難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

明日の講演「聞こえないことについて」

2010年09月18日 01時08分00秒 | エンパワメント
明日は午後から、地域の難聴者、中途失聴者に講演だ。
なかなか話の軸が定まらない。

10年以上も昔は「中途失聴、難聴について」などというテーマが多かった。
耳の構造とか、難聴者の聞こえ方とか、コミュニケーション方法のいろいろとか話していた。

帰宅する電車の中ではたと気づいたのが、関係性の障害の説明だ。
聞こえないことがその場のコミュニケーションの問題だけでなく、その影響と影響に長い間の蓄積の結果である人とのつながりが細くなること、社会とのつながりが薄くなることの障害を説明しよう。

これに、障害者権利条約の障害の捉え方やICFの生活機能モデルをつなげて話して、聞こえないことを新しい視点で考えてもらおう。
これをうちわを使った対話方式で進めてみたい。


ラビット 記

難聴者にとって「自立」とは?(2)

2010年09月14日 20時40分02秒 | エンパワメント
介護福祉のテキストには、「日常生活をセルフケアによって生活し、心理的に他者への依存から脱却し、自己決定(意志決定)できること。出来るだけ社会で何らかの役割を持って活動すること」というようなことが書いてあったりする。

しかし、自立についての記述はそう多くはない。
日常生活動作ADLが出来ること=自立ではないことは、リハビリテーションの目的が「参加」(人生)と「活動」(実生活)の活性化を目指すことからもあきらかだ。

難聴者の場合も自立というのは考え方、プロセスであってゴールでなく、ゴールは人それぞれに異なり、人生そのものだと思ったりしている。


ラビット 記

※夕立の後の夕焼け。上に延びるような陽光がきれいだった。
20:22に乗車して20:38に下車するまでに記す。

スティーブ・ジョブスの伝説の卒業式スピーチ 3

2010年09月12日 23時54分45秒 | エンパワメント
社会福祉士ヨッサンの修業:社会福祉の知識を見ていたら、アップルの創始者のスティーブ・ジョブズのスピーチが出てきた。
スタンフォード大学の卒業式におけるスピーチだ。

彼のスピーチの3つ目の話が「死について」であり、介護福祉従事者の云々というよりも、人生において、自分の心、直感を信じなさいというところに感じるものがあった.
http://blog.livedoor.jp/yossan69/archives/cat_994382.html


スティーブ・ジョブスの伝説の卒業式スピーチ 3


別の人による字幕もある。
Apple創始者・スティーヴ・ジョブスの伝説のスピーチ(2)


スティーブ・ジョブスの伝説の卒業式スピーチ(字幕入り) 2/2



ラビット 記

難聴者、中途失聴者の手話学習の意味(2)

2010年09月02日 00時02分05秒 | エンパワメント
難聴者、中途失聴者の手話講習会で、健聴者対象の講習会では重視
されていないことが重い意味を持つことが幾つもある。

1)自己紹介 名前がわかることが関係性の発展の基礎だからだ。
名簿を配布したり、ホワイトボードに書く、カードで示すなど明確
に伝わる方法が重要。
2)アイコンタクト 見つめるのではなく、自然に目を見て話す。
コミュニケーションに失敗している人たちは無意識のうちに視線を
合わせることを避けがちだ。手話を用いないで声だけでも、相手を
見て話すことができることをめざす。
3)コミュニケーション成就体験 話が通じることを最初の日に体
験する。
聞こえる人は話を聞けば通じるのが当たり前だから意識しないが、
初めて周りの人がどんな人だか知らない人に囲まれて、初めて講師
から声をかけられた時、ちゃんと答えられると言う体験が一人ひと
り大切。
4)受講の記録 初日から修了の日までの受講日誌。何を学んだか
だけではなく、自分の気持がどうだったかを記録していく。自分を
振り返るために必要。これは公開しない自分専用のもの。


ラビット 記
難聴者・中途失聴者対象の手話講習会の意義の一つは同じ難聴者などが集まることだ。

難聴という障害の理解もまだ不十分。
難聴者としてのコミュニケーションの考え方もまちまち。
家族や地域の人々、同僚の理解や支援の程度も様々。
年齢も人生も異なる。
同じ難聴で初めて手話を学びに来ているという共通項がある人たち。

同じ難聴者、中途失聴者の講師を見る、学ぶ人たちがお互いを見ることで自分の障害が見る機会がある。
そこから得るものは大きい。

※閉店するバイク店の前にあったBMW

難聴者の手話学習の意味(1)

2010年09月01日 23時58分34秒 | エンパワメント
難聴者、中途失聴者が手話を学ぼうとするのは、手話の習得によっ
て失われた会話、コミュニケーションを取り戻そうとするためだろう。
手話を学べば手話で話ができる、出来るようになるということを期
待、希望している。

しかし、難聴者、中途失聴者は難聴であることで会話ができないで
いる、あるいは会話の中に入れないでいるがそれだけではなく、聞
こえる人ならば会話によって生まれる知識の獲得、相手への共感、
畏敬、その他の感情によって、積み重ねられる「関係」が積み重な
らないのだ。結果としてその場にいる他の人より「関係」が薄く
なってしまっている。

手話の習得によって、同じ手話を学ぶ同級の受講生とのコミュニ
ケーション、講師とのコミュニケーションが生まれる。手話の表現
がぎこちなくても、一緒に聞こえないことを分かりあえているとい
う共通の意識を持っているので通じる。
会話が通じることと「関係が積み重なっていく」こと(関係性の発
展)が喜びとなって、学ぼうとする意欲が増してくる。

この「通じる」ことと「関係性の発展」が難聴者、中途失聴者の手
話の学ぶ意味がある。


ラビット 記
※通勤路に咲いている唐辛子

「自立のための手話講習会」だけれども、「自立」の定義は難しい。
難聴であることの理解、聞こえの障害だけでなく、関係性の障害を持っていることの理解があること、種々のコミュニケーションの方法があることを知っている人、権利意識を持った人と言うようなことを考えたが、ハードルが高い。

難聴者の集いを市が広報。

2010年08月17日 10時15分24秒 | エンパワメント
兵庫県加西市の難聴者の集いを加西市が広報して、支援している。

難聴者は聞こえないことで、人間関係や心理的なダメージを受けることが説明されている。

この理解が、要約筆記者の派遣、聞こえと生活の相談、相談支援員やピアサポーターなどによる心理的サポートなど難聴者の多面的な支援につながるように期待したい。


ラビット 記

=== 「難聴者」の Google ウェブ アラート ===

加西市地域における難聴者等の集い 市政 兵庫県加西市
中途失聴・難聴者は「聞こえない」ということで人間関係を損ないやすく、日常の色々な場面で挫折感を味わったり、必要な情報の入手が難しく仲間や障がい者団体の存在も知らず過ごしている方もいると思われます。そうした難聴者等が集い、情報を共有し、 ...
http://www.city.kasai.hyogo.jp/04sise/11osir/osir1008/osir100816i.htm

中途失聴・難聴者の手話を学ぶ意味?

2010年08月04日 22時39分29秒 | エンパワメント
今晩は、協会手話対策部普及班の有志と「中途失聴・難聴者の手話を学ぶ意味?」に付いて、意見交換した。

(1)手話を学ぼうとした心理、動機は何か。
(2)最初に気づいたことは何か。
(3)学習の中で気づくことは何か。

その中で手話講習会において「指導」するのは何か、「援助する」とはどういうことかという質問がでた。

「社会生活力プログラム・マニュアル」の重い本を持っていったので、その中の「援助者」とはについて説明した。
指導するのは手話の表現技術。
しかし、受講生が学ぶのは手話だけではなく、人としての価値観を取り戻すという学びをするのは受講生であり、講師・助手もそれを援助するの立場という理解に達した。


ラビット 記

※通勤路の途中のひまわりが咲いた。
背をいっぱいに伸ばして熱い陽光を浴びている。

ピアサポートとピアメンタリングの違い

2010年07月19日 08時44分42秒 | エンパワメント

障害者権利条約第24条教育の第3項に
障害を持つ人が教育における完全で平等な参加をかつ地域の一員として促進するために生活と社会開発能力を身につけられるように、国の責務を述べている。

この中に、様々なコミュニケーション様式、手段を身につけることとピアサポート、ピアメンタリングを受けることの促進が記述されている。

この教育とは生涯にわたって自分の能力開発、向上のためのことを指している。

学校教育だけでないことも注意しなければならない。
推進会議の議論が初等教育、学校教育、専門教育にのみ重点が置かれているのは疑問だ。

ピアサポートよりはピアメンタリングの方がもうすこし専門的なサポートの意味があると思うが日本語訳では両方とも「ピアサポート」とか「障害を持つ人の共助」のようになっている。

日本でも一般社会ではメンタリング、メンターはすでに普及した考えとなっているが、障害分野ではまだ諸国に比べてメンタリングの考えが浸透していないのかもしれない。
前項のピアカウンセリングとピアメンタリングを書き換えます。


ラビット 記

神戸の長田町の復興のシンボル「鉄人28号」のカレー。
子供も食べるためか辛さは抑えてある。肉の旨みはぎっしりだった。

3. States Parties shall enable persons with disabilities to learn life and social development skills to facilitate their full and equal participation in education and as members of the community.
To this end, States Parties shall take appropriate measures, including:
a) Facilitatingthe learning of Braille, alternative script, augmentative and alternative modes, means and formats of communication and orientation and mobility skills, and facilitating peer support and mentoring;
b) Facilitatingthe learning of sign language and the promotion of the linguistic identity of the deaf community;

http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=284

ピアサポートはピアメンタリングのこと?

2010年07月18日 19時37分38秒 | エンパワメント
7月27日の障がい者制度改革推進会議の総合福祉部会の論点整理の中に、ピアカウンセリング、ピアサポートは重要か?これをどう位置づけるかというのがある。

当事者によるピアカウンセリングやピアサポートは重要だ。
当事者による権利擁護アドボカシーの活動がピアサポートだという。
障害者権利条約の原文ではピア・サポートとピアメンタリングが並べて記述してある。(第24条【教育】第3項)

難聴者に対するピアメンタリングはアメリカでは大学でピアメンターを養成するプログラムがある。
聴覚障害とか社会の制度とか、結構幅広く学ぶのだ。
仲間が新しい仲間に対して、手を差し伸べるのは当然だがきちんと自覚した難聴者に成長するように支援するにはきちんと障害の理解やコミュニケーションの基礎、制度、対人援助の基礎を学ばなければならない。

ピアカウンセラーは専門職に近いが、ピアメンターはもう少し幅広い技術をおしえることが出来る。

新しく母親になるための母親学級の「難聴者」版が必要だ。

【このブログの中のピアメンターに触れた記事】
興味のある方は、カテゴリーを「エンパワメント」にしてみてください。
※以前の記事にはURLがハイパーリンクになっていないものがあります。

難聴者のリハビリテーション ピア・メンター・プログラム 2007.4/1
http://blog.goo.ne.jp/hearingrabbit/e/028c2a95c9af592211aa09e5ab78c4dd

人工内耳後のコミュニケーションの変化を観察する(1/2) 2008.1/2
http://blog.goo.ne.jp/hearingrabbit/e/50570875171c920e0907b99aeefd754b

難聴者の自立支援に心理学の必要な理由 2009.7/20
http://blog.goo.ne.jp/hearingrabbit/e/a9b1b675e3788e4bc5f9e3e1872ec30e

障害者政策研究全国集会自立支援分科会と難聴者問題 2009.12/6
http://blog.goo.ne.jp/hearingrabbit/s/%A5%D4%A5%A2%A5%E1%A5%F3%A5%BF%A1%BC


ラビット 記
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分野C 「選択と決定」(支給決定)
項目C-1 
論点C-1-1) 「必要な支援を受けながら、自らの決定・選択に基づき、社会のあらゆる分野の活動に参加・参画する」(意見書)を実現していくためには、どういう支援が必要か?また「セルフマネジメント」「支援を得ながらの自己決定」についてどう考えるか?
○結論


○理由


論点C-1-2) 障害者ケアマネジメントで重要性が指摘されてきたエンパワメント支援についてどう考えるか?また、エンパワメント支援の機能を強化するためにはどういった方策が必要と考えるか?
○結論


○理由

 
論点C-1-3) ピアカウンセリング、ピア・サポートの意義と役割、普及する上での課題についてどう考えるか?
○結論


○理由

 
論点C-1-4) 施設・病院からの地域移行や、地域生活支援の充実を進めていく上で、相談支援の役割と機能として求められるものにはどのようなことがあるか?その点から、現状の位置づけや体制にはどのような課題があると考えるか?
○結論


○理由


難聴者の手話について話す前に・・・

2010年07月09日 17時46分59秒 | エンパワメント
昨夜、地域の手話講習会の合同特別講演会で「中途失聴・難聴者の手話について」話をした。

80人くらいも来ていてびっくりした。ほぼ半分が今年4月から手話を学び始めた健聴者。難聴者対象のクラスも二つあるので難聴者が20人近くいた。

講演の最初に、障害者が一番関心を持っていること、手話を学習する人も知って欲しいこととして障害者制度改革の基本的方向が閣議決定されたこと、その意義は障
害に対する見方を変えること、そのことが政府の方針として決定したことを話した。


ラビット 記

適応能力のある聴覚障害者の4つの条件

2010年05月17日 12時52分07秒 | エンパワメント
ハワイの風さんから、以前のメールを再送してもらった。

日本でも深めたい内容だ。
なお「今年」というのは2010年ではなく、もっと以前のことだ。

ラビット 記
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今年のHLAAオクラホマ大会であったシンポジウムの記録がでていまして、それはまさに、一般社会にうまく適応し成功している難聴者の条件は何か、といったテーマでした。パネラーの一人、クリコス博士の発言によれば、適応能力があって成功する難聴者には大別して次の4つの特徴があるといいます。

1)自覚と認識ーー自分が難聴であること、難聴がもたらすチャレンジ(障壁)の両方を認識している。

2)問題解決への責任を負うーー難聴になったのは自分のせいではないが、難聴であることから起こる問題に対しては自分に解決する義務があるという姿勢。周りのせいにしない。問題解決への所有責任を持つ。

3)必要で適切な援助を周囲に求めるーー問題解決のために行動を起こす。つまり、周囲(カウンセラー、友人、家族など)にヘルプを求めたり、新しい知識を学ぶ(本、後援会、ピアサポートグループなどに参加する)。

4)外交的、楽観的、リラックスしているーー難聴だからと
いって人間としての価値は減らないという自尊感情(セルフエステイーム)を持っている。心配したり悲観ばかりしない。

“心理学を必要とする人たちの為の自助グループ”

2010年05月12日 00時15分30秒 | エンパワメント
「コミュニケーション」から検索して、たまたまヒットしたサイトからたどって行って、「心理カウンセリング」のページに行きあたった。

『交流分析』 と今話題の心理学 『NLP(神経言語プ ログラミング)』 を組み合わせたBCBプログラムを実践する人たちのサイトだ。

心理カウンセリングと言うとまだ敷居が高いが、「心理学を学ぶ」形で実質的なカウンセリングを受けることをになるのか。

元の元は、このサイト「ソーシャルワーク・オープン・ゼミナール」から。
http://www.socialwork-jp.com/index.shtml


ラビット 記
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≪ 自助グループ≫
~心理学を参加者の希望に応じて、実践的に体験学習~
“心理学を必要とする人たちの為の自助グループ”

【開催】月1~2回定期的に開催予定(土曜日もしくは日曜日に実施)

目的 
 一流のスポーツ 選手が、現役で力を発揮してゆく為には、目標を明確にし、それに対して現実的に努力をしていくことと、自分自身の体調管理などのメンテナンスが必要です。
 それと同じよう に、『今ここ』を生きる私たちが、生涯現役で『自分らしく』生きてゆく為には、自分自身の生きる目標(価値・指針)等をしっかり持ち、自分の心と身体の Careが必要不可欠!心身のケア(メンテナンス)が行えるということ は、自律した成人であり、誇れることです。心理カウンセリングやセラピー、心理学はその為には非常に効果的な手段。人間は、信頼関係の下で、 本来持っている力を自ら発揮し、回復、成長していきます。
 この自助グループでは、一対一ではなく、数人のグループの中で、すべての心を平等に、それぞれの力を適切に発揮することを目 的としています。そうすることで、本来人間のもつ心理的回復・成長力は更 に引き出し、自分らしく自己実現していくことを目指しています。
【時間】 2~2時間半
【定員】 4名~10名(お申し込み順)
【対象】
● 初めて心理学に触れられる方 
●  自分への理解や、心理的な問題を解決したいと考えている方
● 心理学を実践的に学びたい・活か したいと考えている方
● 日常の生活や仕事に、心理学を活かしたいと考えている方
● 心理学を実践的に扱う為の学習をしたい方
●  日常の生活をより生き生きと、生きがいを感じ、生きたい方
● 費用や時間的制限があり、カウン セリングを受けることが困難な方
その他...
【内容】
▽ 少人数、かつ心理カウンセラー・セラピストととして専門の知識を持つ、ファシリテーターの下、守秘義務に守られた安全な空間で、お互いの『考え』『気持ち』を分かち合い、更 なる自己実現を目指す
▽ 心理学の理論・技法・療法など の実践を通して、体験学習していく
▽ 詳細は、参加者のその時の状況や ご要望に合わせて決定
▽ 体験を通して自分自身や、共に取り組む仲間と、心理的成長を目指す
▽ お互いを尊重し『共にいる』ことで、人間関係やコミュニケーションのあり方を学ぶ
▽ 日ごろ中々表現できないことを、信頼できる空間で表現する
▽ リラックスしたい、安心できる場が欲しい方

コミュニティ臨床心理士という専門家が! 難聴者の場合は!?

2010年05月03日 15時20分39秒 | エンパワメント
難聴者等のエンパワメントを図るとき、聴覚障害の自覚、コミュニケーション方法の拡大と並んで、自尊心の確立が重要だが、この支援はどのように実践されているのだろうか。

難聴者等は、手話や読話を集団で学ぶ中で自然と集団的ケースワークを受けているが、手話指導者がコミュニケーション手段の獲得と自立を支援することを統合した指導をするためには、このケースワークの理論を学習しないといけない。


ラビット 記
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臨床実践としてのコミュニティ・アプローチ


概要
学生相談やスクールカウンセリングを変える「臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチ」。
これは、問題を周囲の人々との関係の中で捉え彼らに働きかける、狭義のカウンセリングの技法にこだわらず多様な方法を用いる、問題解決に際してクライエント本人の力を重視する、というもの。

既存のいくつかのアプローチを、よいところはそのままに統合・発展させ、個からネットワーク、支援システムまでを視野に入れて、日に日に増す「こころの健康」へのニードに応えようとする斬新な方法である。
コミュニティ臨床心理学は、多職種とどう協働していくか、ということを含み、これは臨床心理士に限らず、あらゆる援助職や学校関係者がもちたいと願っている力ではないだろうか。

統合失調症の大学生、DV被害の女子学生、問題行動がめだつ中学生、学力低下の大学生、教師のハラスメントが発覚した高校…筆者の経験した多様な事例を読みながら、「個の変容」と、「個と環境の適合」の両方をしなやかに援助する how toを、学べる1冊。

目次(筆者による構成)

第1部 臨床心理学の新しい活動モデルをめぐって
:コミュニティにおける心理援助の課題
:臨床心理学における新しい活動モデルの提案

第2部 臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチの創出―実践を通してのモデル生成
:精神科デイケアにおける統合失調症者への支援事例から
:キャンパスにおける統合失調症学生への支援事例から
:臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチの創出

第3部 臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチによる援助の実際―実践を通しての検討過程
:DV被害学生への支援事例から
:荒れた中学校へのシステム・コンサルテーションの事例から
:修学問題のためのキャンパス・トータル・サポートプログラムの事例から
:学校コミュニティへの緊急支援システムの構築と運用―教師の不祥事発覚後の高校への支援事例から

第4部 臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチのモデル化
:臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチの定義と構成要素
:臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチのプロセス
:臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチ実施上の留意点

まとめと今後の課題
http://www.geo-online.co.jp/ds/6167080/

難聴者等のための手話試論(メモ)

2010年04月29日 21時01分05秒 | エンパワメント
7月に、手話を学んでいる健聴者、その手話講習会に関わるろう者、行政関係者などに、難聴者の手話、コミュニケーションについて、話す機会がある。
どのようなことを話すか、メモしておこう。


難聴者、中途失聴者が手話を学ぶことの意義は何か。

手話を学べば、聞こえなくてもコミュニケーション出来るようになるというのが一般的な理解だろう。

それに対して、「手話の学習を通じて自立する力を身につけること。」というのが最近の東京の難聴者手話講習会関係者、少なくとも難聴者協会の考え方である。

それは、「手話を学ぶことで心のリハビリテーションを図る」と言うことをもっと具体的に表現したことである。

「心の」と言うのは、失聴や聴力の減退によって、周囲とのコミュニケーションが困難になり、寂しい気持ちになったり、孤独感に襲われたり、差別意識すら感じて悩んでいる辛い精神状態の事を表している。
「リハビリテーション」は一般的に機能回復訓練をリハビリテーションと理解されていることから、そうした精神状態から元気な聞こえていた時の状態をとりもどすという意味がある。

「心のリハビリテーション」だけでは不充分というのが私たちの考えである。つまり、寂しさを紛らわせたり手話による会話ができるようになることだけでは、難聴者、中途失聴者の「リハビリテーション」は十分ではないという理解がある。

「リハビリテーション」を「全人間的復権」といったのは上田敏だが、権利の復権というのが福祉関係者の常識になっている。機能の回復ではなく、機能不全や機能喪失によって失われたものを社会的な環境整備、サービスの充実によって補うことが障害を持つ人間の当然の権利として持っているという認識がある。

難聴者等にとって、手話講習会を受講しようとしたきっかけや目的は個々に違うだろうが、「元気になりたい」というのは共通だろう。本人の意識にどのくらいあるのか本人自身にもわからないが「健康な精神状態」「活動的な自分」を求めるのは人間の本能である。

自立することとは何か。
もちろん、自分で聞こえるようになるとか、聞こえるようにふるまうということではない。それは「自己決定」できること。

自己決定するだけなら、別に手話を覚えなくても筆談している人でも自己決定の考えを学べばいいではないかと言われるかもしれない。
それはそのとおりである。しかし、筆談している難聴者が普通に生活し、書物などを通してその考えに至るのは至難である。

手話講習会の意味がここで明確になってくる。
手話講習会は同じような難聴者等が集まって学習する。集団で学習するというのはその構成メンバーの問題を解決する重要な手法で、集団ソーシャルワークという。個人ソーシャルワーク、社会ソーシャルワークと並ぶ方法である。

難聴者等が集団で学ぶことの意義は、第一に自分と同じ難聴者がいることを知ること。
ろう者と違って難聴者は自分の周囲に同じ障害を持つ人に出会うことは稀だ。病院や補聴器店で確かに大勢の難聴者がいるがそれぞれ難聴の治療や補聴器購入に来ているのであり、自分もその一人なので同じ障害を持つ難聴者と意識することは少ない。

第二に、自分のコミュニケーションの状況を客観的に見ることができること。
難聴者は他の人に話しかけたりすることに消極的で会話もすれ違ってしまうがそのことは自分では見えない。しかし、周囲に難聴者がいてお互いに会話している様子が見える。それは自分のコミュニケーションを鏡に映してみているのと同じだ。

第三に、生きた会話によるコミュニケーションの場であること。
本やDVDで学習するのと違って、リアルタイムでコミュニケーションの状況が発生している中で学習するので大いに刺激を受ける。
手話を学ぶときには、実際の生活、日常会話を表現する。
「おはよう」、「ご苦労様」、「おいしい」、「分かった」などだ。
この時に「おはよう」と声を出しながら手話表現する。なぜか?普段の生活で日本語を話しているからだ。

手話を学ぶとき、手話の表現と日本語(音声)の対応を説明を受ける。
「おはよう」というのは「おはよう」[ラベル]と表します。これは枕を取って置き上がる仕草です。この拳が枕です。顔を起こす代わりに拳の方を動かしていますなどと説明する。

第四に、(以下続く)

シンポジウム「聴覚障害者への専門的相談支援研究事業を終えて」

2010年04月26日 02時39分09秒 | エンパワメント
聴覚障害者へのソーシャルワーク(相談支援事業)は、ろう、難聴を問わず、必要だ。
残念なことに、難聴者、中途失聴者への相談支援は行われているが、難聴であるソーシャルワーカーはまだ少ないと思われる。

難聴は障害の表れ方が個々に異なっている上、難聴であるクライアントの問題は多様なので、難聴であるソーシャルワーカーが同じ障害を持っているからと言うだけでは解決が困難だろう。

自身の体験を超えるためには、多くのケースを持ち寄って研究しなければならない。


シンポジウムのテーマがないが、ディスカッションと同じと考えて、
「聴覚障害者への専門的相談支援研究事業を終えて」を挿入した。

ラビット 記
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日本聴覚障害ソーシャルワーカー協会
第4回研究大会のお知らせ
by 高山 亨太
~「聴覚障害者への専門的相談支援研究事業」を終えて~

独立行政法人福祉医療機構の平成21年度助成を受けて、1年間標記研究事業を実施し、 2010年3月に報告書をまとめることができました。今回はこの報告書をもとに、聴覚障害者に対する専門的な相談支援とは何かを課題に研究大会を開催したいと考えています。

この報告書は、協会会員はもちろん、聴覚障害関係施設やろうあ者相談員の方々にも送付しています。今回の研究大会に参加される方にも配布予定です。みなさんと一緒により報告書の内容を深めることができればと思っていますので、奮ってのご参加をお願いします。

◆開催場所 横浜ラポール 障害者スポーツ文化センター
〒222-0035 横浜市港北区鳥山町1752
Tel 045-475-2001 Fax 045-475-2053

◆プログラム
6月26日(土)
午前 定期総会(会員のみ)

午後 講演
13:00~  受付
13:30~13:45   開会挨拶
13:45~15:45 
講演 「聴覚障害児・者の社会生活力を高める支援」 
奥野英子氏 
(筑波大学シニア・アドバイザー・日本リハビリテーション連携科学学会副理事長)
16:00~16:30  質疑応答
17:30~      交流会

6月27日(日) 
受付 9:00~  
9:30~12:00 シンポジウム
「聴覚障害者への専門的相談支援研究事業を終えて」
13:15~15:45
シンポジウムの内容でディスカッション
15:45~16:00  まとめ・閉会の挨拶

◆参加費
正会員・準会員3,000円 学生会員2,000円 非会員4,000円

◆申し込み方法  
別紙に記入の上、FAXまたは、メールでお申し込みください。
参加費は、当日にいただきます。

◆申し込み先・お問い合わせ先(定員になり次第締め切ります。)
日本聴覚障害ソーシャルワーカー協会事務局長 矢野耕二
〒150-0011 東京都渋谷区東1-23-3
東京聴覚障害者自立支援センター内
FAX 03-5464-6059 
メール office@jaswdhh.org