●今日の一枚 131●
Herbie Hancock Speak Like A Child
ハービー・ハンコックの1968年録音盤『スピーク・ライク・ア・チャイルド』、新主流派の傑作だ。ロマンチックなジャケットだ。どこかで読んだような気がするのだが、キスをしているこの2人は、ハービー・ハンコックとその奥さんなのだそうだ。本当だろうか。私もやってみたいものだ。
ハービー・ハンコックに熱狂したことはない。作品を長い期間フォローしたこともない。けれども、すごい演奏家なのだと思う。マイルス・グループでもVSOPでもハービー・ハンコックが加わると、そのサウンドはハービー・ハンコック的サウンドになる。ジャズ評論家の内藤遊人は、『はじめてのジャズ』(講談社現代新書)で彼を「マイルス・スクールの最優等生」と表現したが、やはり才能のある人なのだろう。
好きなアルバムであるし、比較的よく聴くアルバムでもある。ただ、かつて村上龍の次のような発言の意味がいまだによくわからない。
「『スピーク・ライク・ア・チャイルド』。最初の一音で、とても日本人はかなわない。『ああ、ジャズをやってなくてよかった』と思わせる。」(『ジャズの事典』冬樹社)
そんなにすごい「最初の一音」だろうか。ああ、理解できない。それとも、村上龍的な挑発的なプロパガンダ発言に過ぎないのだろうか。いつもの日本的貧困に対する嫌悪感を表明する発言なのだろうか。