
「天使にアイム・ファイン」という映画を、仕事帰りに観た。
今週でこの映画も上映終了になるので、もうネタバレでも大丈夫だろう。
この映画は、傷付いた5人のストーリーからなる。
・イジメられる女子小学生
・実家の青果店が風評被害で行き詰る福島の青果店
・何度選挙に出ても落選続きの候補者
・胃がんのステージ4と診断された女優
・姉に大好きなダンスを見せたかったが、姉に早世された妹
この5人のそれぞれに雲母(きらら)扮する天使が舞い降り、自分がいかに愛されているか、夢をあきらめない事がいかに大切かを思い知らされて立ち直るというもので、言わば5本の短編が同時進行する面白い進行だ。
キャストも芦川よしみ、金子昇、なべおさみなどそこそこの有名どころが名を連ねている。
前向きに生きる事の大切さを訴える、誰にもわかりやすい作品になっているのだが私に云わせれば少々引っかかる点がいくつか。
まず小学校の描写で、校長と担任がイジメに全く向き合わない設定だがコレは日教組への批判が込められているのだろうか。
行き詰った青果店の店主のセリフ「風評被害なんて…健康被害があったわけでもないのに」は、原発推進派ゆえの声か?
選挙に落ちまくった末、家族を養うために一度は普通のサラリーマンとして再就職したところに天使が舞い降りて
「夢をあきらめるな!」
と一喝し、周りの応援もあってもう一度政治の世界を目指すというのは果たして美談だろうか。
家族を食わせていくために、普通のサラリーマンに転身する事をなぜこの映画は否定するのか。
過去の自分を許せるようになった女優の胃から、ステージ4のがんが消えたなどという現象はもう医学では説明がつかない。ファンタジーの世界だ。
最後に、我が尊敬してやまない山下達郎の言葉を引用させていただく。
「『夢は必ずかなう』という言葉が独り歩きしている時代ですが、僕は『夢はかなわない確率のほうがずっと高い』と思う人間です。ですから、懸命に努力し、その結果、夢がかなわなかった時にはどうするのか、それをも想定して仕事をするべきではないか。夢は魅力的で力があるけれど、あくまで結果であって、夢を最初から暴走させてはいけないのです。夢を抱きながらも、冷静さも併せ持って欲しいと思います」