井川陽次郎・「読売新聞」論説委員は、03年から論説委員を務める。本務のかたわら、原子力委員会の新計画策定会議の委員、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会の委員などに就いている。国の原子力政策立案のインサイダーとなって、原子力推進派が主催するパネリスト、コーディネーターなどを務め、原子力政策をPRしてきた。
<例1>シンポジウム「東電福島原発事故とその教訓」、3月15日、於都内。
反原発派は「事故がすごく嬉しそうなんですね。人の不幸を喜んじゃいかんと思うんですけれども。思った通りのことが起きたぞということで、お祭り騒ぎみたい」。
再生可能エネルギーの普及に取り組む孫正義・ソフトバンク社長は「日本では脱原発だけど、韓国ではやっぱり原子力発電所。火事場泥棒みたい」。
「脱原発、本当にするにしたって、何するにしたって、ちゃんとした部分が何もできないというのが現状だ」
<例2>城山英明・東京大学教授との対談(2011年2月19日付け「読売新聞」掲載の全面広告)
「日本には発電技術はもちろん、安全規制や核拡散に関する知識が豊富にあります」
「原子炉の運転で日本の安全水準は国際的に高い、と思います」
<例3>シンポジウム「低炭素社会における原子力の役割」(日本原子力産業協会の年次大会)
「首都圏で原子力への関心が低下している。原子力広報予算が削減傾向にあるのは問題だ」
<例4>シンポジウム「原子力発電の長期運転と安全性」(福井県原子力平和利用協議会主催)
「高経年化炉ではなくベテラン炉という言葉はどうか。30年、40年の運転経験があって、むしろベテランとして安定して発電できる炉ではないか。ベテラン炉が増える福井県を、世界レベルの情報発信地域として発展するよう、産官学で支援してほしい。ベテラン炉を弱点と捉えず、福井県でも大丈夫だから世界も大丈夫だと情報発信できればいい」
井川は、破綻が明確な核燃料サイクル路線の支持者として知られる。10年7月の原子力委員会では、現行の大綱策定に同委員会の新計画策定委員として、「有識者」の一人としてヒアリングを受けた。
「世論調査の結果を見ると、現行の政策に対する国民の支持も一定程度はある」
「再処理工場の稼働状況などを踏まえて、専門家を交えてしっかりした議論をした上で、次の時を見据えてやられる方がいい」
国の原子力推進勢力と「読売新聞」科学部出身の論説委員との密接な関係は、今に始まったことではない。井川には、中村政雄という優秀な先輩がいる。科学部出身にして論説委員という経歴、在職中に張った原発推進の論陣・・・・同じパターンだ。
中村は、91年3月、日本原子力文化振興財団原子力PA方策委員会委員長として、「原子力PA方策の考え方」という報告書【注】をまとめ、原発事故後、物議を醸した。
「停電は困るが、原子力はいやだという虫のいいことを言っているのが大衆であることを忘れないように」
「文化系の人は数字をみるとむやみにありがたがる」
「ドラマの中に抵抗の少ない形で原子力を織り込んでいく」
このように愚民思想に満ちた「世論操作マニュアル」をものした中村は、原発推進派の記者を集めて「原子力報道を考える会」を作り、「原子力報道は危険性を強調しすぎる」など、メディア批判を繰り広げている。
中村は、読売新聞社を退社後、電力中央研究所(電中研)の「名誉顧問」となった。
その活躍の場の一つは、旧科学技術庁系の独立行政法人「科学技術振興機構」が提供する科学技術専門放送「サイエンスチャンネル」だ。ここで中村は、共同通信社や朝日新聞社の「原子力記者OB」とともに、原子力PR番組の作成に関与している。
原子力ムラの一員となった記者たちには、在職中のみならず、退職後も、さまざまな形の恩典が用意されているのだ。
このたび、新大綱策定会議にメディアからただ一人委員として参加したのは、知野恵子・「読売新聞」編集委員だ。
正力松太郎以来、「読売新聞」には原発推進に協力する記者に事欠かない。
【注】「【震災】原発>日本原子力文化振興財団による「国民洗脳マニュアル」」参照。
以上、水木守「原発推進に多大な“貢献”をする『読売新聞』の論説委員たち」(「週刊金曜日」2011年8月19日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓
<例1>シンポジウム「東電福島原発事故とその教訓」、3月15日、於都内。
反原発派は「事故がすごく嬉しそうなんですね。人の不幸を喜んじゃいかんと思うんですけれども。思った通りのことが起きたぞということで、お祭り騒ぎみたい」。
再生可能エネルギーの普及に取り組む孫正義・ソフトバンク社長は「日本では脱原発だけど、韓国ではやっぱり原子力発電所。火事場泥棒みたい」。
「脱原発、本当にするにしたって、何するにしたって、ちゃんとした部分が何もできないというのが現状だ」
<例2>城山英明・東京大学教授との対談(2011年2月19日付け「読売新聞」掲載の全面広告)
「日本には発電技術はもちろん、安全規制や核拡散に関する知識が豊富にあります」
「原子炉の運転で日本の安全水準は国際的に高い、と思います」
<例3>シンポジウム「低炭素社会における原子力の役割」(日本原子力産業協会の年次大会)
「首都圏で原子力への関心が低下している。原子力広報予算が削減傾向にあるのは問題だ」
<例4>シンポジウム「原子力発電の長期運転と安全性」(福井県原子力平和利用協議会主催)
「高経年化炉ではなくベテラン炉という言葉はどうか。30年、40年の運転経験があって、むしろベテランとして安定して発電できる炉ではないか。ベテラン炉が増える福井県を、世界レベルの情報発信地域として発展するよう、産官学で支援してほしい。ベテラン炉を弱点と捉えず、福井県でも大丈夫だから世界も大丈夫だと情報発信できればいい」
井川は、破綻が明確な核燃料サイクル路線の支持者として知られる。10年7月の原子力委員会では、現行の大綱策定に同委員会の新計画策定委員として、「有識者」の一人としてヒアリングを受けた。
「世論調査の結果を見ると、現行の政策に対する国民の支持も一定程度はある」
「再処理工場の稼働状況などを踏まえて、専門家を交えてしっかりした議論をした上で、次の時を見据えてやられる方がいい」
国の原子力推進勢力と「読売新聞」科学部出身の論説委員との密接な関係は、今に始まったことではない。井川には、中村政雄という優秀な先輩がいる。科学部出身にして論説委員という経歴、在職中に張った原発推進の論陣・・・・同じパターンだ。
中村は、91年3月、日本原子力文化振興財団原子力PA方策委員会委員長として、「原子力PA方策の考え方」という報告書【注】をまとめ、原発事故後、物議を醸した。
「停電は困るが、原子力はいやだという虫のいいことを言っているのが大衆であることを忘れないように」
「文化系の人は数字をみるとむやみにありがたがる」
「ドラマの中に抵抗の少ない形で原子力を織り込んでいく」
このように愚民思想に満ちた「世論操作マニュアル」をものした中村は、原発推進派の記者を集めて「原子力報道を考える会」を作り、「原子力報道は危険性を強調しすぎる」など、メディア批判を繰り広げている。
中村は、読売新聞社を退社後、電力中央研究所(電中研)の「名誉顧問」となった。
その活躍の場の一つは、旧科学技術庁系の独立行政法人「科学技術振興機構」が提供する科学技術専門放送「サイエンスチャンネル」だ。ここで中村は、共同通信社や朝日新聞社の「原子力記者OB」とともに、原子力PR番組の作成に関与している。
原子力ムラの一員となった記者たちには、在職中のみならず、退職後も、さまざまな形の恩典が用意されているのだ。
このたび、新大綱策定会議にメディアからただ一人委員として参加したのは、知野恵子・「読売新聞」編集委員だ。
正力松太郎以来、「読売新聞」には原発推進に協力する記者に事欠かない。
【注】「【震災】原発>日本原子力文化振興財団による「国民洗脳マニュアル」」参照。
以上、水木守「原発推進に多大な“貢献”をする『読売新聞』の論説委員たち」(「週刊金曜日」2011年8月19日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓