学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

樋口一葉

2009-07-21 16:27:14 | その他
樋口一葉といえば、その肖像が現在の五千円札に取り入られていることで知られています。それだけ肖像が知られていながら、では、一葉の小説を読んだことがありますか、と問えば、大方の人がない、と答えるのではないでしょうか。実際、私も読んだことがありませんでした。

数日前、何とはなしに角川文庫の『たけくらべ・にごりえ』を買ってみました。一葉の文体は平安時代以来の文語体(書き言葉ですね)を用いているので、口語体の夏目漱石のようにすいすいとはいきませんが、何事も慣れというもの、次第に違和感なく読めるようになりました。

明治24年、20歳のときに作家として生計を立てることを決意した一葉。その後、25歳で亡くなっていますから、作家活動は5年間でした。私は『大つごもり』、『十三夜』、『わかれ道』を読んでみましたが、登場人物たちはみな生き生きとして、文章に情緒があって美しいもの。江戸のなごりなのでしょうね。作家丸谷才一氏によれば、一葉の小説は女性に厳しくて、男性に甘いとのこと。まさにそう。だから、男の私が小説の世界に飛び込むと、何だか居心地がいい(笑)

これから『たけくらべ』、『にごりえ』を読んで、また一葉の世界を楽しんでみたいと思います。