花鳥風月

生かされて行くもの達の美しさを見つめて,
ありのままの心で生きている日々の、
ふとした驚き、感動、希望、

忘れられないシーン

2008-11-17 18:48:33 | Weblog
            

         高校生の頃
         東京大学を卒業された英語の先生と

         黒ちゃんとニックネームのついた
         外語大学卒業の英語の先生が

         英語特別講義を週二時間を
         自由な教材を使って授業をしてくださいました。

     女子高生の間では
         「どちらが素敵か?昼休みになると、先生方の癖の
          物まねをする男子生徒が居て、盛り上がりました。」

         四角四面な教科書とは異なり
         その二時間が待ちどうしかったものでした。

     東大卒の先生は
         「東大生」だったという事がわかる
          難解なテキストを
          選ばれました。

         「モーム」の本から

         店のおやじさんが、
         毎日何回も道を尋ねられるシーンです。

     そのおやじさんは

     「初めて聞かれたかのごとく、誠心誠意丁寧に答えるのです。」

     たったこれだけの文章でした。

     先生は、「スゴイおやじさんですね~~~!!!」
     「本当に、、、素晴らしい!」
     「私も、、、このようになれたら、、、と思いますね!、、、」
     
     都会の紳士のような穏やかな色の白い先生でした。
     是も無く非も無く、お習字を書いているような
     抑揚の無い「力」の入った授業でした。
     全く、当てる事もしません。
     寝てる人も起こしません。


     「熟睡してますね、、、!いいですね(^^!
      羨ましいな~、、、」

     後は何も無いかのように英文を読んでは訳してゆきます。
     独りで、、、。

     ほほ杖をついている生徒も居ました。

     素晴らしい、、、???何が???、、、
     その時点では、
     感銘している先生の方がおかしくて

     「すばらしいですね~~~!!!」と、

     物まねをしては、、、
     「ははははは、、、ハハハ、、、!」

     東大生卒の気持ちは
     わかる~?

     「、、、、んんん、、、ハハハ、、わかるわけありません!」

     などと、、昼休みはワケモ無く盛り上がっていました。

     一方、
     「外語大卒の黒ちゃん」は、

    遥か彼方から!!!!!!!!、、、!!!

     上履きの皮が
     廊下をたたく
     前奏曲と共に、

     ガラガラ、、、ガラ!と

     教室の扉をすっ飛ばして開けて

     「おはよう!」

     腹から声を出して挨拶するのです。

     皆、眠気が吹っ飛び、
     背筋がピンとなり、
     黒ちゃんの
    「口元から飛び出す『日本語』にピリピリしました。」

     とにかく、、、

     当てるのです。

     「ハイ!君!本伏せて、今読んだところ復唱しなさい!」
     、、、、!

     次々と当ててゆくのです。

     素敵な魅力的な40歳代の
     おでこの皺を思い出すのですが、、、

     その皺は当てられても、、、
     「ウン」とも「スン」とも言わない
     私達生徒がつくった皺だったかも知れません。

     黒ちゃん「その方そのものの仕草」は
     忘れないのですが、

     「授業内容」が思い出せないのです。

     60歳を半ば過ぎて、、、
     思い出すのは、

     毎日毎日、何十回と同じ道を聞かれながらも
     初めて聞かれたように
     誠心誠意答えていた
     店屋のオヤジさんの話の授業です。
     

     黒ちゃんの
     精悍なカッコよい姿容は思い出すのですが、

     いつも、、、存在を消して、
     内容だけを
     生徒の机の上に置いていった、、、
     もう一人の先生は
     丸い顔をした御餅のように、、、
     顔が思い出せないのです。