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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 871 未来のヒーロー ①

2024年11月20日 | 1977 年 



人の噂も七十五日とか。春に話題にのぼった男たちもその後、つい忘れがちなもの。そこで " あの春一番 " ともいうべき話題をまいた未来のヒーローの近況をお知らせしよう。

大きく育てる為の英才教育中
180cm・75kg 、左投げ左打ち。立花義家選手は見た目には何の変哲もないルーキーの1人だが、スカウト界隈では凄腕と定評のある青木一三クラウン球団渉外担当重役が惚れ込んで松下電器に就職が内定していたのを口説き落としてクラウンに入団させた大器である。その立花選手を一目見て「素材は張本以上」と感嘆したのが東映時代に張本選手を育てた松木謙治郎氏だ。御年68歳の松木氏が張本選手以来18年ぶりに情熱を傾ける逸材に巡り合ったのだ。立花選手の感想を求められた張本選手は「めったに褒めない松木さんに認められたんだから立花くんは本物。中距離打者の理論では松木さんの右に出る人はいない。全てを任せて頑張れ」と述べた。

立花選手が大物に育つかどうかは本人の努力次第。球団も英才教育を施す方針で「松木さんには島原キャンプの臨時コーチをお願いした。1年を通して立花くんを見てもらうというわけにもいかず二軍が名古屋に遠征した時に指導してもらった。これからも事情の許す限り指導をお願いするつもりです」と青木球団重役。松木氏からのアドバイスを和田二軍監督を通じて立花選手に伝えるようにしているが、やはり直接指導が望ましいのは確かで今後の課題として球団も苦慮している。

「立花は足も速いし肩も強い。守備だけなら今の一軍選手より上かもしれない。打撃に関しては徹底的に体を絞り上げて体幹を鍛えている過渡的段階。使い勝手のよい選手でいいなら直ぐに一軍に上げてもいいけど、将来的にチームの中心打者として活躍してもらう為には少なくとも今年いっぱいは二軍で鍛えた方が本人の為にもチームの為にもプラスだと考えた」と和田二軍監督は言う。新人王の資格も近年は条件が緩和されたこともあり、一軍昇格したら新人王が確実なレベルの活躍を出来るように球団も考えている。

出場即新人王といった形のデビューにしたいというのが球団の考えで暫くは温存したいようだが、立花選手の成長度は球団の思いを超える。8月5日に行われたウエスタンリーグのトーナメント大会で最優秀選手に選ばれるなど早くも実力の非凡さを示した。「何をやらせてもサマになる選手。天性の何かを持っているし、実に熱心でタフ。暑い今はさすがにバテがきているが、この夏を乗り越えればもう一段階飛躍できるでしょう」というのが和田二軍監督の見方だ。春の話題をさらった男は順調に成長しているようだ。

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