新聞報道によると、参議院議長の山崎正昭が、園遊会で天皇に手紙を渡した参議院議員の山本太郎に対して「参院の品位を落とすものだ」と厳重注意したという。また、今後は議員・山本の皇室行事への出席を認めないと伝えたそうだ。
天皇の政治利用はけしからんと、議員辞職ものだ、懲罰だと田中正造まで持ち出して息巻いていたわりには、しまらない結末だった。
しかし、あの手紙といわれている文書は何だったのだろうか。請願なのか、情報伝達なのか、たんなる時候の挨拶だったのか? 内容が公開されていないので、参院議長だって中身を知っていたわけではないだろう、と思われる。
請願であれば、それは憲法16条で認められており、請願法は第3条で、天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない、としている。国会議員としては自らの政治的無能をさらけ出すことになる天皇への請願だが、法律によって認められた権利だ。また請願法は第4条で、請願書が定められた官公署以外の官公署に誤って提出されたときは、その官公署は、請願者に正当な官公署を指示し、又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない、と定めている。
手紙であれば、時候の挨拶を含めて、天皇に手紙を書いてはいけないという決まりはない。何かを天皇に直接渡してはいけないという決まりがあるという話も聞いたことがない。
そういうわけで、参議院議員・山本太郎のやったことは、「園遊会の慣行」にそぐわなかったということだけのようだ。
主権回復の日の式典に天皇の出席をもとめ、参加者が式典終了時に天皇陛下万歳と叫んだことがあった。政府主催の行事の慣行にそぐわないと野党は批判したが、どこからも厳重注意の言葉は聞かれなかった。
参議院議長の議員・山本に対する厳重注意の根拠は不明確である。「参院議院運営委員会は8日の理事会で、園遊会で天皇陛下に手紙を手渡した無所属の山本太郎参院議員に対し、山崎正昭参院議長が厳重注意した上で皇室行事への出席を禁止する処分を決めた。いずれも正規のルールに基づかない異例の措置で、国会法で議長に与えられている『秩序保持権』を根拠とした(『産経新聞』11月8日)」。
参議院規則第216条に「すべて紀律についての問題は、議長が、これを決する。但し、議長は、討論を用いないで、議院に諮りこれを決することができる」とあるが、すべての紀律とあるが、これは「院内におけるすべての紀律」のことだろう。園遊会に参院議長の秩序保持権が及ぶという話は聞いたことがない。
(2013.11.8 花崎泰雄)
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