ECCジュニア児童・中学生英検スピーキング試験が無事に終了後、図書館へ。(試験結果はGreatでした!良く頑張りました!)
本を借りてすぐ帰宅するつもりが、気付くと1時間半、そのまま図書館にて貸出を済ませたばかりの著書を読みふけってしまいました。井伏鱒二氏の短編を集めた『山椒魚』『屋根の上のスワン』まずは気になる物語から読み始めることに。石田衣良さんが選んだ『朽助のいる谷間』も収録されています。他の収録作品は次の通り;
岬の風景
へんろう宿
掛け持ち
シグレ島叙景
言葉について
寒山拾得
夜更けと梅の花
友人来訪
大空の鷲
『山椒魚』と『屋根の上のスワン』について~
先月、上記のタイトルは何処かで聞いたことががある、と書きました。それぞれ読み始めてすぐ、「これは以前、読んだことがある!」と確信に変わりました。だけど一体、何処で…? 『屋根の上のスワン』は渡り鳥であるガンのお話です。怪我をしたガンを見つけた男が治療をし、スワンと名付け、飛んで逃げていかないよう羽を短く切る…。残酷なようですが、我が家の手のりインコの内、2羽も最初の頃、親がそのようにしていました。時々、家の中で放し飼いにすることがあったからです。自由に遊ばせた後、鳥かごに戻そうとしても、とても賢く、その気配を察するとお喋りインコのピッキーは特に捕まえられなかったから。自宅で生まれたインコの家は、人間の家。しかし野生の渡り鳥は違います。そのことを子供ながら不憫に思い、屋根の上で仲間に向かって鳴き続けるスワンに肩入れしながら読んだ記憶が蘇りました。そう、このお話を読んだのは、間違いなく小学生の頃。はて、しかし、成人図書の文庫に子供が手を伸ばすでしょうか? そうではなく、子供向けに易しく書き直されたバージョンを読んだのでしょう。『山椒魚』も。蛙と山椒魚のやり取りが印象的です。2年の間に体が大きくなりすぎて岩屋から出られなくなった山椒魚。閉じ込められた形の山椒魚の心情を作家自身が読者に向けてやさしく解説してくれます。
「山椒魚は閉じた瞼を開こうとしなかった。
…途中、略
- どうか諸君に再びお願いがある。山椒魚がかかかる常識に没頭することを軽蔑しないでいただきたい。牢獄の見張人といえども、よほど気難しい時でなくては、終身懲役の囚人が徒に息をもらしたからといって叱りつけはしない」(新潮社文庫 14ページ1-3行目)
口論し続けていた山椒魚と蛙。一年が過ぎ、更に一年が過ぎたのち、2つの生物に芽生えた友情。ラスト1ページで描かれたやり取りは、絶望の中にあっても ほのぼのと温かいのです。
「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」(18ページ14行目)
直接的でない蛙の返答に、照れくささと友情を感じますよね。
余談ですが、「赤川次郎:著『殺人よ、こんにちは』のラストシーンを何故か思い出しました。(最初に読んだのは、松本洋子さんによる同名漫画でしたが。1980年代初頭『なかよし』に連載)
井伏鱒二氏の小説は、ラストの1行が強い印象を与え、しばらく余韻に浸ってしまうものが多いのです。
山椒魚もそうですが、『友人来訪』のラストも。「もう逢うこともないであろう」(227ページ3行目)女性が嫁ぐ前、忘れられない人を訪ねてくる話です。その男は新婚2週間。妻とのやり取りあり。短編なのに長編を読んだかのような読後感。これは、ここに収められたどの短編にも言えることですが…。何だか癖になりそうです! 名づけて、『井伏中毒』
『岬の風景』いわばハレンチな(死語⁉)女性が登場。月を目に例えて描くのも斬新。主人公の心情と月。心の動きに合わせて月も変る。幾通りもの月の描写が時折、怖くなるほど。真っ赤ないびつな月。片目の月。彼、と呼ばれる月…。
「そしてこの考えを一刻も早く真赤な片目に報告しようとして、瞳を瞑って、ぬらぬらと空に浮かび出る彼ーを待ったのである。」(86ページラスト)
ビックリ仰天な『へんろう宿」お遍路の旅人の宿を切り盛りする3人のおばあさんの話。その三人の生い立ちとは? 姨捨山は聞いたことがあったものの、これは…。現代のシェルターともいえるかもしれない。色々な読み方が出来る傑作!。
『シグレ島叙景』『言葉について』いずれにも、威勢の良い女性達が登場! 石田衣良さんが選んだ作品には、大和撫子ばかりが登場しましたが、当然ながらいつの時代もシャキシャキ江戸っ子か大阪おばちゃんのような女性も多数いる、いた、筈ですよね。石田衣良さん好みの女性が分かった気がして、ちょっと笑ってしまいました。余談ですが。
『夜更けと梅の花』こちらもある意味、スリリング! どちら側にも ある日、突然 なってしまう可能性ありってことか…。怖かった…です。 お酒にはくれぐれも気を付けましょう、と現代人にも語り掛けてくれます。
『朽助のいる谷間』最後にもう一度、読み直してみました。最初に読んだ時は、タエトと主人公のやり取りの方にドキマギしたものです。今回はダム建設の為、立ち退きを言い渡された朽助の哀しみ、怒り、やるせなさ、それらを更に際立たせているあらゆる小道具、例えば、十字架、蝶にはなれないであろう毛虫達、杏子の木、やがてダムの底に沈む運命である朽助の家…すべてが愛おしく、物悲しくて。ページ数にすれば、わずか20ページから62ページまで。いわゆる短編小説、42ページの物語とは、とても思えないのです。
長文を書くことは簡単なんです。寧ろ、必要最低限の長さに凝縮する方が遥かに難しいこと…う~ん。 ここまで短編作品で、この凄さ。長編ならどうなる? 沸々と湧きでる好奇心。こりゃ、読まずにはいられませーん、よね?
Well, I have to go to work. Bye for now.