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福知山線事故で強制起訴の元3社長が厚かましくも退職慰労金を受給!

2018-12-24 11:53:03 | 鉄道・公共交通/安全問題
退職慰労金、半額を支給=福知山線事故で元社長3人―JR西(時事)

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 JR西日本の来島達夫社長は19日の定例記者会見で、乗客106人が死亡した2005年のJR福知山線脱線事故を受け、支払いを留保していた元社長3人の退職慰労金について、半額を支払う決定をしたと発表した。

 取締役会の決議は18日付。

 同社によると、3人は井手正敬(83)、南谷昌二郎(77)、垣内剛(74)各氏。事故の責任を重視し、支払額を5割減額した。総額は約1億7600万円という。

 3人は業務上過失致死傷罪で強制起訴され、17年に最高裁で無罪が確定した。退職慰労金の支給対象となる役員は6人いたが、うち3人は辞退。元社長3人は受領する意向を示していた。
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このニュース、時事の記事がYahoo!ニュースに転載の形で出ているものの、時事のニュースサイトに掲載されておらず、他のメディアもインターネット上では報じていない。不安になったので、JR西日本のサイトで確認すると、以下の通り掲載されている。

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「退職慰労金制度の廃止に伴う打ち切り支給」の支払いについて(JR西日本)

 当社は、12月18日開催の取締役会において、当社元社長3名に対して、かねて支払いを留保していた「退職慰労金制度の廃止に伴う打ち切り支給」につき、支払いを行う旨を決議しましたのでお知らせいたします。

 なお、支払額については福知山線列車事故を惹き起こした企業としての責任を重く受け止め、5割の減額を行いました。

詳細

1 対象者(敬称略)
 井手 正敬
 南谷 昌二郎
 垣内 剛

2 支払予定総額
 176百万円

(参考) 「退職慰労金制度の廃止に伴う打ち切り支給」に係るこれまでの主な経緯

 ・2002年6月26日
  退職慰労金制度の廃止に伴う重任取締役への「退職慰労金の打ち切り支給」を株主総会・取締役会を経て決定する。同取締役会にて「支払時期における会社の業績等諸般の事情により、取締役会の決議をもって相当額の減額をすることができる」と決定する。

 ・2005年4月25日
  当社が福知山線列車事故を惹き起こす。

 ・2005年6月以降
  対象役員の退任に際し退職慰労金の支払留保を決定・継続する。

 ・2017年6月12日
  当社元社長3名に対する刑事裁判が終結する。
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要するに、(1)3社長在任中に退職慰労金制度が廃止になったが、経過措置として廃止の時点で在任中だった役員は打ち切り支給を受けられるよう会社として決定した。(2)その後、3社長在任中に福知山線脱線事故が起き、3社長含む6役員に対しては支給を一時停止していた。(3)しかし刑事裁判が終わり、全員が無罪になったので、今回、半額に減額した上で支給はする――ということだ。

刑事被告人にされなかった3人の役員が受け取りを辞退しているのに、無罪となったものの強制起訴され被告人となった3人が、自分に受け取る資格があると思っているなら厚顔無恥もここに極まれりというほかない。

支給決定をしたJR西日本も同罪だ。そもそも退職慰労金の支給は会社法361条の規定により通常は株主総会の議決事項となる。例外的に企業が定款で支給条件を定め株主総会の承認を得れば、その後は1件ごとに株主総会の議決によらなくてもよいとされるものの、企業法務に詳しい弁護士によれば、1件ごとに株主総会の議決を得て支給するのが普通で、一律に定款で定めるのはむしろ例外に近いという。「お手盛り」との批判は当然だし、そもそもJR西日本は「すでに会社を辞め、今は無関係の人間だ」との理由で、3人が強制起訴された福知山線事故の刑事訴訟を会社としては一切支援しなかった。無関係というならなぜ今回、退職慰労金の支給を決めたのか。裁判など不都合なときは無関係を装いながら、都合のよいときは元役員だからとしてカネを支払うJR西日本に対し、当研究会は納得できる説明を求める。

JR西日本が退職慰労金制度の廃止と打ち切り支給制度の導入を決めたのは、福知山線脱線事故が起きる前の2002年であり、決めた時点でこの事態を予測することは困難だったとの「言い訳」はあり得るかもしれない。しかしこの年、JR西日本では福知山線脱線事故の「予兆」とも言えるような「救急隊員ひき殺し事故」が起きており、どちらにしてもこうした事故が連続的に発生していた責任を当時の役員たちは負うべきだ。救急隊員ひき殺し事故の時点で自社の安全体制を適切に見直していれば、福知山線事故はなかったかもしれないからである。井手、南谷、垣内の元社長は、この退職慰労金で事故犠牲者への「個人賠償」を行ってはどうか。

年末のどさくさに紛れてこっそりとこんなことを決め、自社のホームページ上だけでこっそり公表して「情報公開も果たした」とうそぶくJR西日本を当研究会は決して許さないし、やはりこの会社とは闘い続けるしかない。はっきり言おう。新幹線での台車亀裂事故や、人をはね殺しても新幹線の運転を続けるようなあり得ない事故が昨年末から相次いでいるのも、こうした腐った企業体質が何ら改まっていないからだ。

もうひとつ、重要なことを指摘しておきたいが、現在、この事故の後を追うように、検察審査会の議決によって強制起訴となった福島第1原発事故の刑事裁判が行われている。裁判は、今週26~27日に検察官役の指定弁護士による論告求刑が行われることになっており、当研究会も傍聴する予定になっている。もしこの裁判で勝俣恒久元社長ら3役員の「無罪放免」を許せば、いずれ東京電力でも同じようなことが起きるだろう。東京電力の刑事裁判で有罪を勝ち取ることの重要性は、今回の件でますます高まったと言わなければならない。

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