学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

ふいに出されたテスト

2016-02-01 18:41:10 | 仕事
ここ数日、私は文化財に登録されている資料や作品の所在調査をしています。近年、全国的に文化財の盗難や届け出のない移動があり、指定された資料が行方不明になってしまい、ときどきニュースにもなっていますね。そうした背景もあって、私たちも改めて資料の所在を調査することになったのです。

これは先月にあった、ある調査先でのお話し。

無事、文化財の現物確認を済ませ、これから職場に戻ろうとしたときに…所有者の方からのテストが始まりました。おもむろに美術全集を取り出すと、この作家はどんな人物かわかるか、この絵は誰のかわかるか、そしてタイトルはなにか?…などなど、所有者は絵にとても造形の深い方で、矢継ぎ早に質問を浴びせられました。私、テストされているな…と感じながらも、知識をフル回転させて回答すると、ご納得されて笑顔の様子。なんでも、文化財を扱う人間がどれほどの知識を持っているのかを知りたかったとのこと。私の背中を冷たい汗が流れるのを感じました。プレッシャーでした。

美術に関しては、未だに毎日が勉強です。本当であれば、美術館に出かけて、本物を見るのが一番の勉強になる。けれども、そういうわけにもいかないので、画集やデジタル画像を利用して、隙間時間にそれらの情報を浴びるだけ浴びる。覚えていなくてもかまわず、です。それが意外にふとした瞬間に頭に浮かんだりする。今回のふいに出されたテスト。そうした日常のトレーニングが役にたったのかな、と振り返って思うのでした。