なんだかイヤ~なタイトル名だが、帝政ロシア時代の作家マクシム・ゴーリキーの戯曲の同名タイトルの映画化作品だ。原作がタイトル名どおりにボロボロで救いようがない内容だが、本作は戦前のフランス映画界を代表する巨匠であり、印象派の超有名画家のオーギュスト・ルノワールの次男であるジャン・ルノワール監督の手によって、大胆にアレンジされている。原作は主人公が存在せず、どいつもこいつもロクでもない奴ばかりのように俺には思えたが、今回紹介するルノワール版映画どん底は、フランス映画史に燦々と名を遺し、映画好きなら誰もが知っているはず?のジャン・ギャバンとルイ・ジューヴェのダブル主演。しかも、原作とは決定的に違うのが後味の良さ
貧乏である現状を嘆かわしいと思っている俺のような人間に対して、癒されると同時に説教された気分になる言葉が、アメリカの偉大なる政治家であり、発明家であるベンジャミン・フランクリンの名言貧乏であることは恥ずかしいことではない。貧乏を恥ずかしいと思っていることが恥ずかしいことである
金持ちになることが自分の存在感を世間に認めさせる唯一の方法だと思っていた俺には、この言葉を知ってなんだかホッとした気分になったが、その反面すっかり貧乏生活が心地良くなってしまい上昇志向がまるで無くなってしまった自分に、本当に俺ってつまらん人間だよな~っと空虚さを感じることがあるのも事実。こんな複雑な心境に悩めるのは決して俺だけではないはずだ。
さて、金が無くて貧しいだけでなく、心まで貧しくなってしまっている男たちの繰り広げられるストーリーとは如何なるものか。簡単に内容紹介を。
かつては大金持ちだった男爵(ルイ・ジューヴェ)だが、すっかり浪費と賭博にのめり込み、とうとう財産を食い潰し、いよいよ豪邸を売り払う日が明日に迫って来た。一方、極貧者ばかりが泊まっている宿屋に居候しているペペル(ジャン・ギャバン)は泥棒であり、一刻も早く貧乏人ばかりが集まっている場所から抜け出し、新しい世界へ一歩を踏み出したいと思っている。
ある日、パペル(ジャン・ギャバン)は豪邸に忍び込むが、あろうことか明日には差し押さえが迫っており、自殺を考えていた男爵(ルイ・ジューヴェ)の邸宅。ところが、どういうわけか2人はすっかり意気投合し、朝まで飲み食い、語り尽くす。そして、すっかり住む場所が無くなってしまった男爵(ルイ・ジューヴェ)だったが、パペル(ジャン・ギャバン)が住んでいる極貧者が集まっている宿屋に彼も住みついてしまうことになる。
どん底から抜け出ようとするパペル(ジャン・ギャバン)と、どん底に引き込まれてしまった男爵(ルイ・ジューヴェ)の出会いは、希望と絶望が交錯した瞬間でもあったのだが・・・
どん底から抜け出ようともがくジャン・ギャバンに共感できるのは当然だが、意外にも貧乏生活とは無縁だったルイ・ジューヴェ演じる男爵が『けっこう貧乏生活って楽しいじゃん』なんて口に出したりするところなどにも意外に共感できる。大金持ちの時には全く視えなかった貧乏生活が心地良くなってしまう件はけっこう笑える。
しかし、この映画を観て思うのは男にとっては金よりも女性が希望の存在だということ。あのチャップリンの名作モダン・タイムスを思い出させる男女の行く末には大いなる希望が溢れている。どんなに目の前を暗闇が覆っていても、ほんの少しでも希望の灯が見えると人間は頑張れる、というようなメッセージ性は多くの人が同感できるだろう。
ちなみに我らが世界に誇る黒澤明監督も同じくタイトル名もずばりどん底を撮っているが、黒澤版どん底は舞台をロシア帝政時代から日本の江戸時代に舞台設定を変えているが、内容はかなり原作に忠実。あんまり黒澤作品の中では評判が高いとは言えないが、実は相当な優れもの。人間の内面の醜さを描き切ったストーリー展開はエネルギッシュであり、そして驚くのが宿屋のセット。ぜひルノワール版と黒澤版のどん底を見比べてみるのも一考だと思う。
原作本です
監督は前述したようにジャン・ルノワール。この人のお勧めは本作と同じくジャン・ギャバン主演の反戦映画の傑作大いなる幻影、インドを舞台にした東西洋の異種文化交流が描かれている河が良いです。そして、記憶力に自信がある人限定でゲームの規則もお勧めしておこう。
主演の泥棒ペペルを演じるのがジャン・ギャバン。数多くの名作に出演している戦前から戦後にかけてのフランスを代表する名優。前述した大いなる幻影の他にジュリアン・デュヴィヴィエ監督の望郷、アラン・ドロン共演のカジノを舞台にした大金強奪サスペンス映画地下室のメロディー、フレンチ・ノワールの傑作現金(げんなま)に手を出すながお勧め。
すっかり落ちぶれてしまった男爵を演じるのがこれまたフランス映画史に名を遺す名優ルイ・ジューヴェ。主演から助演までその個性は際立っています。アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督の犯罪河岸、ジャック・フェデー監督の女だけの都、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の舞踏会の手帖がお勧め。
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貧乏である現状を嘆かわしいと思っている俺のような人間に対して、癒されると同時に説教された気分になる言葉が、アメリカの偉大なる政治家であり、発明家であるベンジャミン・フランクリンの名言貧乏であることは恥ずかしいことではない。貧乏を恥ずかしいと思っていることが恥ずかしいことである
金持ちになることが自分の存在感を世間に認めさせる唯一の方法だと思っていた俺には、この言葉を知ってなんだかホッとした気分になったが、その反面すっかり貧乏生活が心地良くなってしまい上昇志向がまるで無くなってしまった自分に、本当に俺ってつまらん人間だよな~っと空虚さを感じることがあるのも事実。こんな複雑な心境に悩めるのは決して俺だけではないはずだ。
さて、金が無くて貧しいだけでなく、心まで貧しくなってしまっている男たちの繰り広げられるストーリーとは如何なるものか。簡単に内容紹介を。
かつては大金持ちだった男爵(ルイ・ジューヴェ)だが、すっかり浪費と賭博にのめり込み、とうとう財産を食い潰し、いよいよ豪邸を売り払う日が明日に迫って来た。一方、極貧者ばかりが泊まっている宿屋に居候しているペペル(ジャン・ギャバン)は泥棒であり、一刻も早く貧乏人ばかりが集まっている場所から抜け出し、新しい世界へ一歩を踏み出したいと思っている。
ある日、パペル(ジャン・ギャバン)は豪邸に忍び込むが、あろうことか明日には差し押さえが迫っており、自殺を考えていた男爵(ルイ・ジューヴェ)の邸宅。ところが、どういうわけか2人はすっかり意気投合し、朝まで飲み食い、語り尽くす。そして、すっかり住む場所が無くなってしまった男爵(ルイ・ジューヴェ)だったが、パペル(ジャン・ギャバン)が住んでいる極貧者が集まっている宿屋に彼も住みついてしまうことになる。
どん底から抜け出ようとするパペル(ジャン・ギャバン)と、どん底に引き込まれてしまった男爵(ルイ・ジューヴェ)の出会いは、希望と絶望が交錯した瞬間でもあったのだが・・・
どん底から抜け出ようともがくジャン・ギャバンに共感できるのは当然だが、意外にも貧乏生活とは無縁だったルイ・ジューヴェ演じる男爵が『けっこう貧乏生活って楽しいじゃん』なんて口に出したりするところなどにも意外に共感できる。大金持ちの時には全く視えなかった貧乏生活が心地良くなってしまう件はけっこう笑える。
しかし、この映画を観て思うのは男にとっては金よりも女性が希望の存在だということ。あのチャップリンの名作モダン・タイムスを思い出させる男女の行く末には大いなる希望が溢れている。どんなに目の前を暗闇が覆っていても、ほんの少しでも希望の灯が見えると人間は頑張れる、というようなメッセージ性は多くの人が同感できるだろう。
ちなみに我らが世界に誇る黒澤明監督も同じくタイトル名もずばりどん底を撮っているが、黒澤版どん底は舞台をロシア帝政時代から日本の江戸時代に舞台設定を変えているが、内容はかなり原作に忠実。あんまり黒澤作品の中では評判が高いとは言えないが、実は相当な優れもの。人間の内面の醜さを描き切ったストーリー展開はエネルギッシュであり、そして驚くのが宿屋のセット。ぜひルノワール版と黒澤版のどん底を見比べてみるのも一考だと思う。
どん底 [DVD] | |
ジャン・ギャバン,ルイ・ジューヴェ | |
ジュネス企画 |
原作本です
どん底 (岩波文庫) | |
中村 白葉 | |
岩波書店 |
監督は前述したようにジャン・ルノワール。この人のお勧めは本作と同じくジャン・ギャバン主演の反戦映画の傑作大いなる幻影、インドを舞台にした東西洋の異種文化交流が描かれている河が良いです。そして、記憶力に自信がある人限定でゲームの規則もお勧めしておこう。
主演の泥棒ペペルを演じるのがジャン・ギャバン。数多くの名作に出演している戦前から戦後にかけてのフランスを代表する名優。前述した大いなる幻影の他にジュリアン・デュヴィヴィエ監督の望郷、アラン・ドロン共演のカジノを舞台にした大金強奪サスペンス映画地下室のメロディー、フレンチ・ノワールの傑作現金(げんなま)に手を出すながお勧め。
すっかり落ちぶれてしまった男爵を演じるのがこれまたフランス映画史に名を遺す名優ルイ・ジューヴェ。主演から助演までその個性は際立っています。アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督の犯罪河岸、ジャック・フェデー監督の女だけの都、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の舞踏会の手帖がお勧め。
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