学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

辻惟雄氏『日本美術の見方』

2010-01-12 10:46:39 | 読書感想
今日はすこぶる寒いですね。今にも雪が降り出しそうな天気…。寒さ厳しい1月ですからしかたのないことですけれども、寒いものは寒い!今夜はキムチ鍋を作ろうと材料を買ってきました。食べ物を工夫して、寒さを乗り切ろうと思います。

さて、本日紹介する本は、日本美術研究の第一人者である辻惟雄氏が著した『日本美術の見方』です。私が学生の時分にはゼミのテキストとしても使っていました。縄文から江戸末期までの日本美術の特徴を「あはれ」、「かざり」、「遊び」などの視点から捉えてきます。読み終えたあとは、眼からうろこが落ちるようでした。と、同時にどうしてこうした要素が今はほとんど見られなくなってしまったのだろう、あるいは存在はしているけれど見えないだけ?そんな疑問も沸いてきます。

日本美術史、あるいは日本美術の特徴を論ずる場合、その源泉を捉えなければなりません。日本美術は、中東、中国、朝鮮と文化の伝播があって成り立っていますから、ただ日本だけを切り離して論じるだけでは不十分なわけで、世界のなかの日本、という視点がなければなかなか書けるものではありません。そうして、それを書くためには相当の学習が必要になる。辻氏の『日本美術の見方』は、そうした視点から書かれていますので、日本における美術のあり方がとてもよくわかります。

この本を何度も繰り返し読んで、日本美術(この本が網羅する縄文から江戸末期まで)の展覧会を見ると、まったく違った視点で見られると思います。ぜひ、オススメの1冊です。

●『日本美術の見方』辻惟雄著 岩波書店 1992年
 

陣羽織のデザイン

2010-01-10 19:14:25 | その他
今、戦国時代が注目されているようです。書店でも戦国時代コーナーが設けられていて、戦国武将を紹介したり、全国各地の城巡りガイドマップが山積みにされていますね。この時代が好きな私にとっては、とてもうれしい限りです。

図書館で染織関係の本を探していましたら、『武士の装い』という小さな本を見つけました。甲冑、陣羽織、袴の3テーマに分けて、武士の意匠について紹介されています。私が面白い、と思ったのは陣羽織のデザイン。陣羽織は、元々防寒、防水用として甲冑の上から羽織るものだったのですが、戦国武将たちはおのおの好きなデザインを用いて着こなしたのです。武将たちは具足や旗、馬印を奇抜なものにするくらいですから、陣羽織もむろんデザインの対象になったのですね。もちろん、デザイン優先ではなく、本来の防寒、防水の機能性もしっかり兼ね備えたものですから、写真を通してみても暖かそうで、ちょうど今ぐらいの季節にはちょうどいいのかもしれません(笑)

材質としては羅紗、毛織物(ペルシャ絨毯を陣羽織にしたものもある!)などが挙げられ、デザインとしては割とオーソドックスな家紋、奇抜なところでは瓢箪、アゲハチョウといったものがあるようです。

初代仙台藩主伊達政宗の《紫羅背板地水玉模様陣羽織》を見ると、学生時代のちょっとしたことが思い出されるのです。この陣羽織は下の方に赤、青、緑、黄、白の円がパッチワークされている奇抜なデザインなのですが、どうもこの円には法則があるような気がしたのです。同じ色の円を結んでいくと、何かわかるんじゃないか、男の感ですね(笑)円を結ぶというと、思い浮かぶのが星座です。調べてみると、伊達家は天文学にかなり力を入れていたことがわかった。これは面白い!と思って当時の天文学を調べてみましたが、途中でちんぷんかんぷんになって挫折しました(苦笑)私にはハードルが高すぎたようで…。

今から500年近く前の陣羽織ですが、未だ色あせないデザインです。デザインの良いものは、時代を何年経たとしても良いものである、といえるのかもしれませんね。

連夜の頭痛

2010-01-09 21:20:17 | その他
昨日、今日と連夜の頭痛で悩まされました(泣)この頭痛ばかりはいかんともしがたく。風邪ならば、動かぬ体を無理に動かして、栄養と睡眠をとれば良くなってくるのですが、頭痛はそうはいかず。私は右目奥とこめかみがすさまじく痛くなり、吐気を催す症状で、寝ているしかなくなる。寝ていても、頭痛はズキズキとするから、症状自体はほとんど変わらない。この病気と一生付き合って行かなくてはならないと思うと、うんざりしますね(泣)

今夜になってたいぶ症状がよくなってきたので、ゆっくりと床で休むことにします。明日は治りますように!

詩の展覧会

2010-01-07 19:27:25 | 展覧会感想
今日、七草粥を食べると一年間無病息災になるのだそうです。仕事を終え、帰宅してからさっそく七草粥の準備をしました。ただ、準備をしたのは良いのですけれど、炊き上がるまで一時間かかるそうなので、お腹を空かして、炊き上がるのを待っている状態です(泣)

今年、詩をテーマにした展覧会を開催するために、少しずつ詩の勉強をすすめています。ところが、なかなか難しい。というのは、これまで私は好きな詩があると暗誦して、自分勝手に楽しんでいたわけですが、この言葉はどういう意味があって…とか、詩のリズムは云々、と分析していくのが、どうも慣れなくてしょうがないのです。しょうがないことではあるのですけれども。

でも、詩を体系的に勉強していくことで、今まで知らなかった詩人や詩と出会うことができました。これはとても良かった!自分の知らない世界がまだまだ広がっているのだなあと思いました。

今学んでいることが、展覧会に反映されるわけですが…しっかり学んで、自論を述べて、恥ずかしくない展覧会になるよう頑張ります!



絵葉書で行く仙台巡り

2010-01-06 20:10:44 | その他
さて、昨日の反省をこめて、今朝は頑張ってしっかり起きました(笑)

古い絵葉書を集めること、私の趣味の1つです。親しみのある街が、昔はどんな姿だったのか知りたいな、と思ったのが集めるきっかけとなりました。ほそぼそと集めてはいますが、1枚1枚に歴史を感じるようで、とても面白いものです。

今日、ご紹介するのは大正、昭和初期の仙台の街です。


代々伊達家の居城であった仙台城の大手門です。残念ながら、太平洋戦争時の仙台空襲によって焼失していて大手門は現存していません。この写真では、大手門にどのような趣が凝らしてあったのかまではわかりませんが、当時の威厳ある雰囲気を感じさせるものですね。



かつては仙台のメインストリートだった「芭蕉の辻」です。近くには仙台郵便局、銀行、勧工場(今のショッピングセンターです)などがありました。これらの建物のほとんどが空襲で焼失しています。(仙台の街中にはあまり古い建物はないのです)小さな子供たちが往来で遊んでいる姿が見えますね!



国分町5丁目の街並みだそうです。現在のどの辺りになるのか、とんとわかりません。「常盤生命」の墨文字が解決の糸口となりそうですが…。国分町は今では飲み屋街が軒を連ねていますが、その辺りなのでしょうか。もしそうだとしたら、随分変わったものです。左側にあるのは人力車。時代を感じさせますね。


仙台の古い絵葉書をご紹介しました。今、この場所がどうなっているのかを探しに行く。そんな遊びも面白いかもしれませんね。今年のブログでは、こんな古い絵葉書などもご紹介したいと思います。

仕事始めの一日

2010-01-05 21:38:05 | 仕事
年末年始の休日も終わり、今日からいよいよ仕事始め。布団から飛び起きて、さっと準備をすませて、さあ出発!が理想的な朝でしたが、布団から抜けるまで時間がかかって、初仕事早々、さっぱり成長のない私でした(苦笑)

初仕事は、膨大な量の迷惑メールの削除と次回展覧会の作品準備でした。このギャップがすごいですけれども…。迷惑メールはさておき、展覧会で使用する作品の状態を収蔵庫内でチェックしていきます。特に異常は見当たらず、次回展示に問題なしといったところ。異常ないのが当たり前なのですが、それでもちょっと一安心。

さすがに今日はなかなか身体、精神的にもエンジンがかかりにくかったのですが、徐々にいつもの調子に慣れてくることでしょう。

昨年は仕事、余暇もそうですが、論文を読んだり、美術館へ足しげく通ったり、インプットの作業が多かったように思います。それはそれでいいのでしょうが、今年はバランス良く、インプットしたら、できるだけアウトプットしてしっかり結果を残し、様々なことをたくさんやる、それが目標です。きっと毎日が楽しくなりますね!

まずは明日の朝はしっかり起きられるように…(笑)

「さようなら」と「はじまり」

2010-01-04 19:51:05 | その他
いよいよ明日から仕事開始です。あっという間の年末年始でした。今年はバタバタとしてしまって、初売にも行けませんでしたし、当初計画していた仙台の街歩き(市販されている大正期の仙台地図を持ち、過去と現在でその街並みを比較してみよう!と言う試みでした。NHKの番組「ブラタモリ」の仙台版?)もかなわず。ただ、久しぶりに祖父母や友達とも会えたので、忙しい中にも良かったことはたくさんありました。


祖父母の居る山形県の清々しい朝。ご覧の通り、外は雪で真っ白。ちらちら降る雪ならまだしも、ここまで降ってしまうと、雪かきが大変です。しかも、このあと、再び雪が降り出して…。大雪が降っても運休しなかった電車に感謝です。



お正月に頂いたおせち料理。仙台ホテルに注文したそうです。とても豪勢で、美味しく頂きました。



来年もおせち料理は仙台ホテルへ、と思いましたら、12月31日で営業終了のニュースが…。とても残念です。また、仙台の老舗が無くなってしまいました。159年の歴史あるホテル。前述した大正時代の地図で見てみると、かつては仙台駅のすぐ前に面していたことがわかります。(今は正面が青葉通です)さびしいですね。


「さようなら」があって、「はじまり」がある。さあ、明日から気持ちを切り替えて、初仕事頑張ります!

フォークナー『嫉妬』

2010-01-03 19:55:21 | 読書感想
おめでたい正月も早々に、「嫉妬」(しっと)がテーマの小説を読みました(笑)アメリカの作家フォークナー(1897~1962)の短編です。

主人アントーニオは、妻と若いボーイの関係を疑っていますが、ざっくばらんに2人へ聞いても、そんなことはあるわけがないと呆れられます。どうも、アントーニオははっきりとした根拠なしに浮気を疑っているらしいのです。めらめらを燃え上がる嫉妬の炎は、今住んでいる場所から主人と妻が転居し、ボーイから離れる計画を立てたことで静まったかに見えました。しかし、どす黒い嫉妬の炎は再び…!

「嫉妬」は殺人の動機にもなりうる。やっかいな感情です。古くは『古事記』にも、スセリビメが嫉妬する話が書かれていますから、どうも昔からこうした感情は人間にあったらしい。いや、人間だけでなく、たとえば犬もですね。飼い主が他の犬の頭をなでると怒ったり、やきもちをやいたりするとか。もしかしたら他の動物にもあるかもしれません。「嫉妬」は生き物にとって逃れられない感情のようです。

この小説はフォークナー27歳のときに書かれたもの。27歳といえば、なんとなく世の中というものがわかってきて、こうした人間の生々しい感情が目に付くようになってくるころでしょうか。人間の心理をえぐろうとする、若きフォークナーの姿が見えてくるような、そんな小説です。

●『フォークナー短編集』龍口直太郎訳 新潮文庫 1955年

芹沢介のドローイング

2010-01-02 20:28:14 | 読書感想
雑誌『民藝』383号は、染色家芹沢介の仕事についての座談会が特集されています。参加者は柳悦孝、岡村吉左衛門、鈴木繁男、芹沢長介、水尾比呂志の5名で、みな、芹沢の創作を間近で見てこられた方ばかりです。

座談会のテーマは、芹沢の仕事のなかでも、いつから型染を始めるにいたったか、どのようにして作品が生まれてきたのか、その2点が重点的に話し合われています。私が興味をひいたのは、後者のほう。つまり創作の秘密について、です。

参加者の証言によれば、芹沢は執拗なほどドローイング、つまり写生を繰り返したそうです。ちょっと抜粋してみましょう。


柳「…とにかく暇さえあれば下絵をかいてらっしゃいましたね。あのくらいたくさん煮詰めていらっしゃる方は、ほかに僕は知らないですね。(中略)新聞紙の余白だとか折り込み広告の裏だとか、何でも手当たり次第に書いてらっしゃいましたね。」

芹沢長介「裏が白ければどんな紙でもみんな使っていたんですよね。」

鈴木「リーチさん(バーナード・リーチ)からも細かい話を伺ったんだけれども、まずスケッチからというのが一番始めでしたよね。」


参加者からの興味深い証言です。我々が芹沢の作品に心ひかれる理由の1つには、こうしたドローイングによる確実性を無意識にも感じるからなのかもしれません。

ここで、あっと思いました。明治から昭和にかけて活躍したデザイナー杉浦非水もそうだったと。2人ともドローイングを繰り返し、基本をしっかり身につけるために、対象を模様化、抽象化にしてもブレないんですね。こうした共通点で芹沢と杉浦を一緒に並べてみると、とても面白いかもしれない。

細い糸を紡ぎだせたようで、ちょっと嬉しい(笑)今年はこのような新しい糸を自分なりにいろいろ見つけられるといいなと思います。

謹賀新年

2010-01-01 14:36:37 | 仕事
明けましておめでとうございます。





昨夜に降った雪が、うっすらと野に残っています。雪の正月もまた一興ですね。写真に虹のようなきれいな七色が写っていて、なんとなく縁起が良い気がします。



初詣へ行ってきました。写真は昨日行った竹駒神社です。今日は地元の神社へ行きましたが、さすがに人が多くて取れませんでしたので…。おみくじを引いたら「吉」でした!おみくじによれば、今年はとても良いことばかりがあるらしい。「願望」(ねがいごと)は、「人の助けで調う。争わぬようにせよ。」とあります。争わないように気をつけます(笑)


「元日や 手を洗ひをる 夕ごころ」
私の好きな小説家芥川龍之介の句です。清涼感のあるすっきりした句ですね。今年は様々なことに挑戦して、一日一日を楽しんで過ごしたいと思います。

本年も何卒よろしくお願い申し上げます。