さて、2024年も残すところあとわずかとなった。例年通り今年も「安全問題研究会 2024年10大ニュース」を発表する。ニュースタイトルの後の〔 〕内はカテゴリーを表す。
選考基準は、2024年中に起きた出来事であること。当ブログで取り上げていないニュースも含むが、「書評・本の紹介」「日記」「運営方針・お知らせ」カテゴリからは原則として選定しないものとする。
・・・なのだが、今年は本当にいろいろなことがあり過ぎた。鉄道系ブログとしてはどうしてもランクインさせなければならないはずの北陸新幹線敦賀開業や、根室本線・富良野~新得廃止といった重要ニュースが、まさか10位以内にすら入れないとは思ってもいなかった。
だからといって、これらのニュースを選外にするわけにもいかず、熟慮の末、今年はやむを得ず、20大ニュースに枠を拡大する。ニュース枠の拡大は、2016年(20大ニュースに拡大)以来8年ぶりである。なお、この拡大のため、例年、選外となったニュースでどうしても残しておきたいものを取り上げている「番外編」の公表は、今年は行わない。
1位 能登半島で震度7の大地震 関連死含め500人近く犠牲に〔気象・地震〕
2位 羽田空港でJAL機と海保機が衝突、乗客全員脱出成功も海保機5人死亡〔鉄道・公共交通/安全問題〕
3位 日本被団協にノーベル平和賞 長年の反核運動実る〔原発問題/一般〕
4位 自民党総裁選で石破政権発足、衆院解散総選挙で自公過半数割れ〔その他(国内)〕
5位 改定エネルギー基本計画から原発「可能な限り低減」削除。福島の教訓忘れ露骨な原発回帰へ〔原発問題/一般〕
6位 東海道新幹線保線車両衝突、東北新幹線「はやぶさ・こまち」分離など新幹線トラブル相次ぐ〔鉄道・公共交通/安全問題〕
7位 米大統領選でトランプ氏返り咲き。民主ハリス氏大差で破る〔その他(海外・日本と世界の関係)〕
8位 中央リニア新幹線開業と北海道新幹線札幌延伸「延期」発表相次ぐ 計画の無謀さ明らかに〔鉄道・公共交通/交通政策〕
9位 女川・島根原発再稼働相次ぐ 敦賀2号機は規制委審査「不合格」で原電窮地に〔原発問題/一般〕
10位 NUMO(原子力発電環境整備機構)が寿都・神恵内での「核のごみ」最終処分場文献調査報告書を公表〔原発問題/一般〕
11位 根室本線・富良野~新得、無念の「廃止」 地元住民団体は復活運動へ〔鉄道・公共交通/交通政策〕
12位 北陸新幹線、金沢~敦賀間延長開業〔鉄道・公共交通/交通政策〕
13位 JR各社が相次いで値上げを発表。JR北海道をめぐっては当研究会代表が公聴会で意見公述。「みどりの窓口」削減など大幅なサービス低下も相次ぎ、利用者からの不満表面化〔鉄道・公共交通/交通政策〕
14位 知床遊覧船事故をめぐり、海保が桂田精一・同社社長を逮捕・起訴〔鉄道・公共交通/安全問題〕
15位 バスの深刻な運転手不足により全国的に減便・廃止相次ぐ〔鉄道・公共交通/交通政策〕
16位 「令和の米騒動」発生。8~9月にかけ全国で米が品薄に〔その他(国内)〕
17位 宮崎県沖でM7の地震。初の「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」発表〔気象・地震〕
18位 JR九州高速船日韓航路「クイーンビートル」で浸水隠し発覚。JR九州が日韓航路撤退へ〔鉄道・公共交通/安全問題〕
19位 「国内避難民の人権に関するダマリー国連特別報告者による訪日調査報告書」日本語訳が公開〔原発問題/一般〕
20位 東京、兵庫の知事選でSNSが影響力。フェイク、デマ情報の制限が課題に〔その他(国内)〕
【当研究会関連(上記以外)】
・当研究会代表、羽田事故問題、原発問題で「レイバーネットTV」に2回出演
・羽田事故問題で国交省の責任を連続追及。航空管制官の増員実現
・当研究会代表執筆論文「開業150年の節目に危機が顕在化した日本の鉄道」が月刊「日本の科学者」に掲載
・「リニアが通る村」長野県大鹿村で当研究会代表がリニア問題の報告
・「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4・27集会」で当研究会代表が記念講演
10大ニュースには、例年、鉄道関係カテゴリーから3つ程度、原発関係カテゴリーから3つ程度を選ぶこととしているが、今年は鉄道・公共交通関係の重要ニュースが多かった。しかも、事故・トラブル、廃線・減便、工事難航に伴う開業時期延期など、「鉄道・公共交通衰退」を感じさせるニュースばかり。明るい話題は新幹線敦賀開業くらいだが、いずれも今後の鉄道の帰趨を占う重要ニュースと判断した。
一方、原発関係は、今年は反/脱原発という観点からはまったくいいニュースがなく、10月までは9位「女川・島根原発再稼働相次ぐ 敦賀2号機は規制委審査「不合格」で原電窮地に」の1つだけでもいいと考えていた。
だが、11~12月にかけ、日本被団協のノーベル平和賞受賞、エネルギー基本計画改悪、NUMOによる文献調査報告書の公表などの重要ニュースが続いた。これらも、数年後に振り返ったとき「いま思えばあそこが転換点だった」と振り返られることになるのは確実な重要ニュースばかりであり、結局、原発関係も5つと例年を上回った。
それにしても・・1位の能登地震が元日、2位の羽田空港事故が1月2日の出来事であり、「新年の2日で今年の10大ニュースのツートップは決まったようなものだ」と新年早々思ったが、結局、この2つを凌駕するような重要ニュースは、当ブログ的にはなかった。
地震関係のニュースが2つもランクインするなど、とにかく今年は地震に翻弄された年だった。震度5強以上を記録した地震は、東日本大震災が起きた2011年以降としては、最も多い年になった。
もう1点、上記のランキングを見ていて思うのは、1つの事件がドミノのように連鎖的に他の事件を引き起こしていくケースが今年は非常に目についたことだ。例えば、2位の羽田事故は、能登に救援に向かおうとしていた海保機がJAL機と衝突したものであり、元日の能登地震が起きていなければ発生していなかった。また、16位「令和の米騒動」も、米不足の傾向自体は今年春からはっきりしていたものの、「最後のダメ押し」になったのが17位の「南海トラフ地震臨時情報の発表」だったことは疑いがない。
これらは連鎖的に発生したが、それ自体は別の出来事であるため別のニュースとして扱わざるを得なかった。枠を20に拡大しなければならないほどニュースが多かったのは、重要なニュースがドミノ的に連鎖発生した影響も見逃すことができない。
いずれにせよ、今年は本当に騒々しい1年だったし、安全問題研究会にとってもかつてなく忙しい年だった。少なくとも、公共交通をめぐっては、2025年は平穏な年であってほしい。