ゴハン一筋。
ゴハンに操を捧げているのがコロッケである。
無論パン関係に身を売ったコロッケ仲間もいることはいる。
しかしコロッケだけはパンにあまり馴染まない。
やはりゴハンあってのコロッケなのである。
コロッケは地味な存在である
風貌、性格、容姿、いずれも派手さはなく万事控えめ、ひっそりしている。
その地味さかげん、陰影ある面ざし、生活感ある佇まい、いずれとってもゴハンの正妻という感じがする。
ゴハンと長く連れ添い、互いの裏も表も知り尽くした仲といえる。
ゴハンとコロッケ、これほど貧しくこれほど哀切でこれほど清々しい取り合わせが他にあるだろうか。
だからゴハンは、貧相な妻ではあるがこれを見捨てるようなことがあってはならぬ。
トンカツを愛人にしたり、たとえコロッケに先立たれても、メンチやハムカツを後妻に迎えるようなことをしてはならぬ。
…と心に誓うのであった。