学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

体験できるアート

2018-01-29 21:00:01 | 展覧会感想
私たちとアートを結ぶものは視覚だけとは限らない。近頃は、といっても、もうずいぶん前からだけれど、ただ見るだけではなくて、さわったり、音を聞いたり、匂いをかいだり、人間の五感に訴えるような作品が多くなってきました。(さすがに味覚に訴えるアートは今まで体験したことがない)

今日は休暇を利用して、東京都の森美術館で開催中の「レアンドロ・エルリッヒ展」を楽しんできました。彼の作品としては金沢21世紀美術館の《スイミング・プール》が有名です。私も一人旅で金沢へ行ったときに、同作品を興味津々に見てきました。が、あれは1人より2人で見るほうが断然楽しい作品ではありましたが…(笑)

さて、森美術館の「レアンドロ・エルリッヒ展」は、まさに体験できる作品が目白押し。鏡によるトリックで、来館者の心をぐいぐい引き込んでいきます。でも、ただ面白いだけではなし。こうした作品の背景には、人間や現代社会に対する「Why」があって、それを私たちの目の前に広げて見せるのです。体験は体験として楽しめつつも、アートを通して、私たちが意識していなかった部分へと光を当てていきます。監視カメラを主題とした作品では、ジョージ・オーウェルの『1984』が現実のものとなりつつあることに、私は少し怖くなりました。

私はときどき現代アートを欲します。それは、ごちゃごちゃになった頭の中をほぐしてくれるから。とともに、新しいことに気づかされるから。前日の宇都宮美術館に引き続き、いい刺激になります。