語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】天下り容認の規制庁人事 ~民自公修正談合~

2012年08月01日 | 震災・原発事故
 (1)国会事故調査委員会の報告書【注1】は、これまでに出ていない新たな事実を数多く明らかにし、併せて政府・国会に対して踏み込んだ提言を行っている点で極めて有意義なものだ。

 (2)ところが、この報告書が出る(7月5日)直前、規制委員会法案に関する民自公の修正協議で、報告書の提言については「3年以内に(見直し)を検討」と条文に書き込んでしまった。つまり、「3年間放置可能」=黙殺をあらかじめ決め込んだのだ。

 (3)国会事故調の提言で実現が特に急がれるのは、(a)原子力規制委員会と(b)その事務局(原子力規制庁)の設立だ。

 (4)(a)について、国会事故調は、委員会の高い透明性を確保する見地から、委員の選定は、まず独立した第三者機関が相当数の候補者を選定し、その中から国会同意人事として、国会が最終決定をする、というプロセスを提言している。
 しかし、この提言については、マスコミでも国会でも何ら議論されていない。
 そして、政府が委員を選考している。しかも、その委員候補者【注2】は、殆どが従来の政府関係の組織に長年所属していた人々で、政府や関係機関とのしがらみを一切断った人選(国民の信頼に耐える人選)だとは到底言えない。
 今のような政府主導のやり方では、民自公の原発推進派の裏取引で候補が選定されてしまう可能性が高い。真に独立した委員会にはならない。

 (5)(b)は、(a)と同じくらい重要だ。原発推進機関(経産省や文科省)から規制機関を完全に独立させなければならない。経産省に戻れないなら出向しない、という職員を大量に受け入れたら、その職員は規制庁の職員である前に、将来戻って一生働く経産省のことを慮って仕事をする。だから国会事故調は、例外なくノーリターンルールを適用すべし、と提言した。
 しかるに、(2)の民自公の談合修正により、規制庁には経産省や文科省から自由に出向者が出て、しかも事実上、自由に親元の省庁に戻れることになった。本人の意欲がなくなれば戻れることにしてしまったので、事実上、ノーリターンルールの原則は完全に骨抜きにされた。

 (6)経産省などの人事当局は、勝利の美酒に酔いしれていることだろう。
 民主党の方針転換で、規制庁への派遣人事が楽になった。それだけではない。規制庁を事実上の植民地にできるから、これまでどおり電力会社への影響力を温存できる。天下り先確保も容易になった。 

 【注1】「国会事故調」のホームページには、ダイジェスト版、要約版、本編、参考資料、住民アンケート [抜粋]、従業員アンケート [抜粋]、会議録を収録する。
 【注2】「【原発】規制委員会委員長候補は「原子力ムラ」の中心人物

 以上、古賀茂明「勝利の美酒に酔いしれる経産省 ~官々愕々第28回~」(「週刊現代」2012年8月11日号)に拠る。
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