米寿(88歳)の祝いの十日前に、母は脳梗塞を患い半身不随になってしまいました。
誰にも見せたことがなかった気丈な母の泣き顔を、記憶に刻み込まれるほど見たのは入院中のこと。
先行きの不安に加えて、コロナで面会もままならぬ時期でした。
半年のリハビリ入院後は関係者のアドバイスを受け、有料老人ホームへ移りました。
個人の部屋を持てたことと、美味しい食事と静かな環境で落ち着きを取り戻した様です。
先月、89歳の誕生日を迎えました。
コロナ対策で面会が出来ない中、携帯電話でおしゃべりをしています。
母 「もう、この人生を終わりにしたい」
不自由な身体だし89歳まで生きれば充分。 という気持ちもわからないではありません。
しかし、こればっかりは・・・
私 「生きたくても死にたくても、思い通りにならないのが寿命なのよ」
いなしながらも身につまされます。
母は入院までは一人で暮らし、なんでも自分でやっていました。
食事の支度・洗濯・掃除すべてやってもらえる生活は理想ですが、 生活のハリはなくなるかもしれません。
出来るのにやってもらうのと、出来なくてやってもらうのとの違いはあるでしょう。
生きているハリも意味も見いだせないのかもしれません。
先週、老人ホームのスタッフから電話を受けました。
入浴中にバランスを崩して転倒し、後頭部にタンコブができてしまったとのこと。
介助者が付いていながら申し訳けありませんでした。
謝罪とその後の報告でした。
『念のために外科でCT検査を受けたが、脳内の異常は見受けられなかった。
とはいえ、今夜は部屋に様子を見に行く回数を増やして万全の体制で臨む』
常々人生を終わりにしたがっていた母です。複雑な気持ちで見舞いの電話をかけました。
ところが
母 「頭の中は大丈夫で良かった。 死ぬかと思っちゃったわよ!」
笑って言いました。
死ぬかと思っちゃった?
ど、どっちなのよ~!?
生きたいのか終わりにしたいのか、本音はわからないものです。
「死ぬかと思った」を英語にすると
「I thought I was going to die」(アイソータィワズ ゴナダイ)・・・死ぬかと思った
「死ぬかと思った」 は私と弟の笑い話になっていますが
生きたい本音を知り、私たちの気持ちは軽くなりました。
#脳梗塞 #半身不随 #有料老人ホーム #人生終わりにしたい