四国八十八ヶ所を巡礼をしていると、いたる場所で土地の人から お接待を受ける。
お遍路さんが過酷な信仰の旅であることを理解しているために、古くから四国に根付いている一種の文化である。
お菓子や飲み物、畑に実っている果実などを無料でお遍路さんに施すこと。
同行二人の弘法大師さまに対するお供えの意味も含まれている。
結願の大窪寺に近い、廃校となった学校の跡地が今は、土地の人々の寄り合い所、遍路小屋をかねて、野菜を売ったり、ちょっとしたうどんや蕎麦を食べることが出来る場所になっている。
蓬餅を搗いて、お遍路さん達へのお接待が始まろうとしていた。
☆ 蓬餅搗く真緑に臼と杵
餅を搗くなぞは五十年ぶりと云う人の混じり杵を代わる代わる振り上げている。
私の子供の頃は家でお餅を搗いていた。近所の人が集まって角の庭で賑やかに搗いていた。
臼の中の餅をひっくり返すのは母が時々やっていた。田舎ではこの作業を杵とりと言っていたが、さて全国的に通じるものかしらね。
☆ 囀りや声のはぢじける餅づくり
☆ たらちねの声は空耳草の餅
搗き上がった餅をご婦人達が待ちかねていて、あんこをいれて蓬餅となってゆく。
熱い、熱いと悲鳴をあげながら丸くもんでゆく。
☆ 接待のまだ湯気のこる蓬餅
ここは集落で取れた蕎麦を使った二八蕎麦が大変に美味しい。
小腹をすかして、蕎麦を食べている私達にも蓬餅を下さる。
切れ切れの蕎麦粉の多い麺は少し固めで歯ごたえがある。美味しいのだ。すぐに売り切れてしまう。
☆ 風薫る少し固めの二八蕎麦
燕が巣を作っている。
人間に慣れているのか餅搗をしている天井近くの止まり木から動こうとしない。
☆ タイムカプセルある廃校や燕の巣
そんなお接待が、、、吟行句になりましたとさ。
見ない物を見ろという師の教えとはほど遠いが、、、。