日々のあれこれ

現在は仕事に関わること以外の日々の「あれこれ」を綴っております♪
ここ数年は 主に楽器演奏🎹🎻🎸と読書📚

おら おらで ひとり いぐも

2018-09-11 23:40:58 | 読書

若竹千佐子:著

 あいやぁ、おらの頭このごろ、なんぼがおがしくなってきたんでねべが

 どうすっべぇ、 この先ひとりで、何処(なんじょ)にすべがぁ

 何処(なんじょ)にもかじょにもしかたながっぺぇ

 てしたごどねでば、なにそれぐれ

 だいじょうぶだ、おめには、おらがついでっから。おめとおらは最後まで一緒だがら

 あいやぁ、そういうおめは誰なのよ

 決まってっぺだら。おらだば、おめだ。おめだば、おらだ。

 

桃子さんはさっきから堰を切ったように身内から湧き上がる東北弁丸出しの声を聞きながらひとりお茶をすすっている。ズズ、ズズ。

 

 

これが小説、『おら おらで ひとり いぐも』の冒頭部分。

こんな調子で30ページ近くも進んでいくものだから、最初はかなり戸惑った。

私は九州生まれの九州育ち。

東北弁に馴染みがなく、子供の頃には東北出身の歌手、新沼謙治さんや吉幾三さんが喋る東北弁をテレビをを通じてほんのちょっと耳にする程度。ずっと このスタイルで書かれているとしたら、正直、読み進めるのがしんどいかもしれない、と思ったことも事実。

桃子さんというおばあちゃんの心の声、しかも子供の頃の桃子さんやら、少女時代やら現在やら、幾人もの”桃子さん”が喋ってる声… それにネズミがカサカサ動いてる音やら、お茶をすする音やら。擬音もあるので、30ページほど、読んだところで最初に戻り、ちょっと声に出して読んでみた。意外なことに、「声に出して読んでみると」とても調子よかった。独特のリズムというか、東北弁のイントネーション。(わたしって、いや、おら 意外と 東北弁、しゃべれんでねぇの?)なんて なんちゃって東北弁で喋ってみた。読み聞かせにもいいかもしれない。調子に乗って、その場にいた母に20ページほど読み聞かせをしてしまった。

すると、ある おばあちゃまの顔が浮かんだ。「秀吉にいさんやら、家康にいさんやら…」すでに亡くなっている兄弟姉妹や両親のことを気にかけていたおばあちゃま。実年齢は90歳近いのに、「わたしは68歳。お宅も60歳?」と周囲に尋ねていたっけ。一度、そんな おばあちゃまの頭の中を…いや、心の風景を映像化してみてみたい、そこには どんな秀吉おにいさんがいて、どんな風に問いかけているのだろう? 何度かそう思った。グループホームで夜勤をしていた頃も、似たようなことを感じたことがある。 

『おら おらで ひとり いぐも』 この本は、懐かしい あの おばあちゃまが 見ていたかもしれない心の景色を文字化したようなもの。それを今、自分は読んでいる、最初は そんな感覚だった。

でも、実際には 宇宙の中の、🌏という星にに生まれたホモサピエンスとしてのひとりの女性、桃子さん、我々一人ひとりが 八角山に戻る、すなわち土に、地球に、宇宙の点に戻るまでの生涯を描いた小説、なのであって…。 多分、7~8年くらい前から、こんな小説が近い内、世に出てくると、予感していたのかもしれない。 読み始めた時は、あれだけ斬新だ~ 何なに?これ? と思った筈なのに、読み進めるにつれて、懐かしく、安心できて。最後は納得して頷いて幕を閉じる。 長生きすれば、いずれ誰もが辿るであろう道。是非、ご一読を~。

 

55歳で小説講座に通い始め、8年かけ執筆。63歳の時、2017年、最年長で文藝賞を受賞、という経歴も話題に♪

 

Comments (4)
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