語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>自民党・公明党が作りあげた「東電救済法」 ~増える国民負担~

2011年08月11日 | 震災・原発事故
 「賠償法」は、政府案の段階では、東電の株主、債権者、社員などに一定の負担を課す、という考え方が入っていた。
 だが、自民・公明の要求を容れて修正した結果、政府から新たな資金提供を行うなど、徹頭徹尾、東電救済法になったのだ。債権者や株主に責任を取らせる法的整理は、これで一切できなくなった。東電の高額な年金も温存された。
 そして、国民負担が大幅に増えることになった。

 こうした「改悪」を大手メディアは、法案成立までほとんど報じなかった。
 その理由の一つに、「東電が債務超過であることを明らかにすべし」などと厳しい姿勢を示していた自民党の河野太郎衆議院議員が、自身のブログ(7月22日)でこの修正案を正常化に向けた「大きな一歩」と高く評価したことにあるのではないか。
 不勉強なマスコミは、修正案の中身を精査せず、誰が賛成・反対しているか、を基準に報道する。あの強硬派の高の議員が評価する以上、いい修正だ、と思いこんだのだろう。
 河野議員は、5日後のブログで「玉虫色」「一蹴しなければならない」と修正案の評価を一変させたが、時すでに遅し。

 結局、労組経由で東電の献金を受け取ってきた民主党も、経営者経由の東電マネーに毒されてきた自民党も、どちらも東電・経産省コンビに抱き込まれてしまった。かくして、東電温存法は成立してしまった。

 賠償コストは、電気料金に上乗せされる。泣くのは国民だ。
 政治家の責任は言うに及ばず、大手メディアの無知と不作為も罪深い。

 以上、ドクターZ「『賠償法』改悪をなぜ報じない ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2011年8月20・27日号)に拠る。

   *

  原子力損害賠償支援機構法案の修正について、与野党の合意内容を見ると、元々の法案よりも東電に対して更に甘くなった。

 (1)もっとも問題なのは、実質的に東電に国費を無限定に投入できる仕組みを作ったことだ。
 元々の法案では、東電に賠償資金を援助する機構に対して、国は予算を直接投入するのではなく国債を交付する形にしていた(交付国債)。いずれは国に資金を返済させることを想定していた。
 ところが、与野党合意によって新たな条文が追加された。交付国債による資金で不足が生じる場合、返済義務のない純然たる予算を国が機構に直接投入できるようになった。機構から東電に対して資金援助が行われることを考えると、機構経由で国から東電に無限定に資金を投入することが可能になったのだ。
 国の責任を明確化自体は正しい。しかし、国の責任は、(a)関係省庁の幹部が相応の責任を取る、(b)既存の巨額の原子力推進予算を賠償の原資に回す、など国民負担を伴わない形で取るべきだ。それなのに、今回の与野党合意では、国の責任という名目の下で、国民負担に直結する予算投入のみが可能とされた。これほど安易な国民へのツケ回しはない。

 (2)次に問題なのは、東電を絶対に債務超過にしないという意思ばかりが優先されていることだ。
 与野党合意では、今回の事故に関する東電への損害賠償支援と、将来の事故に備える分の資金を別勘定にするかどうか、という点について、「勘定区分方式を求めるものではない」「あくまでも勘定は一つ」とされている。
 この部分は何を意図しているか。官僚が作成して与野党に根回しするのに使われた“賠償機構法修正ポイント”(最初のファイル)の2枚目に明らかだ。勘定を分けたら東電が債務超過になるおそれがある。勘定区分を分けないようにすることで債務超過になり得ないようにする、というのが役所の意向だった。
 それに政治が乗った結果が今回の与野党合意だ。このようにフィクションで東電の債務超過を無理矢理避けようというやり方は、市場と国民の双方をバカにしているとしか思えない。それが通用するほど市場は甘くないはずだ。

 (3)その他にも、今回の与野党合意には問題点が多い。
 <例>株主や債権者などのステークホルダーの責任をより明確にしたと言われており、実際、「関係者に対する協力の要請が適切かつ十分なものであるかどうかを確認しなければならない」という規定が追加された。
 しかし、“協力”の内容が何なのかは不明確なままだし、“要請”した結果がどうかは問われていない。つまり、法律的には空の文章が加わっただけで、実効性は何もない。
 また、“二段階方式の破綻処理”。法律の附則に、「この法律の施行後早期に・・・・国民負担を最小化する観点から、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずる」という規定を加えた。
 しかし、この規定の書きぶりでは、検討の期限も“必要な措置”の内容も不明だ。その一方で、法律の本体の規定に基づいて機構による東電支援は始まり、東電に国の資金が入ることになる。ひとたび支援が始まれば、「今さら破綻させたらこれまで投入した資金が返ってこなくなり、国民負担なる」といった理屈で延々と国の資金が東電に投下されることになる可能性が高い。
 つまり、この附則の文言は、実際にはあまり意味がない。

 (4)要するに、今回の与野党合意は、官僚の根回しに基づく政治の意思として、東電を正しく再生させるよりも、とにかく絶対に債務超過にさせないで延命させるという方向を選んだのだ。
 その結果として何が起きるか。ちょうど90年代の不良債権処理の失敗のときのように、国は延々と資金を投入し続けて国民負担も増え続けるけど、東電はまったく再生せず同じような危機を繰り返す可能性が高い。

 以上、岸博幸「原子力損害賠償法案の修正を許すな! 東電を債務超過にしないというフィクション ~岸博幸のクリエイティブ国富論 第148回~」(2011年7月29日 DIAMOND online)に拠る。
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