WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ブルーノート盤ソニー・クラーク・トリオ

2007年03月24日 | 今日の一枚(S-T)

●今日の一枚 145●

Sonny Clark Trio (BlueNote盤)

Watercolors0013  同じタイトルのアルバムの聴き比べ。昨日、記したように、ソニー・クラークには『ソニー・クラーク・トリオ』と題する作品が2つあり、タイム盤が全曲ソニー・クラークのオリジナル曲からなるのに対して、この1957年録音のブルーノート盤はスタンダード曲中心の構成である。ベースがポール・チェンバース、ドラムスがフィリー・ジョー・ジョーンズとマイルスバンドのリズムセクションということも興味深い。

 この印象的なジャケットのBlueNote盤は一応名盤ということになっていて、Jazz解説本には必ずといってよいほど登場する作品である。特に「朝日のようにさわやかに」の評価は高く、多くのJazz解説本は口をそろえて名演の評価を与えている。実際、私のもっているCDの帯にも、《 人気天才ピアニストがマイルスバンドのリズムセクションと残したピアノ・トリオの金字塔!これなしにジャズ・ピアノは語れない 》などと書かれている。しかし、ちょっと言い過ぎではなかろうか。いい演奏であることに異存はないが、いつも一方で、それ程だろうか、などと考えてしまう。Time盤に比べて、心にあるいは身体にじわじわと迫ってくるものがないのだ。「朝日のようにさわやかに」にしても、普通の意味で良い演奏であるが、他のミュージシャンの演奏にくらべてどこがすごいのかという点については、いまひとつピンとこない。高名な批評家の後藤雅洋氏は、その著書『新ジャズの名演・名盤』(講談社現代新書)の中で、《 パウエル派ピアニストの平均的fハードバップ・ピアノ・トリオという印象が強い 》と勇気のある発言をされているが、基本的にはその通りなのだと思う。

 後藤氏にならって勇気をもっていってしまえば、私にってはやはり、まあまあの作品である。しかし、名盤とは呼べないが、その悪くはない内容と、飾るべき価値のある印象的で素敵なジャケットによって、記憶に残る一枚だとは思っている。

タイム盤 Sonny Clark Trio