人間の口の寸法は、人さまざまだがせいぜい5センチ。
平均すれば4センチ。
この4センチの穴から食べ物を取り入れる。
ということは5センチ以上の物は口に入らないことになる。
だからあらゆる食べ物は、最終的に4センチ以下のサイズに切ったりして口に入れることになる。
シュウマイしかり、肉団子しかり、握り寿司しかり。
ところがハンバーガー。
これは最初から口のサイズを無視している。
厚さ6センチ、7センチのハンバーガーはいくらでもある。
口の大きさに余るハンバーガーを無理やり口の中に突っ込もうとするとき問題が起きる。
それまでかろうじて秩序を保って積み重ねてあった具がずれる。
バーガーキングのデラックスオニオンリングワッパー
テイクアウトなのでいささかつぶれ気味ですが厚さ7センチ、直径は12センチとビッグサイズ。
手に持ったとき、ずっしり重い。
このまま口の中に押し込もうとすれば、鼻の奥のところまでパンがくるから息が苦しい。
ハンバーガーは商品である。
商品というものは消費者から苦情があれば、ただちに改良されるものなのだが、ハンバーガーに限って苦情はこない。
容認されているのだ。
容認どころか、その食べづらさを楽しんでいる様子もうかがえる。
ということになって、それならもっと厚くしてやろうということになり、8センチ、10センチというのさえある。
ハンバーガーは、わざと大きくした「わざともの」であり、食べ方は「かぶりつく」である。
人間はかぶりつくという行為に郷愁みたいなものを感じるのではないか。
大きな食べ物を目の前にすると理性を失うところもある。
人類の歴史は、そのほとんどが飢餓の歴史であったという。
大昔の人間は毎日毎日腹が減って腹が減って、探しても探しても食べ物が見つけられず、ようやく食べ物を発見したときのDNAが残っているらしい。
そのときの食べ物は小さいより大きいほうが喜びは大きいに決まっている。
そしてそのときの食べ方は、食べづらいとか、持ちづらいとか、口に余るとか、そういうことは問題にならなかったと思う。
その本性がハンバーガーのときに現れるのだ。
人間はあまりに美味しいと思ったときは唸ってもよいのではないか。
たとえばテレビのグルメ番組で、下手に美味しさを表現するより、低く唸ってみせるというのはどうか。
何と言いつつ唸るか、それはこれからの課題である。