学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

年譜づくり

2018-11-23 21:18:42 | 仕事
今日は快晴、3連休の初日は天気に恵まれました。おかげさまで、美術館はいつも以上のお客様でにぎわいました。ありがたいことです。

現在、私は来年度の展覧会に向けた仕事をしています。具体的には、ある作家の年譜づくり。作家の日記や書簡類を読み込んで、いつどこでなにをしていたのか、を年譜にして作り上げていくというもの。年譜は作家の足跡をたどることを目的に作るものですが、もうひとつ、社会や美術の歴史のなかで作家の存在や作品がどう位置づけられるかを考えるためにも用いられます。ここが重要なところで、ある作家をただ切り取って調べるのではなく、その時代も含めて調べてみるということが大切です。すると、これまで見えてこなかったことが案外見えてきたりするものなのです。

私が調べた例では、ある作家が一時期「かかし」に関する文章をやたらと書いていて、どうしてここまで「かかし」にこだわっていたのか、さっぱりわからなかったのですが、どうもその背景には民俗学の普及があったようで、実際に彼が「かかし」に興味を持ちだすのは、全国的に民俗学の体系的な研究が進み始めた時期と一致していたのでした。これまで見過ごされてきたものが新たに研究の対象となってくる、そこに興味を持った彼は身近な「かかし」で自分なりに調査を始めたのではないか、と。これは仮説ですが、周辺を調べていくと、こんなこともわかってきたりします。

ですから、皆さんも、博物館や美術館に行って年譜がありましたら、作家の生涯を知るためだけでなく、その作家が生きた社会の動きにも注目すると、きっともっと展覧会が楽しくなると思います。(年譜の一番下には大抵「社会や美術の動き」の欄が設けられていますから)

年譜づくりは、経験上、だんだんとかたちが見えてくると、ジグソーパズルをしているかのようにわくわくしてきます。わくわく仕事ができるなんて、とても幸せです。年譜づくりの完成を目指し、明日も頑張ります!