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アメフト観戦記や読書日記を綴っていましたが、最近は古墳(コフ)ニストとして覚醒中!横穴式石室をもつ古墳にハマっています。

環境考古学への招待

2006-11-15 20:07:47 | 読書日記
 環境考古学への招待 -発掘からわかる食・トイレ・戦争-
  松井 章著 岩波新書

 環境考古学って、ずっと昔から花粉等の分析を中心に例えば日本の古環境の復元みたいなのをやっている学問だとおもってましたが、本書を読んで眼からうろこが落ちました。著者がターゲットにしているのはもっといろいろな分野のようで、本書の項目をたどってみると、次のようになる。
 1、食卓の考古学
 2、土と水の考古学
 3、人、豚と犬に出会う
 4、牛馬の考古学
 5、人間の骨から何がわかるか
 6、遺跡保存と環境

 例えば、人が何を食べていたのかがわかれば当時の様子を知ることができるということなんだろうか?本書の中で豚の家畜化の話が出てたけれど、この間東大阪市の埋蔵文化財センターにもヤヨイブタの骨が展示されていました。以前はおそらくいのししの骨とされていたものが、学問の深まりによって、弥生時代の家畜化された豚という種類が認識されてきたのかなあ。そうそう犬も食用にされていたそうです。犬は古くから人類の友だちという牧歌的な印象を持っていたのですが、そうとばっかりも言えなかったようです。本書にも紹介されていましたが、悪評高い徳川綱吉の生類憐みの令も実は日本人の食肉の風習と関係があるのだそうです。そういえばお隣の中国はお正月に食べはりますもんね。
 食べ物といえば、縄文時代に農耕は存在したのか?農耕というとつい稲作を頭に浮かべてしまうのが私どもの悪い癖なのだが、それに先駆する農耕があったのかなかったのか、現在ではあったと考えるほうが妥当であるようだ。但し基本は、縄文時代は狩猟と採集が中心であった時代であり、原始的な農耕で、社会全体の食料が生産されたということはない。(青森県で見つかった三内丸山遺跡では栗やひょうたんが見つかっている。)
 
 話は変わるが「環境」というのはどういうことだろう。愛用の新明解国語辞典によると①そのものを取り巻く下界と記述されている。私たちを取り巻く全体が環境ということなのだろう。ついでに「考古学」は主として発掘調査などで発見された「遺跡」「遺物」などを材料としてその時代の歴史を復元する学問だとの事。だからトイレも、発掘調査で発見され、その寄生虫などの研究を通して、当時の生活を復元していく限り、環境考古学には変わりないのだろう。そうなるとかなり幅のある学問である印象を受ける。
 また、非常に理科系ともかかわりのある学問である。今や考古学自体が人文科学というよりは自然科学系とかなりオーバーラップしてきているのだろう。昔、大学受験の時、文学部なんて行くやつは理科なんて関係ないやろと言われて、考古学なんて本気でやろうとしたら、化学なんかの知識は絶対要るぞと言い返してたことを思い出した。はからずともそんな状況になっているのだなあ。
 本書はすごく面白かった。いろんな驚きがあります。対象、分析手法も著者の独特なものがあって面白かったです。

 最近思うんですが考古学の本って、僕のように専門的に勉強していないけど興味があるって人種には、これという入門書がないんだよね。いきなり自分の分析、論証が中心になってて、共通認識を平明に解説している概説的な本がないような気がするんですがいかがでしょう。
 心ある出版社の方よろしくお願いします。
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