不思議な夢を見た。
私はどこか真っ暗な空間を歩いている。どこへ向かうでもなく、ただぼんやりと歩いている。すると、目の前に紫の着物を着た老婆が現れた。左目がない。私は、その老婆がこの世の人ではないことをなぜか知っていた。老婆は私の前まで来ると、私の右手を両手でとって、強く握った。私は恐怖のあまり、声が全くでなかった。老婆は、私の右手を強く握ったまま、こんなことを耳元でささいた。
「あなたは旅が好きそうだから、ぜひ全国を旅するといい。そして、旅の経験を、正直な文章で紀行文として書いて欲しい」
そんなことを言うのである。私は相変わらず恐怖で声が出なかったが、了承すれば、この老婆が居なくなるような気がしたから、懸命に声を出そうとした。そしてかすかな声で「わかりました」と返事ができた。老婆は「よろしく頼むよ」といって私の前から姿を消した。
夢がさめて、私はがばりと上半身を起こした。あんな恐怖を感じた夢はなかった。少し汗をかいている。そして、右手に強い握力のかすかな残りを感じた気がした。私は老婆に約束をしたとおり、旅に出て、紀行文を書くべきなのだろうか。夢といえば夢であるが、どうにも気になって仕方がない。
職場のスタッフたちに話すと「意味深な夢だね」と言われ、親(たまたま電話がかかってきた)に話すと「紀行文を書け」と言う。書けと言われると、書きたくなくなるのが私の性分であるが、また老婆が出てきて、今度は約束を守らないとはどういう料簡かと怒鳴られるのもいやなので、とりあえず、どこか近いうちに旅をしようか。
私はどこか真っ暗な空間を歩いている。どこへ向かうでもなく、ただぼんやりと歩いている。すると、目の前に紫の着物を着た老婆が現れた。左目がない。私は、その老婆がこの世の人ではないことをなぜか知っていた。老婆は私の前まで来ると、私の右手を両手でとって、強く握った。私は恐怖のあまり、声が全くでなかった。老婆は、私の右手を強く握ったまま、こんなことを耳元でささいた。
「あなたは旅が好きそうだから、ぜひ全国を旅するといい。そして、旅の経験を、正直な文章で紀行文として書いて欲しい」
そんなことを言うのである。私は相変わらず恐怖で声が出なかったが、了承すれば、この老婆が居なくなるような気がしたから、懸命に声を出そうとした。そしてかすかな声で「わかりました」と返事ができた。老婆は「よろしく頼むよ」といって私の前から姿を消した。
夢がさめて、私はがばりと上半身を起こした。あんな恐怖を感じた夢はなかった。少し汗をかいている。そして、右手に強い握力のかすかな残りを感じた気がした。私は老婆に約束をしたとおり、旅に出て、紀行文を書くべきなのだろうか。夢といえば夢であるが、どうにも気になって仕方がない。
職場のスタッフたちに話すと「意味深な夢だね」と言われ、親(たまたま電話がかかってきた)に話すと「紀行文を書け」と言う。書けと言われると、書きたくなくなるのが私の性分であるが、また老婆が出てきて、今度は約束を守らないとはどういう料簡かと怒鳴られるのもいやなので、とりあえず、どこか近いうちに旅をしようか。