学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

居酒屋にて

2009-07-18 20:06:20 | その他
その店内は小さかったけれど、とても上品で綺麗でした。まだ時間が早いこともあって、お客さんは誰もおらず、私はカウンター席に座って、ゆっくりお酒を飲むことにしました。お店は女将さん1人でされているそうで、私は「刈穂」を飲みながら、いろいろと話をしました。

「仕事帰り?」
「いえ、旅行しているのです。」
「旅行?横手に?珍しい人もいるもんだわ。どこ行つたの?」
「横手城と日新館、あと武家屋敷にも行きました。」
「それは渋いはね(笑)」
早くもほろ酔いになりだした私は、おつまみに「ホヤ」を注文する。
「あなた、仕事は何をしているの?」
「美術館で働いています。」
「へえ、あなたの指を見たとき、職人さんかと思つたわ。」
「そういふ指をしていますか?」
「してるわ。ちょっと指がしつかりしてゐるもの。」
と女将さんが笑ふ。
指がしっかりしているねえ、と私は自分の指をまじまじとみる。
この辺で常連客と思しき男女がいらっしゃる。
私は「山内杜氏」を注文する。相当酔いだした私。でもまだ記憶はある(笑)

「毎日暑いねえ。あ、そうそう、このお客さん、旅行で横手さ来てんだって。」
「あら、そう珍しいねえ。」
「そんなに横手へ旅行に来るのが珍しいですか(笑)」
「珍しいさ。」
「明日はどこへ行くの?」
「角館です。」
「あすこもいいとこだよ。」
「うん、あすこはいい。」
「あんたお酒好きそうだから、角館駅の前にある酒屋さんに行ってみな。」

そんな調子で私は酔いながら、見ず知らずの人たちとの話が楽しくてしかたがありませんでした。楽しい時間はあっという間に過ぎる。何時の間に深夜になってしまいました。そろそろお会計を、の一言が何だかさびしくて。

「また横手に来たら、お店に寄って行きなね。」

店の外に出て、夜風にあたって、空を見上げると、満天の星空。ああ、秋田に来て良かったなあ、と私は深く思いながら、ふらつく足でホテルへ戻るのでした。