「ウ~サギうさぎ、何見てはねる。十五夜お月さん見ては~ね~る~♪」
秋の夜長、家族で夜空を見上げながら歌った。のんびりした時代。いまのように明りはなく墨を流したように真っ暗な夜だった。よけいに月や星の明かりが鮮やかに眺められた。あの美しさは忘れられない。
月はいろいろ形を変えて、子どもだった私を喜ばせてくれた。満月になると、うっすらとカゲが浮かぶ。不思議でもう目が離せない。
「月にはウサギが住んでるんだぞ。満月になると、餅つきをやるんだ。ほら、ペッタンペッタンって」
寡黙な父が優しい顔で教えてくれた。月を見上げる父は子どもに返っていた。大人も子供も豊かな自然が惜しげもなくくれたステキな風情を同じ目線で楽しんだよき昔。
もうあの感動的な神秘は存在しない。味気ない現実を突きつけられるだけ。家族で夜空に浮かぶ月を見上げる機会は格段に減った。
秋の夜長、家族で夜空を見上げながら歌った。のんびりした時代。いまのように明りはなく墨を流したように真っ暗な夜だった。よけいに月や星の明かりが鮮やかに眺められた。あの美しさは忘れられない。
月はいろいろ形を変えて、子どもだった私を喜ばせてくれた。満月になると、うっすらとカゲが浮かぶ。不思議でもう目が離せない。
「月にはウサギが住んでるんだぞ。満月になると、餅つきをやるんだ。ほら、ペッタンペッタンって」
寡黙な父が優しい顔で教えてくれた。月を見上げる父は子どもに返っていた。大人も子供も豊かな自然が惜しげもなくくれたステキな風情を同じ目線で楽しんだよき昔。
もうあの感動的な神秘は存在しない。味気ない現実を突きつけられるだけ。家族で夜空に浮かぶ月を見上げる機会は格段に減った。