学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

文化庁メディア芸術祭

2016-02-07 21:05:25 | 展覧会感想
今日は国立新美術館で、文化庁メディア芸術祭を見てきました。この展覧会は、「アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会を提供する」という趣旨のもと開催されています。今回で第19回目とのことですが、私は初めて行きました。

たくさんの作品が展示されるなかで、最も興味を引いたのがアート部門の長谷川愛さんの《(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合》でした。昨今、同性愛についてニュースやドラマで取り上げられる機会が多くなっています。彼ら彼女らは同じ性であるから、子供を出産することはできない。けれども、現在の発達した科学技術によって、DNAの解析は進み、2人の遺伝子を組み合わせることで、どんな子供ができるのかを想定することは可能である、というテーマの作品。文字だけで作品を紹介するのは難しいのですが、女性のカップルの遺伝子を合わせ持った2人の子供が、家族として共に生活している場面などを写真にして紹介しています。作家の着目点とテーマの未来への可能性という点で、私の印象に強く残りました。

このほか、アニメーション部門のBoris LABBÉさんの《Rhizome》の構成力、マンガ部門の東村アキコさんの《かくかくじかじか》をはじめとする各受賞作品など、見どころが満載で、とても楽しめた1日でした。ただ見るだけではなく、メディアを体験できる展覧会。オススメです!!

頭痛がまた起こる

2016-02-06 21:10:07 | その他
昨日は久しぶりに頭痛の日…。強い日差しのなかで、車の運転をしていたせいなのか、帰宅してから右目の奥がえぐられるように痛くなり、そしていつもの頭痛になってしまいました。ブログを書き終えたあと、薬を飲んで養生していたのですが治らず、結局は今日の午前中まで痛さでのたうちまわっていました。

どうも目が弱くってしかたがない。午後、買い物へ出かけた時に、スマホやパソコンなどから発するブルーライトを60%近くカットできる眼鏡を見つけて即購入。今はそれをしてブログを書いています。つけたばかりですが、目がかなり楽です。しばらく自宅で使い続けて、効果を確認しておきたいところです。

頭痛が起こると、他のことが何もできなくなってしまう。それで時間が浪費するのがくやしい。自分の体のメンテ、怠りなく生きていたいものです。

木造の校舎をゆく

2016-02-05 20:02:32 | 仕事
このあいだ、古い学校の校舎へ調査に出かけました。調査の理由は文化財登録を検討するため。戦後すぐに建てられた木造の校舎で、今はもう使われていない廃校です。

私だけなのかもしれませんが、廃校というのは日中であってもかなり怖いですね…。まっすぐに東西に伸びる廊下は音もなく静かですし、かつて使われていた机や椅子、壁の落書きなど、妙に生活感があって、どうも苦手です。

さて、この校舎は木造2階建で、特別な装飾はなく、いたってシンプルな作り。外に面した下窓は回転式で、なかなかおしゃれです。天井は例のごとく高くて、冬は寒かったろうなあと想像します。私は建築に関しては専門的なことはわからないのですが、一緒に同行してくださった先輩と建築専門の先生から、いろいろと教わりながら、ぐるりと校舎を巡って行きました。

これから登録にするかどうかの検討に入るわけなのですが、木造校舎は私の住む街にはほとんど現存しておらず、とても貴重なのです。私個人としては、ぜひ残したい建物です。しかし、残すにしてもコストがかかるわけで、これだけ大きければなおさらのこと。ただ単に残したい、のではなく、様々な活用の方法を考えながら、検討することになりそうです。文化財に登録するのも難しい仕事だと実感しました。

初めて目にしたもの

2016-02-04 21:43:49 | 仕事
いつものようにパソコンに向かって仕事をしていると、同僚からちょっと手伝ってもらえないかと声をかけられました。

求めに応じて、資料の調査室へ行くと、そこには厚めに折りたたまれた紙類がありました。表紙を見ると「○○村地図」との文字。同僚曰く、これを広げるのを手伝って欲しいとのことでした。

2人で慎重に広げていくと、縦180センチ、横150センチ程度の地図が一面に広がりました。地図といえば、私は手で持てる程度の大きさしか見たことがなく、こんな大きな地図を目にしたのは初めてのことでした。同僚曰く、地租改正のときに村の土地に番地をふるために使ったものだろうとのこと。この大きさもそれほど珍しいものではないそうです。

その地図には字名と番地がふってあるだけで、寺や学校などの施設を示すものは何もありません。でも、街の中央を流れる川から、各土地へきれいに水路が引かれているのはわかり、私は水の心地よい音が聞こえる街並みを想像するのでした。

私はこれまで美術を専門としてきましたが、こうした異なるジャンルの仕事に携わることも、なかなかどうして楽しいものです。専門は違えど、同僚から刺激を受けますしね!仕事を通して、様々なことを知ることができて、とても嬉しい限りです。

古い絵葉書を集める

2016-02-02 20:18:38 | その他
私の趣味は古い絵葉書を集めること。

特に集めているのは、次の3つが写っているものです。

・空襲で焼失した城郭
・すでに失われた洋風建築
・自分が行ったことのある街並み

城郭に関しては、仙台城、水戸城、名古屋城、大垣城などが手元にあります。それらの城郭はどれも空襲で焼失してしまいましたが、絵葉書のなかでなら、いつでも見ることができます。特に仙台城の大手門は大迫力で、失われたことが返す返す残念でなりません。

洋風建築については、失われたもので、かつオシャレなものをピックアップしています。私が素敵だと思うのは、仙台の芭蕉の辻にあった七十七銀行の建物。尖がり屋根の洋風建築で明治36年から昭和4年にかけて使用されたのだそうです。とても上品な建物!

最後は、自分が行ったことのある街並みの写真。これらを買い集めて、今の街並みと比較し、どのように変わったのかを調べるのが好きなのです(笑)偶然、大正時代に撮影された私の故郷の写真を購入することができたときは、街並みの変わりように驚かされました。今は住宅地になっているところは、まったく何もない野原。どこまでも続く空間が広がっていました。

絵葉書を見ていると、自分の手のひらで歴史が語りかけてくるような気がします。私にとって、古い絵葉書を集める醍醐味は、そこにあるようです。

ふいに出されたテスト

2016-02-01 18:41:10 | 仕事
ここ数日、私は文化財に登録されている資料や作品の所在調査をしています。近年、全国的に文化財の盗難や届け出のない移動があり、指定された資料が行方不明になってしまい、ときどきニュースにもなっていますね。そうした背景もあって、私たちも改めて資料の所在を調査することになったのです。

これは先月にあった、ある調査先でのお話し。

無事、文化財の現物確認を済ませ、これから職場に戻ろうとしたときに…所有者の方からのテストが始まりました。おもむろに美術全集を取り出すと、この作家はどんな人物かわかるか、この絵は誰のかわかるか、そしてタイトルはなにか?…などなど、所有者は絵にとても造形の深い方で、矢継ぎ早に質問を浴びせられました。私、テストされているな…と感じながらも、知識をフル回転させて回答すると、ご納得されて笑顔の様子。なんでも、文化財を扱う人間がどれほどの知識を持っているのかを知りたかったとのこと。私の背中を冷たい汗が流れるのを感じました。プレッシャーでした。

美術に関しては、未だに毎日が勉強です。本当であれば、美術館に出かけて、本物を見るのが一番の勉強になる。けれども、そういうわけにもいかないので、画集やデジタル画像を利用して、隙間時間にそれらの情報を浴びるだけ浴びる。覚えていなくてもかまわず、です。それが意外にふとした瞬間に頭に浮かんだりする。今回のふいに出されたテスト。そうした日常のトレーニングが役にたったのかな、と振り返って思うのでした。