 映画(は行)
 そういえば綺麗な女性3人組の「Perfume」というアイドルグループを知っているけれど、歌を一曲も知らないよな~なんて思ったり、2年ぐらい前は「香水」という曲が大ヒットしたよな~なんてことを考えていて、ふと思い出したのが今回紹介する映画パフュームある人殺しの物語。ドイツの小説家であるパトリック・ジュースキントのベストセラー小説の映画化作品。
 パフュームというのは香水の意味。香水の製造過程のシーンもあるように香水に興味がある女性には特にお勧めしたい、というのは半ば冗談。タイトルがネタ晴らししているように、猟奇的な殺人鬼の生き様を描いた映画。人殺しを描いたような映画は多々あるが、本作の主人公のキャラクター設定が非常に特異なのが、生まれながらにして数キロメートル先の物でも匂いで嗅ぎ分けることができること。警察犬よりも鋭い嗅覚をしていたら、臭い匂いにぶち当たってしまうだろう、なんてツッコミたくなったりするが、どうやらこの主人公は臭い匂いについては判断はしないらしい。
 この世の中においても生まれながらにして特殊な才能を持っているような人に出会うことがあるが、天才と狂気は紙一重。その才能をもっと世の中の役に立つことや、もっと自分の幸せのために使えよ、なんて思いながら観ていたが我々のような凡人には想像できないことに天才は憑りつかれてしまい、自らを苦しめてしまうのか。

 冒頭でいきなり主人公が格子の中で鎖に繋がれているシーンから始まるが、さてこの主人公に訪れる運命とはこれ如何に、それではストーリーの紹介をしよう。
 18世紀のパリにおいて。悪臭が漂うパリの魚市場において赤子が産み落とされる。孤児院で育てられたジャン=バティスト・グルヌイユ(ベン・ウィショー)と名付けられた男の子は生まれながらにして数キロメートル先の匂いを感じとることが出来た。やがて成長したグルヌイユはパリで綺麗な女性と出会って驚く。彼女の体臭から今まで経験したことのないほどの香りを覚えたしまったのだ。グルヌイユは彼女の後を追いかけていくのだが、誤って彼女を殺してしまう。ところが死んだ彼女から香りが消えてしまっていた。
 グルヌイユは殺してしまった女性の香りが忘れられず、再現するために香水調合士であるジュゼッペ・バルディーニ(ダスティン・ホフマン)に弟子入りする。そこで香水の製造方法を学ぶのだが、その香りを保存する方法を更に学ぶために香水のメッカとして知られるグラース市へ旅立つ。そこへ行くと奇蹟的に殺害した女性と同じ匂いがする富豪であるリシ(アラン・リックマン)の娘ローラ(レイチェル・ハード=ウッド)を見かける。
 グルヌイユは香りを保存する方法を習得し、ますますあの時の香りを再現したい欲望に憑りつかれ、実験のために若くて綺麗なネエチャンを殺しまくりグラース市を恐怖のどん底に陥れる。そして、いよいよその魔の手はローラにも迫ろうとしていたのだが・・・

 若くて綺麗な女性ばかりを狙うジャン=バティスト・グルヌイユだが、決して強姦といった類のことをするのではない。ただ彼が凶行に至るのは、偶然に殺してしまったあの女性から放たれる香りを再現したいため。根は悪い奴じゃないというか、ただあまりにもの世間知らずが度を過ぎてしまったがための行動だと言えるか。
 しかし、本作は匂いの表現が重要なのだが、映像を通してそのことを観る者に伝えるのは難しいと思うのだが、本作はその点は完全にクリア。18世紀の悪臭漂うパリの街や、ジャン=バティスト・グルヌイユが作り出す香水の素晴らしい出来栄えの描き方は視覚を通して嗅覚に伝わってくる。
 それにしても異常に嗅覚が鋭いジャンだが、その個性は香水調合士として大成功を収めて世界を支配しようとすれば出来るほどの天才さなのだが、この天才さは暗殺者として最高の腕を本作で発揮させる。敵が近づいてくれば嗅覚で未然に察知してその場を巧みに逃れるし、また狙った獲物はどれだけ遠くへ離れて逃げても追いかける。今まで嗅覚が鋭いと警察犬みたいに犯人を捜すのに便利だと思っていたのだが、本作でまさかの逆バージョンで嗅覚の鋭さを活かされるとは驚いた。
 そして、クライマックスで訪れるドンデン返しには本当に驚いた。750人のエキストラを使ってのトンデモないシーンを見れるのだが、知っていれば俺もエキストラに参加していたのにと残念に思えた。それにしても凄い香水を作り上げたのだと感心させられることは間違いなし。
 しかし、本作はハッキリ言って主人公の行動が常軌を逸しており、多くの凡人には理解しがたいことがあるので、やたらとナレーターによる説明が多い。この原作の映画化がいかに難しかったかを感じさせられたし、それでも色々と難解に感じることが多々ある。
 例えばこの主人公には自分自身に匂いが無いことに気付いたりするが、そのことは何を暗示するのか?、そして最後の結末は一体何だったんだという疑問に襲われた。そして、あのクライマックスで主人公が涙を流していたのは何故なのか?この主人公に関わって自分の私利私欲のために利用した人達が次々に死んでいったりするが、それはどういう意味なのか?なかなか観終わった後に深く考えさせられる映画だ。
 観る人によってはドン引きするシーンもあるので、大人が自分の子供と観たり、恋人同士で観たりするのは避けた方が良いし、猫が好きな人も避けた方が良いとアドバイスを送りつつも今回は猟奇的サスペンス映画が好きな人にパフューム ある人殺しの物語をお勧めとして挙げておこう

 監督はドイツ人のトム・ティクバ。なかなかユニークな映画を撮る注目したい監督。フランカ・ポテンテ主演の愛のために走りまくるラン・ローラ・ラン、世界の観光地を巡った気分になれる金融市場の闇をテーマに描いたサスペンスとアクションが合体したザ・バンク堕ちた巨像がお勧め

 

 
 





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映画 ハードエイト(1996) ポール・トーマス・アンダーソン監督の長編映画デビュー作です

2022年02月03日 | 映画(は行)
 世界中の映画祭でありとあらゆる賞を受賞しまくっている今や名監督として君臨する鬼才ポール・トーマス・アンダーソン。そんな彼の長編における監督デビュー作品が今回紹介するハードエイト。デビュー作品でありながら、なかなかの豪華キャスト。後々に名監督と言われる人はデビュー作品から才能を見せつけることがよくあるが、彼もその中の1人。デビュー作品ながら、なかなか意欲的で後々の彼のスタイルが既に出来上がっていることを感じさせる。ちなみにタイトルの意味だが、よくカジノで行われるサイコロの2つの数字の合計を的中させるゲームがあるが、『サイコロの4のゾロ目』こと。タイトル名から想像できるように少しばかりギャンブルチックな内容もあり、ラスベガスやリノといったカジノで有名な都市を舞台にしている。

 それではミステリアスな雰囲気を漂わせる老人が主役のストーリーの紹介を。
 母親の葬式代を稼ごうとしてラスベガスで財産を殆ど投げうってしまい一文無しになってしまったジョン(ジョン・C・ライリー)は、喫茶店の前ですっかり打ちひしがれていた状態でいた。そんな彼の前に全く見ず知らずの老人であるシドニー(フィリプ・ベーカー・ホール)が現れる。何とこの老人はジョンにコーヒーを奢り、更にはギャンブルで勝たしてやるから今からラスベガスへ戻ろうと言いだす。ジョンはこの老人を怪しく思っていたのだが、他にどうしようもないので一緒に再度ラスベガスへ行くのだが、何とシドニーのアドバイス通りにギャンブルに臨むとドンドン儲かっていく。そして、そのことを切っ掛けに2人はまるで親子関係のように親密になってゆく。
 そして2年後、リノで2人は再会する。すっかりプロのギャンブラーになったジョンはウエイトレスをしている恋人であるクレメンタイン(グウィネス・パルトロー)と友人であるジミー(サミュエル・L・ジャクソン)を、シドニーに紹介する。しかしながら、4人の出会いは思わぬ秘密が暴かれることになってしまい・・・

 シドニーと呼ばれる老人が非常にミステリアスで、最初の登場からこの爺さんは何者?なんて思いを抱きながら見ることになる。とにかくお節介なぐらいジョンに対して親切。ジョンをカジノで勝たせてあげるだけでなく、彼がトラブルに巻き込まれたら、どんなことをしてでも解決してあげる優しいオジサンであり、まるで頼りになるパパみたいな存在だ。それにしても、なせ老人シドニーはジョンに対してこんなに親切なのか?それにしても、お金を貸してくれるし、ギャンブルで勝たしてくれるし、暴力沙汰の事件も警察沙汰にならないように解決してくれるし、素敵過ぎる老人。俺もこんな知り合いが欲しいと思いながら観ていたのだが・・・。
 一応は映画の分野としてはミステリーサスペンスに入ると思うのだが、けっこうストーリーは淡々と進む印象があるし、会話のシーンも多めなので少しばかり冗長に感じる人もいるだろう。しかしながらこの監督らしい無駄なバイオレンスシーンは観る気を煽らせるし、なかなか人生の役に立つような台詞もあったような気がする。そして数年前に40歳代で亡くなった名優フリップ・シーモア・ホフマンが、まだ大して有名でない頃の彼が見られるし、けっこう印象的な演技を見せる。ポール・トーマス・アンダーソン監督のデビュー作品と聞いて興味が惹かれた人は迷ってないで観ることをお勧めしておこう

 監督は前述したポール・トーマス・アンダーソン。現在のところ51歳で、まだ映画監督としては若い。本作が26歳だった時の作品だと知って今さらながら驚いた。作風的に万人受けするとは思えない気もするが、ポルノ業界の裏側を描いたブギーナイツ、何じゃこりゃとラストで思わせるマグノリア、少しばかりバイオレンスな恋愛コメディパンチドランク・ラブ、ダニエル・デイ=ルイス主演の欲望と権力に憑りつかれた石油王を演じるゼア・ウィル・ビー・ブラッドがお勧め。

 


 

 

  

 



 


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映画 ぼくの伯父さん(1958) アートセンスを感じさせる

2022年01月11日 | 映画(は行)
 独独の笑いを提供してくれるフランスの映画監督であり主演も脚本もこなしてしまうジャック・タチ。そんな彼の代表作でもあるのが今回紹介する映画ぼくの伯父さん。彼が演じるユロ氏を主演とした映画においてはぼくの伯父さんの休暇(1953)プレイタイム(1967)等あるが、本作が最も有名で前述した2作品より面白い。
 ちなみにユロ氏のキャラクターだが極端に台詞が少なく、背が高く、常にパイプを口にくわえており、晴れの日でもレインコートを着ている。そして、全く悪気はないのだが次々に騒動を巻き起こす。そのユーモラスな見た目と行動はけっこう笑わせてくれる。

 古い作品だが、今観てもモダン的な感覚に溢れているストーリーの紹介を。
 もういい年をしたユロ氏(ジャック・タチ)だが無職で独身でパリの下町のアパートに住んでいる。彼の義弟にあたるチャールズ(ジャン・ピエール=ゾラ)はホースを製造する会社の社長であり、家は非常にモダンな様式で斬新さがある。しかしながらチャールズのまだ幼い息子ジェラール(アラン・べクール)はそんな家に息苦しさを感じており、伯父さんにのユロ氏のことが大好き。
 チャールズの奥さんは未だに無職で独身の兄のユロ氏のことが心配で、結婚相手のお見合いのために自宅でパーティをしたり、夫の会社へ勤めさせようとしたり色々と奮闘するのだが・・・

 社長のチャールズの家が見た目もモダンで何かとオートメーション化されている。一方、ユロ氏が住んでいるアパートだがこれが笑える。どんなアパートかは是非本作を観てもらいたいのだが、ユロ氏が住んでいるのは最上階。俺だったらこんなアパートの最上階には絶対に住みたくないと思うのだが、ユロ氏はけっこう平気そうにしているのが笑える。そして、チャールズの家でユロ氏が巻き起こす騒動はけっこうな爆笑もの。何事もオートメーション化された生活に全く慣れていないユロ氏が色々とやらかしてしまうのだが、この辺りの件はまさに当時の現代社会をシニカルに描いている。ハッキリ言って庭に噴水があっても邪魔で鬱陶しいだけ。
 義弟のコネで入社した会社でもユロ氏は騒動を巻き起こすのだが、ホースの製造シーンも爆笑。大失敗をしても世間知らずなユロ氏は大してクヨクヨしないのだが、神経質な俺には非常に羨ましいオジサンに思える。その他にも色々と笑えたり、笑えなかったりのギャグが多々でてくるが、個人的には本作が凄いと思うのが映像を通して伝わるアートセンス。構造、色彩、セット等、今観てもモダンさが失われていない。
 ユロ氏は殆ど喋らないので、面白いことを言うのを期待して観るのは的外れだが、フランス製のこじゃれた映画を観たくなった時に今回はぼくの伯父さんをお勧め映画として挙げておこう。

 監督、主演は前述したジャック・タチ。前述したぼくの伯父さんの休暇はモノクロの映像に抵抗感が無ければ笑える。
 

 
 

 
 








 


 
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映画 ヒート(1995) 銃撃戦にヒートアップします

2022年01月08日 | 映画(は行)
 今やハリウッド映画界のレジェンドとして君臨するアル・パチーノロバート・デ・ニーロ。公開当時では既にバリバリの名優として活躍していた二人が共演したことで話題になったのが今回紹介する映画ヒート。アル・パチーノが凄腕の刑事、そしてロバート・デ・ニーロが強盗団のリーダーとして2人の男同士の対決に胸が熱くなる映画だ。よく本作で語られるのがロサンゼルスの人通りで繰り広げられるド迫力の銃撃戦。しかし、作り手側もこの名優の2人を単なるアクション映画で共演させるだけでは勿体ないことに気付いたのか、男の哀愁を全編に渡って漂わせている。
 刑事と強盗犯という相対する2人。しかしながらお互いをその道の本物と認め合い、更に両者ともに仕事に対してストイック過ぎるために愛する女性の気持ちを考えてやることができないでいる。俺なんかは仕事で悩むことばかりだが、この2人の男は仕事よりも私生活の向き合い方に悩んでいるのが何とも切ない。

 ストイック過ぎる役作りにこだわることで知られる名優2人が、仕事にストイックな刑事と強盗を演じる演技合戦が楽しめるストーリーの紹介を。
 ロサンゼルスにおいて。ニール(ロバート・デ・ニーロ)率いる強盗団は白昼堂々と現金輸送車を襲うが、最近仲間に引き入れたウェイングロ(ケヴィン・ゲイジ)が考えなしに警備員を撃ち殺してしまったために、無駄に他の警備員を殺して逃亡する。今まで綿密な計画を立ててあらゆる強盗を成功させてきたニールだったが、災いになりそうなウェイングロを殺そうとするが一瞬のスキを突かれて逃げられてしまう。
 この事件を担当することになったのがロサンゼルス市警の敏腕刑事であるヴィンセント(アル・パチーノ)。事件現場を見たヴィンセントは犯行の手際良さからプロの仕業だと見抜き、強盗団逮捕に執念を燃やす。わずかな手掛かりからヴィンセントは、強盗犯のリーダーがニールであることを割り出すのだが・・・

 アル・パチーノ演じるヴィンセント刑事は度々の結婚生活に失敗して現在は3人目の奥さんと暮らしているのだが、今回の事件を切っ掛けにまたもや離婚のピンチに陥る。家庭よりも世の中に蔓延る悪を捕まえることに熱中してしまう敏腕刑事。俺のような平和に暮らしたい人間には頼もしい刑事に思うのだが、家庭の方は何かとトラブル続き。犯人を捕まえようとする時はテキパキと部下に指示をし、猛ハッスルして犯人をライフルを持って追いかけるのだが、私生活の疲れを隠せない枯れた大人の男の魅力を放つ。
 一方、ロバート・デ・ニーロ演じる強盗団のリーダーであるニールだが、仲間を大事にし、彼らの家族に対する面倒見も良い。しかし、彼自身は家族を持つと、しがらみが出来て犯罪の仕事に差し障りがあるので、ずっと家庭を築かずにいた。『高飛びするには30秒しか時間の猶予はない』なんて台詞を言っているように一生独身を貫き身を軽くしていたのだが、若い女イーディ(エイミー・ブレネマン)と瞬く間に恋に落ちてしまう。魅力的な女性の方から話しかけられてしまうと、ついつい仲良くしたいと思ってしまう切ない男心。篤い義理と人情、そして犯罪だけで一切の正体もバレずに生きてきた男だが、恋愛は男を盲目にしてしまうのか微妙に判断に狂いが生じてくるのが、チョット恋愛には不器用だが渋い大人の男の魅力を放つ。
 まさに映画史に語り継がれるであろう銃撃戦も楽しいが、主演の2人もそうだが、脇役に至るまでのキャラクター設定が練り込まれているのも本作の魅力である。人間描写にまで力を入れてしまったために3時間という長時間映画になってしまったが、最初から最後まで見せ場たっぷりで飽きさせない。どこか影を持った男の格好良さを本作は堪能できる。
 ロサンゼルスを全面に映し出す夜景のショットを挟んできたりで、マイケル・マン監督のロサンゼルスに対する熱い想いも感じ取れることが出来るし、この主演2人の刑事と強盗の対決という関係から、やがてプライドを賭けた戦いに昇華するのが心地良さを感じる。
 渋いオジサンの戦いに燃える人、武器マニアの人、ロサンゼルスに熱い想いを持っている人、豪華キャストが出ている映画が好きな人・・・等に今回は映画ヒートをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したマイケル・マン。男同士の戦いを描かせたらナンバーワンの監督。ダニエル・デイ=ルイス主演のラスト・オブ・モヒカン、アル・パチーノ、ラッセル・クロウ共演のインサイダー、トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス共演のコラテラルがお勧め
 
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映画 バベットの晩餐会(1987) 美味しそうな料理が出てきます

2021年12月30日 | 映画(は行)
 美味しそうな料理が出てくる映画の名作は多いが、今回紹介する映画バベットの晩餐会も美味しそうなフランス料理がクライマックスで登場する。そういう点で本作はグルメ映画の類に入れてしまう人が多いが、俺にとってはそのことが少しばかり腹立たしい。あ~料理が美味しくて幸せ、なんてレベルの内容ではない。人生の哀歓を感じさせる映画であり、否が応でも過ぎていく時間は時代の変遷、過去に対する後悔を呼び起こす。本作はそんな苦味を味わうことになったりするが、料理を食べつくした後に小さな幸せを感じることができる。そして、多くの人間が身近にある幸せに気づいていないことを教えてくれる。

 それではどんより曇ったデンマークの寒村を舞台にしたストーリーの紹介を。
 美しい姉妹であるマーチ―ネーとフィリパは、敬虔な牧師である父親の助けをしながら慎ましく暮らしており、父親も村の人々を説教を通して尊敬を集めていた。ある日のこと、姉のマーチーネーにだらしない生活を戒めるために叔母さんの家で謹慎中のローレンス士官が彼女に一目ぼれしてせっせと教会に通うが、清廉潔白な生活に耐えられなかったローレンス士官は故郷へ帰ってしまう。そして妹のフィリパにはフランスの有名オペラ歌手アシールが近寄ってくるが、非常に厳格な牧師である父親がアシールをフィリパと会わせなくしたために、仕方なくアシールはフランスに帰ってしまう。
 そして時代は過ぎ、今や父親の牧師は死んでいなくなり、姉妹も結婚せずにそのまま年齢を過ぎてしまい、教会を憩いの場として訪れていた人々も今では信仰も薄らぎ、口喧嘩が絶えなかった。そして雨が降る夜にくたくたになって姉妹の家を訪ねてきたのが中年女性のバベット(ステファーヌ・オードラン)。フランス革命のあおりを受けて家族を亡くしてしまったバベットはオペラ歌手のアシールと知り合いであり、彼から姉妹の事を聞かせれていて、亡命して姉妹の家に身を寄せてきたのだ。
 ただ働き同然でお手伝いさんとして姉妹の家に居候することになったのだが、いつもフランスの知人に宝くじを買ってもらっていたバベットに一万フランの大金が当たったとの嬉し過ぎるニュースが入ってきた。姉妹はついにバベットはフランスへ帰ってしまうのかと思ったのだが・・・

 明るい太陽が見られずに、どんよりとした空模様に寒そうな波打つ海岸。俺がこんな場所にいてたら鬱病になってしまいそうな村を舞台にストーリーが展開される。大したハッピーな話も出てこないが、ユーモアを交えながら淡々とストーリーが進む。古い概念、篤すぎる宗教への信仰、因縁が人々の心を少しばかり暗いものにさせてしまうが、そんな雰囲気を一気に変えてしまうのが、バベットが振る舞うフランス料理。村の人々にとって斬新過ぎるフランス料理とそれを調理するバベットを悪魔のように恐れおののく様子がけっこう笑えたが、次第に村の人々の疑心暗鬼な気持ちが溶けていく感じが見ていて心地良い。
 本作にはキーワードとして芸術というのが挙げられるが、芸術なんてものの価値は金額で決められるものではない。カネは欲しがるが、自分の給与を少しばかりの期間限定でもカットされるのを嫌がる議員が居るのも情けない限りだが、議員の評価は決して議員報酬の高低で決められない。両方とも鑑賞者、住民にどれだけ満足感を与えられるかだろう。そして幸福度なんて決してカネでなんか測ることはできない。
 グルメ映画ではない、なんて書きながら出されるフランス料理はやっぱり美味しそうだし、観終えた後の心地よさはハリウッド映画では味わえない奥深さ。デンマーク映画のレベルの高さを見せつける作品として今回はバベットの晩餐会をお勧めに挙げておこう


 

 

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映画 ヒズ・ガール・フライデー(1939) マシンガントークが炸裂

2021年12月20日 | 映画(は行)
 映画がサイレントからトーキーへ変わってきた時代(1930年代)において、スクリューボール・コメディと言われる分野の映画が流行した。サイレントだと動きで笑わすことになるが、トーキーになってくると台詞で笑わそうとする映画が出てくる。男優と女優がもの凄い台詞の量をテンポよく早口でまくし立て、その台詞がまたユーモアに富んでいるような映画のことだ。
 そんな映画の代表作とでも言うべき歴史的作品が今回紹介するヒズ・ガール・フライデー。今の時代において男女平等、ジェンダーフリーなどが叫ばれ、ちょっと昔はまるで女性の社会進出が拒まれていたなんて時代があったようだが、本作は相当古い時代の映画だが主演女優のロザリンド・ラッセル演じる女性の役割を見ていると男性陣を相手に丁々発止のやり取りが見れる。女性が男性に対等以上に渡り合うのもスクリューボール・コメディの魅力としてあり、今の女性なんかは1930年代から1940年代のスクリューボール・コメディの作品なんかは楽しく観れると思う。

 それでは会話だけでなく物語もテンポよく進むストーリーの紹介を。
 女性敏腕記者としてならしたヒルディ(ロザリンド・ラッセル)が婚約者のブルース(ラルフ・ベラミー)を伴って、辞職を願って元旦那で編集長であるウォルター(ケーリー・グラント)の元へ挨拶にきた。ヒルディはブルースと結婚して彼の田舎へ移り住み、今日中に列車で出発するとウォルターに告げる。しかし、ウォルターはヒルディの記者としての才能を買っており、しかも彼女に対してまだ未練があった。ウォルターは彼女の結婚を遅らせるために、あの手この手を使って妨害し、更には彼女に最後の仕事と頼んで、翌朝に執行される死刑囚の取材を命じるのだが・・・

 元夫妻であり上司と部下である間柄のウォルターとヒルディの会話のやり取りが多くを占める。この2人の膨大な台詞の量も凄いが、テンポが良過ぎるぐらいの会話のやり取り。脳みそよりも先に口が勝手に動いてしまうような印象さえあるが、会話の内容も非常にユーモアがある。そしてウォルターの強引過ぎるヒルディの引き留め対策がなかなかの見物。犯罪、トラップ、賄賂など何でもありなのが、腹が立つどころか笑える。
 この主演の男女の会話の応酬も楽しいのだが、その周りのドタバタも非常に楽しいし、場面転換のテンポも良いのでダレずに最後まで見ることができる。女性が活躍する映画というのは、何時の時代も楽しい作品が多い。改めてコメディの分野は現在よりも、この時代の方が洗練されていて面白いと思えた。
 よく耳にするけれどスクリューボール・コメディとは何ぞや?と思っている人、古い映画の名作を見たい人、新聞記者になりたいと思う人、女性が頑張る映画を観たい人・・・等に今回はヒズ・ガール・フライデーをお勧めしておこう。

 監督は名匠ハワード・ホークス。コメディは本作のような洗練された作品を撮るし、西部劇においても名作を連発。コメディでは赤ちゃん教育、ハードボイルド作品では三つ数えろ、パイロット達の友情と恋愛を描いたコンドル、傑作西部劇リオ・ブラボーなど、お勧め映画多数の名匠です。
 


 

 

 


 
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映画 ヒーロー/靴をなくした天使(1992) 本当のヒーローとは何か?

2021年06月03日 | 映画(は行)
  目立ちたがり屋に多く見受けられるのが、やたら英雄(ヒーロー)に成りたがる者。ただ今の時代において様々なSNSを利用して自分自身で発信する者が多いが、その中には自分を等身大以上に見せかけようとして嘘やハッタリを並べてヒーロー気取りの輩を見受けられる時がある。そもそもヒーローなんて成ろうと思ってなれるものではない。ここぞという時に現れるのがヒーローなのだ。
 大人になってしまった男性の中には少年の頃には、僕も大きくなったら英雄(ヒーロー)になるんだ!なんて叫んでいた人も多いと思うが、果たしてヒーローって何だろう?そんな疑問を少しだけ解決できた気分になれる映画が今回紹介するヒーロー/靴をなくした天使

 今こそヒーローの出現を待ち望まれているのだが、残念ながらヒーローが生まれにくい状況であるのも確か?そのように考えるとなんだが絶望した気分になったりするが、本作を観ると少しばかり明るい気分になれる。それではストーリーの紹介を。
 ちんけな詐欺師であるバーニー(ダスティン・ホフマン)は離婚した元妻と暮らしている息子と会うために廃車寸前の車を運転していたのだが、目の前で飛行機が墜落。嫌々ながらも乗客を救出して、早く息子に会いたいためにその場をそそくさと去っていく。
 しかしながら、墜落した飛行機の乗客の中にいた敏腕女性レポーターのゲイル(ジーナ・デイヴィス)は自分を含め、乗客全員を助け出した謎のヒーローを探し出すために、マスコミを挙げて賞金100万ドルをチラつかせる。たちまちカネの必要に迫られたバーニーはその報道を知ってニンマリするのも束の間、なんとホームレスのババ(アンディ・ガルシア)がヒーローとしてテレビに写っており、世間から大人気を得ていた・・・

 とにかく何をやっても上手くいかないダスティン・ホフマン演じる詐欺師のダメっぷりが笑える。目の前で飛行機が墜落してしまう不運さも笑えるが、せっかく訪れた英雄(ヒーロー)になれるチャンスを逃してしまう半端ないツキの無さが笑える。今まで俺は自分の運の無さを嘆いていたが、実は俺って幸運じゃんなんて思えたきた。
 しかし、ショボい詐欺師もそうだが、嘘つきのホームレス、私利私欲で動く女性レポーター等、ロクでもない登場人物ばかり出てくるので、ヒーローを探し出すのが困難だったのだが、本作の台詞で明快にヒーローが何処にいるのかを教えてくれる。意外にもヒーローって近くに居ることを知ることが出来るし、ヒーローとは何か?そしてヒーローの存在価値まで教えてくれる。そして、噓八百をSNSを使って流しまくる愚か者のおかげで人間不信に陥ってしまっている人も居ると思うが、そのような人たちに対して、これからの生き方を教えてくれるので非常に有難い。
 基本的にはハートフルな気分になれるのだが、都合よくヒーローを生み出したり、逆に突き落としたりするマスメディアに対する皮肉が描かれている点も本作の素晴らしいところ。ハリウッド映画ってエンタメの中に社会性を入れてくるのが本当に上手い。
 そして、本作のオチが端的だが凄い。それまでは感動的にヒーローという物を描きながら、貴方は本当にヒーローになれますか?と問いかけられてるような結末はインパクトがある。この問いかけに対して何の迷いも躊躇もなくイエスと答えることが出来れば、貴方は間違いなくヒーローに成れる。
 財布やそして靴などの小物の使い方が上手く、大まかな内容だけでなく細部に至るまで巧みな映画で、玄人も素人も唸らせる優れものである。笑えるし、感動できるし、癒される気分にもなれるし、偉そうなことばかり言っているだけの目立ちたがり屋を見抜ける方法までも知ることが出来る?映画ヒーロー/靴をなくした天使を今回はお勧め映画に挙げておこう。

 監督はスティーヴン・フリアーズ。コメディ、シリアス、社会派、文芸作品・・・等、幅広い分野において良品を撮り続ける職人気質な監督。有名なラクロ原作の古典的作品を映画化した危険な関係、詐欺師一家の予想外な顛末を描くグリフターズ/詐欺師たち、ロンドンを舞台に不法移民達が必死に生きようとする様子を描いた堕天使のパスポートをお勧めに挙げておこう。
 



 





 

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映画 ブラッド・シンプル(1984) 今や名監督のデビュー作

2021年02月23日 | 映画(は行)
 一流監督ともなればデビュー作からして非凡な才能を見せつける。今や名監督として君臨するスティーヴン・スピルバーグは『激突』、クリストファー・ノーランは『フォロウィング』、ダニー・ボイルは『シャロウ・グレイブ』といった具合だ。そして今回紹介するのがこれまた名監督であるコーエン兄弟のデビュー作であるブラッド・シンプル。この監督の個性がデビュー作品から随所に見られるのが楽しい。ちょっとした出来事がドンドン大事件に向かっていく展開、勘違いだらけの登場人物、小道具の見せ方、流血シーン、そして笑える殺人シーン。数々の傑作群を世に送り出しているが、デビュー作品からその作風が確立されていたことに気づかされる。

 コーエン節が全開するスリラー色の強いストーリーの紹介を。
 舞台はテキサス州。酒場を経営するマーティ(ダン・ヘダヤ)は、従業員のレイ(ジョン・ゲッツ)と妻のアビー(フランシス・マクドーマンド)が浮気をしているのではないかと私立探偵のフィッセル(M・エメット・ウォルシュ)に調査させる。妻が浮気をしていることを確信したマーティはレイを呼びつけて問い詰めるが、話し合いは不調に終わる。
 怒りが治まらないマーティはフィッセルに何とレイとアビーの2人の殺害を依頼する。しかし、事態は思わぬ方向へ転がっていき・・・

 随所にコーエン兄弟の特徴が表れたシーンがたくさん出てくる。全体的に不穏な空気が流れているので不気味さが漂っているのだが、ハラハラドキドキするようなシーンにおいて笑いをちょくちょく入れてくるのがコーエン兄弟らしいところ。少しばかりシュールなギャグが俺には楽しめた。しかし、登場人物達のズッコケ振りが凄い。わざと物事が大げさになるように行動してるのかよ?なんて思えたり、どうしたらそんな勘違いをしてしまう?なんて思わせてくれたりで、アホらしくて見てられない展開のはずが、監督の演出が良いのか飽きさせずに最後まで見られる。とにかく終盤に訪れるクライマックスはヒッチコック監督の『裏窓』を凌ぐ出来栄えで、スリルと笑いを共有できる。
 それほど見た目にインパクトのある人物が出てこないが、ゾンビ並みにしぶとい奴、運が良いのか悪すぎるのか微妙な奴、登場人物のキャラクター設定も笑える。少々の記憶力は要するが今や名匠の域に達した感のあるコーエン兄弟監督のお勧め映画として今回はブラッド・シンプルをお勧め映画として挙げておこう。

 監督は前述しているようにコーエン兄弟。お勧め多数の名監督で彼の作品のファンである映画好きはとても多い。ギャング映画ミラーズ・クロッシング、サスペンスとユーモアの融合が素晴らしいファーゴ、コメディ色が強いサスペンスビッグ・リボウスキ、できればカラーではなくてモノクロの映像の方で観て欲しいバーバー、脱獄コメディ映画オー・ブラザー!、彼らにアカデミー賞をもたらしたノーカントリーあたりがお勧め。

 
 
 

 

 





 
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映画 ペーパー・ムーン(1973) ロードムービーの王道です

2021年02月15日 | 映画(は行)
 主人公が旅をしながら様々な経験をしていくロードムービーというのは今や映画のジャンルとして成り立っているが、実際に『イージー・ライダー』『パリ、テキサス』『レインマン』など名作がとても多い。そんなロードムービーの多くある設定が、仲が悪かったり、価値観の異なる二人組が旅を経験していく内にお互いの仲が深まっていくパターン。今回紹介する映画ペーパー・ムーンもロードムービーであり、例の如くのパターンを踏襲している。しかし、本作が面白いのは親子ほどの開きがある大人と少女の掛け合い。この2人のやり取りが、他のロードムービーに足りない笑いを誘ってくれる。

 それではロードムービーの面白さを感じさせるストーリーの紹介を。
 1930年代におけるアメリカの大恐慌の時代において。元カノが自動車事故で亡くなり葬儀に現れたモーゼ(ライアン・オニール)。そこには元カノの娘で9歳の少女アディ(テータム・オニール)が居た。実はモーゼは聖書を売りつけて金を騙し取る詐欺師。今も詐欺の仕事で追われていたのだが、孤児になってしまったアディを叔母さんの家まで送り届けることになってしまった。最初こそは全くソリが合わない2人だったが、親子関係を装って詐欺を次々成功させるにしたがって、2人には本当の親子関係のような親近感が湧いてくるのだが・・・

 行く先々で詐欺を働くモーゼだが、少々お粗末な行動が見受けられる。危うく詐欺がバレそうになったり、金遣いが荒く、女癖も悪くて、せっかく金を稼いでもすぐに浪費してしまう。そんなダメダメな大人のモーゼに対して機転を効かして助け舟を出すのが、まだ9歳の少女アディというのが笑える。詐欺に関しては天才少女ぶりを見せつけるのが楽しいし、またモーゼを睨みつける表情が凛としていて、ダメっぷりを発揮するモーゼと対照的で笑える。
 モーゼとアディを演じるライアン・オニールテータム・オニールは名前から想像できるように、本当の親娘の共演。よってストーリーの方も、実はモーゼとアディって本当の親子か?なんて思わせる件があったりして、少しばかり話に重みを感じさせる。
 はっきり言って子供の教育には良いはずが無いような内容だが、ロードムービーの王道を行くようなストーリーは単純でわかり易くて、笑えるのが良い。そして、テータム・オニールを観ていると本当に天才子役だと感じれるのも本作の大きなポイントだろう。少々古い映画でモノクロが苦手という先入観のある人も本作に関してはそんな心配は全くの無用。老若男女問わず誰もが楽しめる映画として今回はペーパー・ムーンをお勧め映画として挙げておこう

 監督はピーター・ボクダノヴィッチ。何かと映画愛を感じさせる作風がハマる人にはハマる。映画愛を感じるラスト・ショー、奇病に罹っている少年と母親の交流を描いたマスクがお勧め。


 

 
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映画 フォーンブース(2003) 今頃紹介するような映画では無いような気がしますが・・・

2020年07月25日 | 映画(は行)
 今や小学生でも携帯電話を飛び越えてスマートフォンを持っている時代。田舎はもちろん都会においても電話ボックスなんかあっても場所の無駄にしかならない。全編に渡って電話ボックスの中が舞台という今となっては時代遅れ感丸出しの映画が今回紹介するフォーンブース。実は本作が公開された2003年においても既に携帯電話が普及している時代。しかも、折りたたみ式の携帯電話の時代だから、まだ本作を観ていない人にとっては相当なレトロ感を覚えるかもしれない。そんな映画を今さらながら紹介してしまう当ブログはいかにも時代錯誤の批判を受けそうだが、忘れ去られそうで面白い映画をテキトーなタイミングで掘り出してくるのも当ブログの役割だ。

 さて、電話ボックスというワンシチュエーションだけで、スリル満載の映画が作れることに驚けるストーリーの紹介を。
 自称やり手のメディアコンサルタントのスチュー(コリン・ファレル)は、携帯電話を持っているのに今日もニューヨークのブロードウェイの通りの電話ボックスから女優志望のパム(ケイティ・ホームズ)に電話をする。『愛している君を僕が売り出してあげるよ』なんて甘い話をし続けた後に、電話ボックスを出ようとしたその直後、切ったばかりの電話のベルが鳴った。ついつい電話に手をかけてしまったスチュだが、話しかけてきた男は意外なことを言う。『電話を切るとお前を撃つよ』。そこからはスチュにとっては悪夢の始まり。あの手、この手で電話ボックスから脱出しようとするのだが・・・

 主人公は、なぜ俺がこんな目に遭わなければならないんだ!と思うような状況に追い込まれてしまうが、どこからかライフルで主人公に照準を合わしている犯人の目的が次第にわかってくる。中身がスッカラカンなのに偉そうにしている人間の欺瞞、虚栄、出鱈目さが暴き出されていく。観ている我々もサイコスナイパーに狙われる恐怖を感じると同時に、身の丈以上に振る舞う主人公の姿に、自分の周りにもこんな奴が居るよな~と思い当たったりする。
 主人公が殆ど電話ボックスの中に居るだけのアイデアも素晴らしいが、人間の本性をあぶり出していく過程も非常によくできている。そして、犯人の電話を通しての渋い声もなかなか聞きほれてしまいそうになるが、冗談交じりに話している内容が妙に説得力があって良い。そして映画の中と実際の時間経過が一緒というのも昔からある手法だが、本作ではそれが抜群の効果を発揮している。
 異様なスリルがあり、追い込まれた人間の心理が描かれていたりで非常に濃密な内容の81分という短い映画。面白い映画を観たい人、電話ボックスが懐かしいと感じる人、見栄っ張りの人、サスペンス映画が好きな人、ちょっとばかし暇つぶししたい人・・・等に今回は映画フォーンブースをお勧めに挙げておこう

 監督は先日亡くなったジョエル・シュマッカー。バットマンシリーズのバットマン・フォエバーといったヒット作もあるが、若手スターが多く飛び出した青春映画セント・エルモス・ファイアー、現代人の怒りをパワフルに描きだしたフォーリング・ダウン、ジョン・グリシャム原作の映画化依頼人がお勧め。

 
 




 
 
 

 




 
 
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映画 ペイチェック/消された記憶(2003) アイデア抜群のSFアクション映画

2020年02月23日 | 映画(は行)
 アメリカを代表するSF作家のフィリップ・K・ディック。とっくの前に故人となってしまっているが、彼の小説を原作とする映画化作品は現在に至るまでブレードランナー、トータル・リコール、マイノリティ・リポート・・・等ヒット作品が多いし、面白い映画も多い。さて、アメリカのSF小説の第一人者の原作をアクション映画の巨匠であるジョン・ウー監督で映画化した作品が今回紹介するペイチェック/消された記憶
この監督でSF映画となると少々不安な気持ちもあったのだが、そんな心配は全くの無用。アクションシーンは楽しいし、先の読めない展開もぐいぐい引き込む。そしてガラクタ同然と思われた多くの小道具が意外な効果を発揮するアイデアが抜群に楽しい。
 ちなみにタイトルのペイチェック(Paycheck)の意味は『報酬』。それにしても本作の主人公は不思議な奴だ。俺だったら喜んで頂戴してしまうような大金の報酬をアッサリ諦めてしまうとは。

 主人公のキャラクターは天才科学者のはずなのだが、そんな設定だったことを見始めて数十分で忘れてしまうストーリーの紹介をできるだけ簡単に。
 凄腕のフリーランスの科学技術者であるマイケル(ベン・アフレック)は極秘プロジェクトを完遂させるたびに、機密保持のためにプロジェクト期間の記憶を消されていた。そんな彼の元へ旧友である大企業の社長であるジミー(アーロン・エッカート)から大きな仕事を依頼される。そのプロジェクトに関わる期間は3年間。その間の記憶を消す代わりの報酬が9200万ドルの凄すぎる大金。全く断る理由も見当たらないのでマイケルは引き受ける。
 さて、3年後のこと。しっかりと仕事を完遂し終えて記憶を消したマイケルは早速、報酬を受け取りに法律事務所に向かう。ところが渡された紙袋の中には大金の報酬ではなく、ガラクタ同然のライター、キー、メモ用紙・・・等のたくさんの小道具。しかも、その送り主が自分であることにビックリ。何故こんなことが起きたしまったのか考える余裕もなく、FBIや殺し屋から追われてしまい・・・

 なぜ、一生分どころか更に若いネエチャンを集めて遊べるほどの暮らしができるほどの大金よりも、そこらのコンビニで買えそうな小物ばかりを欲しがったのか。たびたび記憶を消すたびに脳ミソがおかしくなってしまったのかと思いきや、実はこれがお助けアイテムだったという展開が非常に楽しい。そして、記憶を消された科学技術者は一体何を開発したのか?危機一髪でピンチを乗り越え、謎も一気に解明してしまうクライマックスが楽しい。ジョン・ウー監督にしてはアクション控え目、込み上げてくるような熱さが足りないなど不満な点もあるが、サスペンス的な面白さが充分にカバーしてくれる。それにこの監督らしい遊び心も健在だ。
 頭が良くて、武術を心得ており、バイクも華麗に乗りこなす文武両道の主人公のキャラに違和感を感じない人、少し暇つぶしにアクション映画が観たい人、ハリウッド映画らしい映画を観たい人、フィリップ・K・ディックの原作映画が好きな人・・・等に今回は映画ペイチェック/消された記憶をお勧めとして挙げておこう。



 監督は前述したようにジョン・ウー。香港時代は男たちの挽歌などで香港ノワールと呼ばれるアクション映画を生み出してきた監督。本作と同じくハリウッドで撮った映画として、香港時代の彼らしいシーンが見られるアクション映画の傑作フェイス/オフ、これぞジョン・ウーらしい熱い男同士の友情に感動できる戦争映画ウインドトーカーズがお勧めです。



 

 


 
 


 




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映画 僕の村は戦場だった(1962) ソ連発の反戦映画です

2020年01月27日 | 映画(は行)
 映像の詩人なんて呼ばれることの多いソ連出身の映画監督アンドレイ・タルコフスキー。その美しい映像は今日においても魅了される人は多いが、その一方で『難しくて意味がわからん』『テンポがとろい』『眠たくなる』だの批判する人もいる。しかし、今回紹介する映画僕の村は戦場だったは彼の他の作品に比べてストーリーがあり、わかり易い作品。彼の映画はどの分野が相当なのかわからないのもあるが、本作は反戦映画の分野に入る。ソ連といえば日本から見ればヤクザっぽい武闘大国のイメージがあったりするが、そんな国でも立派な反戦映画を撮ることができる。
 戦争を背景にした映画となると、過剰なぐらいの暴力や残虐なシーンが出てくることがある。しかし、本作は少しばかり銃声が聞こえたり、弾道の灯りが見えたりするぐらいで目を背けるようなシーンは出てこない。それでいて戦争ってやっぱり悲惨だよな~と観ている者に訴える表現が上手い。

 モノクロ作品でありながら美しい映像が散りばめられ、子供を主役にした珍しい反戦映画のストーリーの紹介を簡単に。
 舞台設定は第二次世界大戦、ドイツと戦っている最中のソ連において。まだ12歳の少年であるイワン(ニコライ・ブルリャーエフ)はソ連軍の斥候として働いていた。大尉だの中尉だのエラいさんの大人たちは、イワン少年の身を案じて彼を戦場から外して幼年学校へ行かそうとする。
 しかし、イワン少年は優しい大人たちの提案を頑なに拒否。彼を戦場の最前線に駆り立てるのは肉親を爆撃で殺されたドイツ軍に対する憎しみ。やがて戦争も終わり・・・

 まだ12歳にもなってないような少年を戦争で危険な任務につかそうとするとは、ソ連の軍人はひどい奴ばかりだと思っていたら、ストーリー紹介にも述べたようにかなり優しい大人達。むしろ大人達はイワン少年に愛情を注いでいるようにも見える。しかし、戦争は純粋な少年の心に憎しみの気持ちをもたらしてしまい、少年の怒りが表される目がひたすら悲しい。本作を観れば戦争は命を奪うだけでなく、人間の心を蝕んでしまうことがダメだ。この少年の結末には思わず涙を出させる。
 本作はアンドレイ・タフスキー監督の長編デビュー作である。しかし、デビュー作品から彼らしさが一杯。火や水の使い方、たびたび出てくる夢のシーン、セピア色での白樺のシーン、空中浮遊・・・等など。他のタルコフスキー作品を観たことがある人が本作を初めて観ると彼らしい作風を楽しめる。
 そして今回改めて観て気づいたのが、音楽やセットに黒澤明監督を感じさせること。この2人は交友があったのは有名だが、それは本作からも感じさせる。アンドレイ・タルコフスキー監督の作品は好きなのだが、なぜか本作は観てない人、あるいはアンドレイ・タルコフスキー監督の名前は聞いてことがあるけれど自分には敷居が高いと思って避けている人、ソ連の映画を観たくなった人、ストーリー展開よりも映像に興味がある人・・・等に今回は僕の村は戦場だったをお勧め映画として挙げておこう。





 監督は前述したアンドレイ・タルコフスキー。観る人を選ぶ映像作家だが、個人的にはお気に入りの監督。SF映画の金字塔として名作に挙げられる惑星ソラリス、彼の遺作サクリファイス、タルコフスキー監督の平和への想いが伝わってくるノスタルジアがお勧めです。


 
 
 

 
 

 




 
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