今年3月11日、国会議事堂を“人間の鎖”が取り囲んだ。
4月から毎週、首相官邸前で大飯原発再稼働に反対する声を上げてきた(始めは300人程度の集まり)。
6月15日(金)以降、つまり大飯原発3号機の再稼働が決定的になった時以降、参加者が1万人台に膨れ上がった。
非常時に不可欠の備えをすべて先送りにしたまま、夏の電力不足と電気料金値上げを煽り、ついには「国民の生活を守るため」、「私の責任」などと無表情に断言した首相の鈍感さに人々の怒りが爆発したのだ。
この数ヶ月、
(a)未来のため脱原発を諦めない人々
(b)その声の傍らを黙って通り過ぎる大手メディアの記者たち
という構図が際だった。その間、
(c)ツイッターやFacebookは、ひたすら情報の「拡散」を続けていた。
6月29日(金)、集会参加者は一気に10万人台に急増。7月16日に予定されていた「さようなら原発10万人集会」が人々の意識を後押ししていたのかもしれない。「新しい社会体への自己組織化」(A・ネグリ)という流れだ。
車道にまではみ出した官邸前集会の参加者
どこまでも続くデモの隊列
これはヘリコプターをチャーターするマスメディアが関心を示さなければ見せてもらえない贅沢品だ。
が、参加者自身がすばやい決断で、寄付を募って自前の空影を実現してしまった(プロジェクト名「正しい報道ヘリの会」)。
マスメディアの一部もヘリを飛ばした結果、霞が関・永田町一帯を埋め尽くす群衆が可視化された。
すると、次の金曜日(7月6日)には一転して警察が本格的な集会規制に乗り出した。当日、国会議事堂前で電車を降りようとした人々が、出口を1ヵ所に絞られ、地下道に溢れた。
最後まで地上に出られなくて過剰警備に怒りの声をあげた人々は、理解した。マスメディアの登場がデモの「拡大」を促し、それが逆に警察の警備強化をも促す、という相乗・相殺の効果を。
マスメディアは情報を「拡大」させるが、“金曜日の人々”はそれらを「拡散」させる。
事実を「拡散」するのは、ツイッター、Facebookだ。地下道の様子は、居合わせた人のデジカメに治められ、YouTubeにアップされ、陽の目を見た。隠しても執拗に自らを可視化させる地下道の人々。
昨秋から始まった経済産業省横での福島の女性たちの座り込みは、命を生み、守っていくという運動として持続し、テント撤去の危機をなんども乗り越えてきた。そこで培われた精神が、人々をつなぐムーブメントとなって各地に拡散し、現地おおい町に飛び火し、延べ10万人という激しい抗議行動に結びついた。
ネット上で、「ウォール街占拠」と「霞が関占拠」が重なってくる。
以上、神保太郎「メディア批評第57回」(「世界」2012年9月号)の「(1)情報は「拡大」から「拡散」の時代に」に拠る。
【参考】
「【原発】「さようなら原発」17万人集会の記録」
↓クリック、プリーズ。↓
4月から毎週、首相官邸前で大飯原発再稼働に反対する声を上げてきた(始めは300人程度の集まり)。
6月15日(金)以降、つまり大飯原発3号機の再稼働が決定的になった時以降、参加者が1万人台に膨れ上がった。
非常時に不可欠の備えをすべて先送りにしたまま、夏の電力不足と電気料金値上げを煽り、ついには「国民の生活を守るため」、「私の責任」などと無表情に断言した首相の鈍感さに人々の怒りが爆発したのだ。
この数ヶ月、
(a)未来のため脱原発を諦めない人々
(b)その声の傍らを黙って通り過ぎる大手メディアの記者たち
という構図が際だった。その間、
(c)ツイッターやFacebookは、ひたすら情報の「拡散」を続けていた。
6月29日(金)、集会参加者は一気に10万人台に急増。7月16日に予定されていた「さようなら原発10万人集会」が人々の意識を後押ししていたのかもしれない。「新しい社会体への自己組織化」(A・ネグリ)という流れだ。
車道にまではみ出した官邸前集会の参加者
どこまでも続くデモの隊列
これはヘリコプターをチャーターするマスメディアが関心を示さなければ見せてもらえない贅沢品だ。
が、参加者自身がすばやい決断で、寄付を募って自前の空影を実現してしまった(プロジェクト名「正しい報道ヘリの会」)。
マスメディアの一部もヘリを飛ばした結果、霞が関・永田町一帯を埋め尽くす群衆が可視化された。
すると、次の金曜日(7月6日)には一転して警察が本格的な集会規制に乗り出した。当日、国会議事堂前で電車を降りようとした人々が、出口を1ヵ所に絞られ、地下道に溢れた。
最後まで地上に出られなくて過剰警備に怒りの声をあげた人々は、理解した。マスメディアの登場がデモの「拡大」を促し、それが逆に警察の警備強化をも促す、という相乗・相殺の効果を。
マスメディアは情報を「拡大」させるが、“金曜日の人々”はそれらを「拡散」させる。
事実を「拡散」するのは、ツイッター、Facebookだ。地下道の様子は、居合わせた人のデジカメに治められ、YouTubeにアップされ、陽の目を見た。隠しても執拗に自らを可視化させる地下道の人々。
昨秋から始まった経済産業省横での福島の女性たちの座り込みは、命を生み、守っていくという運動として持続し、テント撤去の危機をなんども乗り越えてきた。そこで培われた精神が、人々をつなぐムーブメントとなって各地に拡散し、現地おおい町に飛び火し、延べ10万人という激しい抗議行動に結びついた。
ネット上で、「ウォール街占拠」と「霞が関占拠」が重なってくる。
以上、神保太郎「メディア批評第57回」(「世界」2012年9月号)の「(1)情報は「拡大」から「拡散」の時代に」に拠る。
【参考】
「【原発】「さようなら原発」17万人集会の記録」
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