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ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

被害者切り捨てでつながる「水俣」と「福島」~水俣病患者説明会「マイク切り事件」で見えた環境行政の冷酷非道

2024-05-22 18:51:37 | 原発問題/一般
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」に寄稿した内容をそのまま転載したものです。)

 ●環境省きっての冷酷非道な「独裁官僚」

 5月1日、熊本県水俣市で開催された伊藤信太郎環境相と水俣病の被害者団体などとの懇談会で、水俣病患者が発言中にもかかわらず、制限時間3分が経過したことを理由に環境省側がマイクの電源を切った問題は、被害者のみならず世論の広範な怒りを引き起こしている。この「マイク切り事件」をめぐって驚くべき事実が判明した。

 当日、説明会で進行役を務めたのは、環境省大臣官房環境保健部企画課特殊疾病対策室の木内哲平室長である。環境省組織規則によると、特殊疾病対策室は公害健康被害の認定・補償給付、予防、公害保健福祉事業の他、水俣病に対する業務を担当する部門である。木内室長は、懇談会終了後に来場者から上がった「マイクの電源を切ったのか」との質問には直接答えず「事務局の不手際」としたが、このことも環境省への反発をさらに拡大することになった。この木内氏、一体どういう人物なのか。

 同じ環境保健部企画課に、アスベスト被害を担当する石綿健康被害対策室がある。木内氏がここの室長を務めていた昨年7月、患者団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」が「木内室長の着任以来、異質な事務局運営」をされてきたとして、抗議文をホームページで公開する事態になっている。環境省に設置された中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会の席上、患者と家族の会メンバーが修正意見を述べたにもかかわらず、それらの意見が「事務局で全く検討されず、議事録も公開されていない」として「木内哲平室長をはじめとする事務局の運営姿勢、およびそれを承認した小委員会の浅野直人委員長の判断に対し、強い憤りを持って抗議」するとの声明を発表している。

 声明全文は現在も「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」ホームページで読むことができる。木内氏は今回の件に限らず、環境省歴代担当者が曲がりなりにも続けてきた「公害病患者に一定程度寄り添う姿勢」を各分野で次々に壊し、患者の意見を恒常的に無視して人権蹂躙を続けてきた「独裁官僚」なのだ!

 ●木内氏の上司は「福島」切り捨てに!

 驚くべき事実をもうひとつ指摘しておこう。現在、木内氏の上司に当たる環境省大臣官房環境保健部長の職にあるのが神ノ田昌博氏だ。ほとんど知られていないが、神ノ田氏は福島第1原発事故と甲状腺がんの関係について調査する福島「県民健康調査検討委員会」(以下「検討委員会」)の委員を務める。

 5月10日、福島市内で開催された検討委員会では、5巡目の検査を受けた対象者のうち2人が新たに甲状腺がんの疑いと公表された。これまでに、悪性疑いと診断された子どもは330人となり、がん登録で把握された2018年までの集計外の患者43人をあわせると、事故当時、福島県内に居住していた18歳以下の子どもの甲状腺がんは372人に上る。通常、子どもの甲状腺がんは100万人に1人といわれる中、福島県内の発生率は、1巡目受診者300,472人に対し「がん」102人、5巡目でも113,950人の受診者に対し「がん」36人と明らかに異常な水準だが、原発事故との因果関係を認めてこなかったこれまでの検討委員会の姿勢に変化の兆しは見られない。

 甲状腺がんをめぐっては2022年1月、事故当時6~17歳だった若者6人が東京電力に賠償を求めて提訴している(その後、原告は1人増え現在7人)。患者がこうした裁判に訴えざるを得ないのも検討委員会の頑なな姿勢が原因だ。水俣病患者との懇談会で「マイク切り」を行う官僚の上司に当たる人物が検討委員会委員に送り込まれている人事を見ると、原発事故での健康被害をめぐるこのような冷酷非道な環境行政も環境省主導で進められているとの疑念を持たざるを得ない。

 神ノ田氏が甲状腺検査の縮小を主張してきたことを問題視した福島県の母親らが「被害者救済とは正反対の姿勢」だとして神ノ田氏の委員辞任を求める要望書を5月10日、検討委員会開催に合わせて重富秀一座長に提出している。「マイク切り事件」は単なる木内氏の個人的暴走などではなく、最近の環境省による「組織ぐるみの患者無視、人権蹂躙」を象徴する事件といえる。3.11を福島県で迎え、いつ健康被害が起きるかと怯えながら日々を生きなければならない元福島県民のひとりとして、私もあらん限りの怒りをもってこの「犯罪官庁=環境省」を告発したいと思う。

<参考資料・記事>
環境省「マイク切り」司会の慶大医学部卒の官僚にも視線 前任「石綿被害」対策でも患者団体抗議(2024.5.9付け「日刊スポーツ」)  

中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会 「石綿健康被害救済制度の施行状況及び今後の方向性について」 取りまとめ報告書の撤回と見直しに関する緊急要求および抗議声明(「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」ホームページ)

「県民健康調査」検討委員会 委員名簿(福島県ホームページ)

福島県民が環境保健部長の退任要求〜福島県・検討委員会(OurPlanet-TV)

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