語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>事故現場がいま懸念する3つのこと

2011年08月01日 | 震災・原発事故
 7月、循環注水冷却システムが稼働し始めたころ、福島第一原発の吉田昌郎所長(56)は、彼と長年友人関係にある「原子力ムラ」の有力者に「行き詰まっている」と漏らした。「重大な懸念」は次の3つ。

(1)放射性廃棄物
 循環注水冷却は、原子炉から超高濃度の放射性物質を取り出して循環させる。換言すれば、放射性廃棄物を大量生産するシステムでもある。圧力容器は健全ではなく、超高濃度の汚染物質が漏れ続ける。このままでは、使用済みゼオライトの山が築かれてしまう。
 東電によれば、汚染水を浄化する吸着剤などの廃棄物が年末までにドラム缶1万本に達する。作業員が着用する防護服、作業で使う工具類も放射性廃棄物になる。

(2)工程表
 計画では、3年後(14年度)から使用済み燃料プールの燃料棒の取り出しを始め、10年後(21年度)からメルトダウンした燃料棒の取り出し作業に着手。最終的には、原子炉や建屋を解体・撤去する。
 しかし、これが果たして可能か。

(3)作業員の被曝
 事故処理が長引けば、作業員の被曝がどこまで拡大するか、まったく見当がつかない。
 谷口修一・虎ノ門病院血液内科部長が提唱した「自己造血幹細胞採取・凍結保存」は、政府は不要とするが、現場を統括する吉田所長は否定しない。「もし自分がその立場になったら事前採取してもらうだろう。やりうとする作業員を止めないし、やりたい人はやった方がいい」

 以上、記事「吉田所長が漏らした『三つの重大懸念』」(「サンデー毎日」2011年7月31日号)に拠る。

   *

 東電の工程表によれば、12年1月をめどに原子炉を冷温停止させる、となっているが、肝心の安定冷却システムがトラブル続きだ。
 そのうえ、連日30度を超える猛暑が作業の大敵となっている。

 日陰のない屋外で1時間ほど作業し、もう少しで熱中症になるところだった孫請け会社の作業員。
 防護スーツ「タイベック」はサウナスーツのように暑い。全面マスクも息苦しい。現場はまさに灼熱地獄。
 東電は、熱中症対策として休憩所の設置、保冷剤入りベストを用意した、と公表した。

 しかし、実態は、「口だけで実際はずさんな扱い」だ。
 東電がマスコミ向けに公表している写真では休憩所で作業員が横になってくつろいでいるが、あれは多くの作業員が来る前の早朝に撮影したものだ。普段の休憩時間は人がぎっしりで足も伸ばせない。【作業員A】
 保冷剤は効果が30分くらいしかもたない。効果がなくなれば“荷物”になるだけ。現場には持っていくが、誰も着用していない。ただ、着用せずに熱中症になった場合、「指示を守らなかった」と責任を押しつけられる可能性がある。【作業員A】
 実際、7月に入って熱中症で倒れる作業員が相次いだ。
 その大半がベストを着用していなかったことを理由に、松本純一・東京電力原子力・立地部長代理は「最終的には個人の意識の問題、対策には限界がある」と放言した。

 東電の放射線管理はズサンで、これも問題だ。
 朝の打ち合わせでは資材置き場の片づけ作業だったのが、突然、元請けの監督から「2号機のタービン建屋に鉛を敷きに行ってほしい」と頼まれたりする。しかも、現場の状況や放射線量に係る説明は一切ない。鉛とある以上、線量が高い場所だ。急いで処理したが、15分程度で500μSvを食らった。【作業員B】
 被曝量は、1時間換算あたり2μSv。
 高線量下での作業がいつ終わるのか、見とおしはまったく立っていない。加えて、通常は線量が高い場所での作業には放射線管理員が同行して被曝管理を行うが、放射線管理員の影も形もない。

 以上、記事「作業員激白 『15分間で500マイクロシーベルト食いました』」(「サンデー毎日」2011年7月31日号)に拠る。
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【震災】原発>原発を再稼働させようと画策する4つの理由 ~『原発はいらない』~

2011年08月01日 | 震災・原発事故


 「安全性が確認できれば再稼働させる」
 原発推進の国際機関IAEAが安全強化を訴え、それに呼応して政府、電力会社、経済界などから、こうした声が高まっている。
 だが、今回の福島第一原発事故が事実として示したように、安全な原発など、無い。安全性を確認できるようなことは、金輪際、無い。
 福島第一原発事故で、福島県民のみならず日本全国の人々、そして世界の人々に甚大な損害を与えながら、まだ原発を再稼働させようと画策するのは何故か。

(1)独占企業である電力会社は、原発を作れば作るほど、稼働すれば稼働するほど儲かる仕組みになっている。
(2)原子炉の製造を三菱重工、東芝、日立などの大企業が担い、そのまわりに「原子力村」の住民である政治家、官僚、地方自治体、関連企業が群れ集まり、原子力利権を分け合う構造を手放すことができない。
(3)「原子力開発=核兵器開発」であり、日本政府は一貫して核兵器をいつでも製造できる態勢を維持することに努めてきた。その国策を「たかが原発事故」くらいで変更できない、と思っている。
(4)原発交付金、補助金などによって財政の首根っこを押さえられている地方自治体は、雇用の問題もあり、再稼働を容認せざるをえない。

 以上、小出裕章『原発はいらない』(幻冬舎、2011)の「あとがき」に拠る。
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