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飛鳥 ー水の王朝ー
千田 稔 著 中公新書
久しぶりの読書日記である。本を読んでいないわけではないんだけど、ブログを書くほどまとまった時間が取れないというか、そんな気分になれないでいるだけなんだと思う。
「飛鳥」をテーマにした本である。発掘調査など最近の知見を元に飛鳥人の文化や思想を描いている。飛鳥は、「日本」という国家が誕生した場所である、そこが大事なのだという、そこを踏まえて読み解いていかないといけないと言うことなんだろうか。
著者は飛鳥は石の文化だという。たとえば宮跡で石が敷き詰められていたりしていることから「百敷る」という枕詞ができたのだという。そして石と敷き詰めることによって清浄な空間を表しているのではないかと語っている。そういえば神社でも境内に玉砂利を敷き詰めたりしているのはその名残かもしれないと思ったりする。石と神々とのつながりを求めるのは古来からあったようで、甘南備山にある岩磐なんてのもそうでしょう。
そして磐余という地名も、岩磐から来ているのではないかとしている。
飛鳥に宮が置かれたと確実なのは、どうやら推古天皇の豊浦宮からであるらしい。著者は蘇我氏の邸宅が置かれた甘樫丘と近いことから蘇我氏のバックアップの元に推古天皇が擁立されたのではないかという。ただ本書の著述を見ると厩戸皇子(聖徳太子)の役割が見えてこない。どうも蘇我稲目の娘である堅塩媛系と小姉君系との対立の中で忌避されてのだと見ている。但し厩戸皇子自身は両方の系統の血が入っていて、血統的には一番蘇我氏に近いはずである。そして絶えずこの上宮王家が皇位継承に絡んでくることを考えると、そうは言いがたいのではないだろうか。一般に伝えられているほどの超人的な働きはなくともある程度の勢力は保持していたのではないだろうか。
その厩戸皇子がすんでいたと考えられる宮跡が桜井市で発掘されている。(但しほとんど保存はされていないそうだ。)
飛鳥にはその後、舒明天皇、皇極天皇、斉明天皇、天武天皇の宮が造営されている。そして伝板蓋宮跡がそれらの宮跡と考えられているようだ。
そして斉明朝が大土木工事の時代である。本書の副題である水の王朝とは斉明朝をさしている。斉明朝は飛鳥の地形を変えるほどの土木工事をしている酒船石のある丘もどうやらこの時代に人工的に作られたものだという。そして大きな池を掘り、噴水施設などを大々的に作り、水時計を作って、時を管理した。これらは道教の影響を受け、蓬莱山などの思想を顕そうとしたのではないか。天皇という言葉自体道教の影響を受けているらしい。
最近、発掘された亀形石造物もこれに関係する施設だったようである。亀というのはこの時代何らかの信仰の対象だったような気がする(そういえば亀石は本書によると寺院の礎石の未完成品だとしている。)
ただ斉明朝については、「自己肥大」という常に日本国家が陥る病の始まりだといっており、興味深い。しかし斉明朝に対する評価というのはここ10年ほどですっかり変わった気がします。
本書自体、書かれた時点での新しい考古学の知見が書かれており、非常に勉強になりました。また飛鳥を歩いてみたくなった。
※画像は高松塚古墳の現状。墳丘の竹がきれいに刈り取られ、巨大な鉄骨に覆われているのが痛ましい。
千田 稔 著 中公新書
久しぶりの読書日記である。本を読んでいないわけではないんだけど、ブログを書くほどまとまった時間が取れないというか、そんな気分になれないでいるだけなんだと思う。
「飛鳥」をテーマにした本である。発掘調査など最近の知見を元に飛鳥人の文化や思想を描いている。飛鳥は、「日本」という国家が誕生した場所である、そこが大事なのだという、そこを踏まえて読み解いていかないといけないと言うことなんだろうか。
著者は飛鳥は石の文化だという。たとえば宮跡で石が敷き詰められていたりしていることから「百敷る」という枕詞ができたのだという。そして石と敷き詰めることによって清浄な空間を表しているのではないかと語っている。そういえば神社でも境内に玉砂利を敷き詰めたりしているのはその名残かもしれないと思ったりする。石と神々とのつながりを求めるのは古来からあったようで、甘南備山にある岩磐なんてのもそうでしょう。
そして磐余という地名も、岩磐から来ているのではないかとしている。
飛鳥に宮が置かれたと確実なのは、どうやら推古天皇の豊浦宮からであるらしい。著者は蘇我氏の邸宅が置かれた甘樫丘と近いことから蘇我氏のバックアップの元に推古天皇が擁立されたのではないかという。ただ本書の著述を見ると厩戸皇子(聖徳太子)の役割が見えてこない。どうも蘇我稲目の娘である堅塩媛系と小姉君系との対立の中で忌避されてのだと見ている。但し厩戸皇子自身は両方の系統の血が入っていて、血統的には一番蘇我氏に近いはずである。そして絶えずこの上宮王家が皇位継承に絡んでくることを考えると、そうは言いがたいのではないだろうか。一般に伝えられているほどの超人的な働きはなくともある程度の勢力は保持していたのではないだろうか。
その厩戸皇子がすんでいたと考えられる宮跡が桜井市で発掘されている。(但しほとんど保存はされていないそうだ。)
飛鳥にはその後、舒明天皇、皇極天皇、斉明天皇、天武天皇の宮が造営されている。そして伝板蓋宮跡がそれらの宮跡と考えられているようだ。
そして斉明朝が大土木工事の時代である。本書の副題である水の王朝とは斉明朝をさしている。斉明朝は飛鳥の地形を変えるほどの土木工事をしている酒船石のある丘もどうやらこの時代に人工的に作られたものだという。そして大きな池を掘り、噴水施設などを大々的に作り、水時計を作って、時を管理した。これらは道教の影響を受け、蓬莱山などの思想を顕そうとしたのではないか。天皇という言葉自体道教の影響を受けているらしい。
最近、発掘された亀形石造物もこれに関係する施設だったようである。亀というのはこの時代何らかの信仰の対象だったような気がする(そういえば亀石は本書によると寺院の礎石の未完成品だとしている。)
ただ斉明朝については、「自己肥大」という常に日本国家が陥る病の始まりだといっており、興味深い。しかし斉明朝に対する評価というのはここ10年ほどですっかり変わった気がします。
本書自体、書かれた時点での新しい考古学の知見が書かれており、非常に勉強になりました。また飛鳥を歩いてみたくなった。
※画像は高松塚古墳の現状。墳丘の竹がきれいに刈り取られ、巨大な鉄骨に覆われているのが痛ましい。
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