日曜日の朝。
春ウララを感じさせる穏やかな朝。
桜の開花宣言があり、ピンクのツボミがちらほら見える。
いつもと変わらない朝。
7時半に職場に着き、売り場を通ると、遠くの方に西村チーフの姿が見えた。(昨夜は副店長が異動と聞いて、眠れませんでした。。。涙)
忙しそうに荷出しをしているチーフの後ろ姿に向かって、心の中で呟いた。
あちらは私が10メートル離れたところを素通りしたことに気付いていない。
グロッサリーの中では、一番に更衣室に到着し、着替えて他のスタッフがやってくるのを待った。
お姉さま方の、いつもの愉快な社員の話題。
いつもなら、笑い転げる私・・・。
でも、なんとなく乗れない。
まだ、みんなは知らないみたいだ。
そのまま、あの事には触れず、売り場へ降りた。
「グロッサリー担当者、10番まで」
10時頃、西村チーフの呼び出し放送。
私は、その時、すでにバックに居た。
「何々??ハマグリ君、また何か、やらかしたのお?」
と、冗談を言いながら、岸辺さん、矢木さん、梅子さんがやって来た。カト君も。
「みんな、揃った・・・ね?それじゃ、行くよ」
いつものように、グロッサリー御一行様は、西村チーフを筆頭に、プラットホームの外へ出た。(矢木さん、岸辺さん、梅子さん)・・・(ハマグリ君とカト君)・・・そして私 (きっと、あのお話だわ・・・)
「今朝は大事なミーテイングがあるんよ」
ほら、きた。
副店長が・・・。
「このメンバーでお茶会をするのは、今日が最後です・・・」
えっ!?!?
このメンバーで??
どうして??
副店長は、元々お茶会なんて、一度も催さないじゃない!
「このう店へ異動することになりました。だから、皆さんとお茶をするのは、今日が最後です・・・」
ガ~~~ン!!!
私は我を忘れて叫んだ。
「異動・・・って!?
西村チーフも異動するんですか!?
南副店長だけじゃなくて・・・???」
何故?どうして??一度にグロッサリーから上司二人も・・・?
「南副店長は、安見店。俺は、このう店に異動します」
大ショックを受け、そのあと黙った私の後に続いて、西村チーフファンの岸辺さんが、すかさず質問した。
「いつからですか?」
「4月1日から・・・」
「あと、一週間じゃない」
その後、色んな質問がスタッフから飛び出し、私は呆然とするしかなかった。
店長か副店長のいずれかが異動になるだろう・・・とは、皆、予想していたことだ。
でも、西村チーフが・・・とは、スタッフの誰も考えなかったし、噂もしなかった。
岸辺さん曰く、西村チーフが一番優しいのだ。
仕事のことで、相談しやすいのだ。
怒ったり、不機嫌になった顔など、一度も見たことがないのだ。
(私、ここにきて、もう9ヶ月だけど・・・ほんとに一度もない!)
宮崎のお土産を手渡す時など、照れた顔なら何度も見てきたが・・・。
あと、花粉症で泣いているところなど・・・。
一番若い上司なのに、全く波がなく、いつも穏やかで、一番精神的に、安定感があるのだ。
これは、カトちゃんにも言えることだが・・・。
これって、凄いことでしょう?
凄いスピード出世すること間違いなしだと思う。
そして。。。
タイプは全く違うが、熱血仕事人の熱い男、南副店長。
二人を同時に失うことは、店長の過労死の危機
どーするのよ、いったい!?
「急に、しゅん・・・となったね」
みんなが今後の事を色々と議論している最中、岸辺さんは、私に言った。
公の場で泣かない努力をしているんです。
「このう店なら、私の自宅から、一番近いです。買い物に行きますから」
と、西村チーフに言った。
すると、岸辺さんは、急に元気になり、
「そうよ!このう店でも、乾物のスタッフを募集してるかもよ!
付いていったら?」
そうだ!その手があったかあ~~!
それじゃ、岸辺さん、さようなら~~
・・・ちょっと、岸辺さん、私を さくらから追い出そうとしてるんじゃないですよね?(ちょっと意地悪な発想ね)
そこで、私はこう、答えた。
「それじゃ、みんなで このう店へ移動しましょう?」
朝礼が終わり、解散した後も、岸辺さんは売り場で私とバッタリ会うたびに、
「寂しくなるね・・・。花粉症と一緒になって、涙が出てくる・・・」
本当に、泣いていた。
私も思わず涙ぐんだ。
悲しい、寂しい、嫌だこんな人事。
こんな三つの感情が、ぐるぐる渦巻く。
気が付くと、同じ場所ばかり前出ししていて、はっとする。
「今日は、疲れたね・・・」
更衣室では、皆、こう言った。
ホント、疲れた・・・。
ヘンな(私達にとっては)人事の発表に疲れた・・・。
二人の上司と一緒に働けるのは、あと、何日??
この日から、悲しいカウントダウンの日が始まった・・・。