WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

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2010年04月13日 | 籠球

 JBLファイナル。リンク栃木が3連勝で優勝した。信じられない。事前のチーム評価では、私も含め、多くがアイシン優勢と分析していたはずだ。リンク栃木には明らかに勢いがあった。しかし、それだけではない。マッチアップゾーンとそこからの速い展開、そして圧倒的なオフェンス能力でアイシンをねじ伏せてしまったという感じだ。

 第3戦は奇跡としかいいようのないゲームだった。第4Q残り15.7秒で55-52とアイシンがリードしており、残り13.1秒には57-52と5点差に広がっていたのだ。ところが、残り7.2秒には57-55で2点差となり、さらに6.3秒には58-55とまた3点差に広がった。しかし、試合終了直前、川村卓也の3ポイントシュートで58-58の同点に追いつき、オーバータイム(延長戦)となった。ブザーピーターだ。オーバータイムでは勢いに勝るリンク栃木が終始優勢に試合を展開し、結局71-63でリンク栃木ブレックスが日本一に輝いた。

 今年のリンク栃木は、ちょっと神懸っている感じがする。特に第3戦は私の同級生(同い年)のマイケル・ジョーダン君がいた時代のNBAを見ているようだった。川村卓也のオフェンス能力もさることながら、田臥勇太の圧倒的な統率力、スピード、トリッキーかつ正確無比なプレーは、コート上で明らかに群をぬいており、ただひとり別次元の異星人がいるようだった。

 リンク栃木の優勝は、日本のバスケットボールをいい意味で変えていくだろう。多くの企業チームの中で、クラブチームが日本一になった意味は大きい。白熱した応援がそれを物語っている。多くのファンを獲得し、バスケットボールに巻き込んでいくためには、リンク栃木的な地域に根ざしたクラブ化が不可欠だろう。バスケットボールが真にプロ化を目指すならば、ファンと一体となった試合展開が絶対に必要なのだ。その意味でも、今回のファイナルは日本のバスケットボールの今後を考える上でとても重要で示唆的なものだったと思うのだが、それが有料放送のsky A+でしか放送されなかったのは本当に残念である。多くの人にリンク栃木のミラクル勝利とファンたちの白熱した応援を見て欲しかった。

 一方、敗れたアイシンにとっては、いい経験になったかもしれない。かつて他のチームをお払い箱になったプレーヤーたちが団結していた、いわゆる「ファイブ」の頃は、ベンチプレーヤーも含めてチームが一体化し、勝つためにみんなが協力していた。しかし、常勝軍団となるにしたがって、ベンチでの応援はやや低調になり、なりふりかまわないひたむきなプレーは少なくなっていたように思う。今日の第3戦で、しばらくぶりにチームが一丸となって声をだして応援していた姿を、解説者が指摘したのは象徴的であった。

 いずれにせよ、今日は久々に(といっても、今回のセミファイナル・ファイナルは連日こうであるが)、記憶に残る素晴らしいバスケットボールを見させてもらった。