岸田文雄内閣総理大臣が5月1日政府専用機で3か国訪問の旅に出た。ついでに言えば、岸田内閣の他の閣僚13人もこの連休中に外遊に出る。「外遊」とメディアは言うが、日本政府の外交を進めるための、国費による外国出張である。外遊にでかける大臣の数は閣僚の3分の2以上になる。
岸田首相はフランス、のブラジル、パラグアイへ旅する。上川陽子外相は6カ国へ。アフリカ3カ国と南アジア2カ国、フランスへ。パリで開かれるOECD閣僚理事会には、岸田首相、上川外相、松本総務相、斎藤経産相、河野デジタル相、新藤経済再生担当相が出席する。斎藤氏と伊藤環境相はG7気候・エネルギー・環境相会合に出席。自見万博担当相はパリで博覧会国際事務局のケルケンツェス事務局長と会談を予定。
自民党は「統一教会」問題でブーイングを浴びた。続いてパーティー券裏金問題。一番大がかりだった安倍派は派閥の岩盤がひび割れ、さしものに二階氏も次の選挙には出馬しないと言わざるを得なくなった。麻生派以外は派閥の解消を表明した。自民党は衆院補選で東京15区と長崎3区で党公認候補を立てることができなかった。不戦敗2。島根1区で立憲党候補が自民党候補を破った。敗戦1。
岸田首相には、国賓待遇で訪米した時のような高揚感は、おそらくないだろう。記録的円安が続いている。円相場の高下はアメリカの金利次第で、日本にできることは多くない。アメリカから武器を買うが、このさきの支払いをどうしたもんだろう。円安で日本観光に来た外国人が観光地を闊歩する。海外旅行をあきらめた日本人の鬱屈。首相は足どり重く3か国をめぐり、先々の事を考えて宿舎で寝付けない夜を過ごすことだろう。といって、自民党総裁・総理大臣の延命策はない。ただそんなことを気に欠けるような人物ではない、と岸田氏の鈍感力を指摘する報道も少なからずある。
自民党内からはこの3補選全敗の責任を問う声が聞こえない。反岸田勢力の核になる議員が今のところ見当たらない。有権者の自民党批判の声も、時が過ぎれば小さくなってくる。”governability” という英単語を、昭和のころには「統治能力」と誤解する政治家が多かった。本来は「統治を受け入れる国民の側の許容度」といった意味である。したがって、岸田氏にとっての「蜘蛛の糸」は、よりどころの派閥を失った自民党国会議員の「ガバナビリティー」と日本の選挙民の「ガバナビリティー」だけである。
外遊中の諸大臣のみなさまの実りある出張を祈念します。
(2024.4.9 花崎泰雄)
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