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試写会に招かれておきながら言うのも何ですが、
試写会の意義とは何なのでしょう?
いつの頃から一般向け試写会が、これほどまでに盛況と
なったのでしょう?今や、一般公開に先駆け試写会を
実施するのは常識となっています。
映画愛好者の口コミ効果は、絶大な宣伝効果をもたらす
のかもしれませんが、同時に諸刃の剣でもあります。
もし、試写会での評判が芳しくなかったらどうするのか?
不評は好評と同じく、いえ、それ以上の早さで伝播する
可能性が否定できません。
作品によっては試写会に向かないものもあるのでは
ないでしょうか?例えば謎解きミステリーものなど。
公開前に試写会で散々露出して、公開時には既に飽きられて
いる作品も中にはあるのではないかと推察します。
今後は試写会流行を逆手に取って、あえて試写会をせずに、
映画ファンの飢餓感を煽る作品も出てくるかもしれません。
配給会社の宣伝戦略としては十分あり得る選択肢のひとつ
でしょう。
とまあ、長々と試写会についての雑感を述べたのは、
今回の試写会の宣伝効果について、
老婆心ながら疑問を持ったからでアリマス。
ハリウッドの”ネタ切れ”は、昨今の古い作品や海外作品の
リメイク流行りが証明するところですが、
今回の『ポセイドン』もまたパニック映画の金字塔と言われる
『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)の
リメイクであります。このオリジナルの『ポセイドン・ア~』
は70年代最初のオールスターキャストのパニック映画。
私はこれまでに何度となくこの作品を目にして来ました。
ジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、
シェリー・ウィンターズ等の顔が懐かしく思い出されます。
劇中歌の「モーニング・アフター」も、ポセイドン号の
その後を暗示するかの如く哀愁を帯びたバラードで、
今も耳に残っています。
この作品は、その年のアカデミー特殊視覚効果賞を受賞。
そしてこの作品のヒットを受けて、2年後には同じく
オールスターキャストで『タワーリング・インフェルノ』が
制作されました。その舞台は豪華客船から高層ビルへ。
スティーブ・マックイーン、ポール・ニューマン等、
豪華スターの共演が話題となりました。
アカデミー賞を総なめにした大ヒット作『タイタニック』も
『ポセイドン・ア~』を参考にしたと言われ、後発の
パニック映画に及ぼした影響は測り知れません。
そういう偉大な作品のリメイクです。
ただいたずらに巨大客船の転覆シーンを最新のSFX技術で
リアルに表現するだけでは、所詮オリジナルを超えることは
できないのです。
今回の『ポセイドン』はオリジナルの117分に対し96分
でした。息もつかせぬスピーディな展開。
確かにオリジナルに比べればセットも視覚効果も素晴らしい。
かくして観客は片時もスクリーンから目が離せず、
足下に迫り来る海水に恐怖しながら、
劇中の人物達の脱出劇に没入するのです。
しかし、そういった見栄えとは裏腹に、今回は人間ドラマの
部分が今ひとつなのは否めない。紋切り型の人物造型も
さることながら、各人物の生きるか死ぬかの瀬戸際で、
米国社会の底流にある冷徹な価値観のようなものが
垣間見えたようでした。その無神経さに、見終わった後
砂を噛むような後味の悪さが残りました。
昔ならいざ知らず…、34年経った今も、この程度なのかと。
弱肉強食と善人薄命。白人優位と人種・民族差別。
最後に助かった人々の顔ぶれを見て下さい。一目瞭然です。
そのせいか、登場人物の誰にも感情移入できず、残念ながら
何の感動も感慨もなかったのです。この作品が長く自分の
記憶に留まることはないだろうと思う。
これからご覧になる方は、こと臨場感と迫力に関して言えば、
十分楽しめるのではないでしょうか?