「サンデー毎日」誌は、全国の主な百貨店、スーパー、コンビニ30社に汚染の独自検査などについてアンケートを実施した。
回答のあったのは25社。
(1)独自に放射線量を検査しているのは2社【注】。
(a)イオン(千葉)
7月28日、関東地区で放射性物質の独自検査を済ませた牛肉の販売を開始した。
外部機関に委託し、暫定規制値(500Bq/kg)を下回っていることを確認のうえ、「全頭検査済み」と表示。
今後、取扱いを全国の1,000店舗に拡大する予定だ。
(b)イズミヤ(大阪)
プライベートブランドの豚肉の検査を実施。「検出なし」だった。
豚は個体識別番号制度がなく、「国産」表示だけでよいが、同社は独自に生産履歴を公表する。
牛肉は、仕入れ先を一本化し、定期的な抜き取り検査や仕入れ前検査を強化する。
(2)独自に放射線量を検査していないのは23社。
大半が、国や自治体の基準・方針に従う、としている。
「独自検査の実態は現実的でない」(サークルKサンクス)
「百貨店の場合、テナント店の商品を調べるのは無理」(中合)
食品の検査機器導入には、1台2,000万円が必要で、1点の検査に1時間要する。
検査機器の不足が一番のネック。検査は物理的に手いっぱいで、膨大な費用を負担できるのは一部大手に限られる。チェルノブイリ、スリーマイル島事故後のデータを生かすべきだが、政府がデータ収集のためにどの程度努力したか、疑わしい。汚染が心配な消費者は、輸入品を買うしかない。【田島眞・実践女子大学教授】
(3)豚肉
セシウム汚染は、豚肉にも広がるおそれが出てきた。熊本県内の業者が、念のために、6月に購入した福島産の豚15頭のうち2頭を検査したところ、暫定規制値は大幅に下回ったものの、6.6~10.1Bqのセシウムが検出された。飼料は輸入原料だ。福島で飼育されている間に与えられた水が原因と推定されている。
原発事故後、他県に出荷された豚は、約1万頭とみられる。
業者間の取引の実態は不明で、他の業務に忙殺されているため、出荷された豚の数を把握するのは不可能だ。【福島県畜産課】
放し飼いにされた鶏の肉や鶏卵も汚染リスクは高い。
(4)対策
国全体で安全が確保されているのが本来の姿なのに、政府に信頼感がないのが一番の問題だ。【阿南久・全国消費者団体連絡会事務局長】
各社が企業努力で可能な対策は、(a)福島第一原発から離れた地域から仕入れたり (b)JAS法では原産国の表示だけを義務づけている精肉類に都道府県名を表示することだ。一部の企業では実施している(そごう・西部、名鉄百貨店)。
企業の独自対策は、法的責任の追及に備えるというよりも、客の信頼を勝ちとるビジネス戦略としての意味があるのではないか。国産品がまったく売れない事態になれば流通業界が求めるような制度作りは進みそうだが、そうでなければ国の動きには期待できない。【森田果・東北大学准教授】
【注】店頭販売ではないが、組合員向け宅配の東都生協(東京)、生活クラブ生協(神奈川)などは、精肉、野菜、鶏卵、米などを独自検査している。グリーンコープ(福岡)は、銚子港に水揚げされた魚介類、北海道産メロン、韓国産ノリなどを検査対象に加えている。
以上、奥村隆(本誌)「イオン、ファミリーマート、三越伊勢丹・・・・全国30社の放射能対策」(「サンデー毎日」2011年8月14日号)に拠る。
*
浄水場では、河川から取水した水の汚れを「凝集沈殿」させて上澄み水を砂の層で濾過する。セシウムは、この過程で除去される。
東北、関東では、この浄水場から出る汚泥からセシウムが検出され続けている。東京都の検査(7月13日)では、6浄水場の汚泥から290~2,900Bq/kgを検出。汚染水の流入が続いていることを裏づける。
地上のホットスポットのように、水中で汚染水がまだらに点在する恐れがある。日に1回、コップ1杯程度のサンプル検査では、検査後に濃度の高い汚染水が流れてくることがあり得る。原発事故で膨大な量のセシウムが地表に落ちている。河川、地下水への流入は長期に及ぶ。検査頻度を上げるか、常時監視すべきだ。【白石久二雄・元放射線医学総合研究所内部被ばく評価室長】
検査結果の「不検出」に疑問がある。東京の浄水場では、2~7Bq以下は不検出で、各県の浄水場も同じだ。しかし、米国のビキニ水爆実験(54年)で汚染されたマグロを捨てる基準は、1.6Bq相当だった。今なら「不検出」扱いだ。水は毎日大量に摂取するので、微量でも被曝量の累計は上がる。幼児や若い母親が水道水を飲んでも大丈夫、とは言えない。【矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授】
茶、ジュース、ビールなどに使われる水はどうか。主に地下水、水道水を使うが、原産地表示義務はない。
「サンデー毎日」誌は、メーカー8社に独自検査体制や採水地などを訊き、回答を田島眞・実践女子大学教授、阿南久・全国消費者団体連絡会事務局長に分析してもらった。
独自検査は、全社が実施。日本コカ・コーラ、サントリーHD、キリンビールの3社は独自基準を設けている。
全体としてよくやっている。独自基準も評価できる。採水地の表示は、現行法では難しい。が、消費者の関心は高い。任意表示する企業努力が必要だ。企業が依拠せざるをえない国の暫定規制値は、知見を集めて設定しかのか、疑問が残る。【田島教授】
独自検査の内容や結果を公表すべきだ。独自基準は、他社との差別化を図るためでなく、業界全体で考えるべき問題だ。【阿南事務局長】
以上、大場弘行(本誌)「『その水は安全ですか?』 油断できない水道水、お茶、ジュース、ビール製造大手8社の回答一挙公開」(「サンデー毎日」2011年8月14日号)に拠る。
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回答のあったのは25社。
(1)独自に放射線量を検査しているのは2社【注】。
(a)イオン(千葉)
7月28日、関東地区で放射性物質の独自検査を済ませた牛肉の販売を開始した。
外部機関に委託し、暫定規制値(500Bq/kg)を下回っていることを確認のうえ、「全頭検査済み」と表示。
今後、取扱いを全国の1,000店舗に拡大する予定だ。
(b)イズミヤ(大阪)
プライベートブランドの豚肉の検査を実施。「検出なし」だった。
豚は個体識別番号制度がなく、「国産」表示だけでよいが、同社は独自に生産履歴を公表する。
牛肉は、仕入れ先を一本化し、定期的な抜き取り検査や仕入れ前検査を強化する。
(2)独自に放射線量を検査していないのは23社。
大半が、国や自治体の基準・方針に従う、としている。
「独自検査の実態は現実的でない」(サークルKサンクス)
「百貨店の場合、テナント店の商品を調べるのは無理」(中合)
食品の検査機器導入には、1台2,000万円が必要で、1点の検査に1時間要する。
検査機器の不足が一番のネック。検査は物理的に手いっぱいで、膨大な費用を負担できるのは一部大手に限られる。チェルノブイリ、スリーマイル島事故後のデータを生かすべきだが、政府がデータ収集のためにどの程度努力したか、疑わしい。汚染が心配な消費者は、輸入品を買うしかない。【田島眞・実践女子大学教授】
(3)豚肉
セシウム汚染は、豚肉にも広がるおそれが出てきた。熊本県内の業者が、念のために、6月に購入した福島産の豚15頭のうち2頭を検査したところ、暫定規制値は大幅に下回ったものの、6.6~10.1Bqのセシウムが検出された。飼料は輸入原料だ。福島で飼育されている間に与えられた水が原因と推定されている。
原発事故後、他県に出荷された豚は、約1万頭とみられる。
業者間の取引の実態は不明で、他の業務に忙殺されているため、出荷された豚の数を把握するのは不可能だ。【福島県畜産課】
放し飼いにされた鶏の肉や鶏卵も汚染リスクは高い。
(4)対策
国全体で安全が確保されているのが本来の姿なのに、政府に信頼感がないのが一番の問題だ。【阿南久・全国消費者団体連絡会事務局長】
各社が企業努力で可能な対策は、(a)福島第一原発から離れた地域から仕入れたり (b)JAS法では原産国の表示だけを義務づけている精肉類に都道府県名を表示することだ。一部の企業では実施している(そごう・西部、名鉄百貨店)。
企業の独自対策は、法的責任の追及に備えるというよりも、客の信頼を勝ちとるビジネス戦略としての意味があるのではないか。国産品がまったく売れない事態になれば流通業界が求めるような制度作りは進みそうだが、そうでなければ国の動きには期待できない。【森田果・東北大学准教授】
【注】店頭販売ではないが、組合員向け宅配の東都生協(東京)、生活クラブ生協(神奈川)などは、精肉、野菜、鶏卵、米などを独自検査している。グリーンコープ(福岡)は、銚子港に水揚げされた魚介類、北海道産メロン、韓国産ノリなどを検査対象に加えている。
以上、奥村隆(本誌)「イオン、ファミリーマート、三越伊勢丹・・・・全国30社の放射能対策」(「サンデー毎日」2011年8月14日号)に拠る。
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浄水場では、河川から取水した水の汚れを「凝集沈殿」させて上澄み水を砂の層で濾過する。セシウムは、この過程で除去される。
東北、関東では、この浄水場から出る汚泥からセシウムが検出され続けている。東京都の検査(7月13日)では、6浄水場の汚泥から290~2,900Bq/kgを検出。汚染水の流入が続いていることを裏づける。
地上のホットスポットのように、水中で汚染水がまだらに点在する恐れがある。日に1回、コップ1杯程度のサンプル検査では、検査後に濃度の高い汚染水が流れてくることがあり得る。原発事故で膨大な量のセシウムが地表に落ちている。河川、地下水への流入は長期に及ぶ。検査頻度を上げるか、常時監視すべきだ。【白石久二雄・元放射線医学総合研究所内部被ばく評価室長】
検査結果の「不検出」に疑問がある。東京の浄水場では、2~7Bq以下は不検出で、各県の浄水場も同じだ。しかし、米国のビキニ水爆実験(54年)で汚染されたマグロを捨てる基準は、1.6Bq相当だった。今なら「不検出」扱いだ。水は毎日大量に摂取するので、微量でも被曝量の累計は上がる。幼児や若い母親が水道水を飲んでも大丈夫、とは言えない。【矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授】
茶、ジュース、ビールなどに使われる水はどうか。主に地下水、水道水を使うが、原産地表示義務はない。
「サンデー毎日」誌は、メーカー8社に独自検査体制や採水地などを訊き、回答を田島眞・実践女子大学教授、阿南久・全国消費者団体連絡会事務局長に分析してもらった。
独自検査は、全社が実施。日本コカ・コーラ、サントリーHD、キリンビールの3社は独自基準を設けている。
全体としてよくやっている。独自基準も評価できる。採水地の表示は、現行法では難しい。が、消費者の関心は高い。任意表示する企業努力が必要だ。企業が依拠せざるをえない国の暫定規制値は、知見を集めて設定しかのか、疑問が残る。【田島教授】
独自検査の内容や結果を公表すべきだ。独自基準は、他社との差別化を図るためでなく、業界全体で考えるべき問題だ。【阿南事務局長】
以上、大場弘行(本誌)「『その水は安全ですか?』 油断できない水道水、お茶、ジュース、ビール製造大手8社の回答一挙公開」(「サンデー毎日」2011年8月14日号)に拠る。
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