保護色で葉っぱの陰に隠れているけど
目と目が合ってしまった
どんな葬儀であっても、当人は死んでいるからいいが参列する人や周囲の人が大変だ。
心浮き浮きと葬儀の準備をし、参列する人などいない。
ただでさえ気候が悪く、人々の体調が悪い時に不祝儀が起こりやすくなる。
体調の悪い人が葬儀に参列してまた病人が増えてしまうことにもなりかねない。
多くの場合、喪服を着用することになっているから、タンスの奥の方から引っ張り出す。
手入れが良ければいいが、冬服の場合はしまいっぱなしになっていて、何かと湿気くさい匂いがしたり、夏服の場合は一度着たあと、そのままほったらかしにしておいて、出してみたら汗をかく場所に、白く汗じみが浮き出していたりする。
「こんなことになっていたとは…」とバタバタと準備しなければならない。
黒いネクタイがどこかに行っちゃったりして、参列する人々の中にはこういう人が何人かはいるはずだ。
生きているうちに、亡くなった人はこうして欲しいっていう意思を紙に残しておいたほうがいい、とはごもっともである。
死んだあとは何も言えないんだから、その意思をあとの人に伝えておかなければならない。
なるほど、と深く納得するのだが、正直いってまだ遺言状を書き残す気にはならない。
誰も将来のことなどわからない。
なるようにしかならないとつぶやきながら、日々を暮らしているのである。