8月7日、「公務員退職金400万円引き下げ」という報道が流れた。
これを霞が関語に翻訳すると、「公務員退職金引き下げ、来年の1月まで先延ばし」「400万円引き下げは2年後」だ。
決まったのは、「400万円下げるが、来年1月から3段階に分けて2年後までに実施」だからだ。
公務員給与の大原則は、「民間並み」だ。
だが、長びくデフレの影響で民間の退職金が下がったのに、公務員の退職金は高いまま放置されてきた。
退職金が下がらなかったのは、永田町特有の「事情」があるからだ。
(1)人事院・・・・「公正中立な」「第三者機関」のはずだが、その事務局は全員国家公務員だ。よって、公務員の退職金が民間より高い、ということを認めたがらない。その人事院が嫌々調査したら、公務員のほうが400万円も高い、という結果が出て、今年3月に発表された。経団連その他の期間による調査では500~1,000万円ほど公務員が高い、という結果が出ているから、400万円という数字はマユツバだ。が、ともかく引き下げの前提が整った。
だが、すぐには実施されない。政府は、有識者会議を立ち上げて、「どうやって」下げるかの検討を始めた。そこから引き延ばしが始まり、ようやく8月7日に退職金引き下げを決めた。
本来なら、3月の時点ですぐに全額引き下げ法案を国会に提出し、今年度冒頭から全額引き下げを実施すればよかったのだ。しかし、第2の事情がこれを阻んだ。
(2)組合・・・・選挙を前に連合の言いなりになるしかない民主党は、簡単に引き下げると組合に怒られる。だから、とにかく少しでも先送りにして、しかも3回に分けて下げることにして、「努力」の跡を見せなければならないのだ。
(3)自民党と公明党・・・・キャリア官僚を守ろうとする元祖「官僚主導」の両党が、政権返り咲き後に官僚に協力を求める心算から、官僚に恩を売りたい。だから、退職金を下げろ、とは両党は決して言わない。国会でも問題にならない。
選挙前に退職金引き下げ法案に反対できる政党はいない。だから、下半期開始で10月実施は、やる気になれば十分できる。逆に、どうしても先送りしたいなら、自然なのは来年度初めの4月だ。では、なぜ来年1月からなのか。ここに第4の事情が登場してくる。
(4)勝栄二郎・・・・退職金引き下げ発表とほぼ同時に、勝栄二郎・財務事務次官が近々退職すると報道された。勝次官は来年3月には定年で辞めなければならないが、実際には遅くとも年内には辞める、と言われてきた。現場の官僚としては、勝次官の退職金を下げる法案など、畏れ多くてとても作れない、来年1月実施としておけば勝次官の退職金には影響しない、と考えた。これこそ1月実施を決定づけた第4の事情なのだ(という怪説が霞が関を駆け巡っている)。
以上、古賀茂明「退職金引き下げ 逃げ切った勝事務次官 ~官々愕々第30回~」(「週刊現代」2012年9月1日号)に拠る。
*
勝次官が8月中にも退任し、後任に真砂靖・主計局長を充てる方向で調整に入った、との報道が出ている。お疲れ様でした、これにてお役御免のタイミングだ。
財務省では、「増税は勲章・手柄」という“社風"がある。税率を上げれば、わかりやすい業績となる。税法の改正が必要で、バカな政治家を手玉にとった、という証明でもあるからだ。政治家より官僚が偉いことを示したものが、本当の「財務省の王」になるわけだ。
人のいい谷垣禎一・自民党総裁を洗脳して消費増税を吹き込み、他方、やることのない野田佳彦・財務相を洗脳しながら総理にまで仕立て上げ、野田・谷垣という増税派のツートップという惑星直列のような奇跡を演出したのが勝次官だ。今後「王」の座に君臨するためには、ここで辞める必要があった。
ただし、今の時代、すぐには天下りは無理だ。さすがの財務省も、ここ3代の次官はそれまでの特殊法人トップのような華麗な天下りはしていない。
とはいえ、勝次官は10年に一度の「王」なので、それなりのポストが確保されるまで、従来の例に倣って財務省顧問などで個室・車・秘書付きで一休みする可能性もある。もっとも、最近は役所の顧問職にも風当たりが強いので、役所に友好的な会社などに避難するかもしれない。
財務省は、近年、日銀総裁人事で苦杯を嘗めさせられてきた。事務次官級を3人も候補として出しながら、軒並み民主党に否定された過去がある。財務省としては、ここはたっぷりと利子をつけて返してもらいたいところ。来年4月に任期が到来する日銀総裁は、まさしく「王」にふさわしいポストだ。国際的には中央銀行総裁は経済学博士号取得者であるのが常識だが、日本では財務次官経験者は有資格者と見られている。
ドクターZ「勝栄二郎次官 気になる退任後の進路 ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2012年9月1日号)に拠る。
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これを霞が関語に翻訳すると、「公務員退職金引き下げ、来年の1月まで先延ばし」「400万円引き下げは2年後」だ。
決まったのは、「400万円下げるが、来年1月から3段階に分けて2年後までに実施」だからだ。
公務員給与の大原則は、「民間並み」だ。
だが、長びくデフレの影響で民間の退職金が下がったのに、公務員の退職金は高いまま放置されてきた。
退職金が下がらなかったのは、永田町特有の「事情」があるからだ。
(1)人事院・・・・「公正中立な」「第三者機関」のはずだが、その事務局は全員国家公務員だ。よって、公務員の退職金が民間より高い、ということを認めたがらない。その人事院が嫌々調査したら、公務員のほうが400万円も高い、という結果が出て、今年3月に発表された。経団連その他の期間による調査では500~1,000万円ほど公務員が高い、という結果が出ているから、400万円という数字はマユツバだ。が、ともかく引き下げの前提が整った。
だが、すぐには実施されない。政府は、有識者会議を立ち上げて、「どうやって」下げるかの検討を始めた。そこから引き延ばしが始まり、ようやく8月7日に退職金引き下げを決めた。
本来なら、3月の時点ですぐに全額引き下げ法案を国会に提出し、今年度冒頭から全額引き下げを実施すればよかったのだ。しかし、第2の事情がこれを阻んだ。
(2)組合・・・・選挙を前に連合の言いなりになるしかない民主党は、簡単に引き下げると組合に怒られる。だから、とにかく少しでも先送りにして、しかも3回に分けて下げることにして、「努力」の跡を見せなければならないのだ。
(3)自民党と公明党・・・・キャリア官僚を守ろうとする元祖「官僚主導」の両党が、政権返り咲き後に官僚に協力を求める心算から、官僚に恩を売りたい。だから、退職金を下げろ、とは両党は決して言わない。国会でも問題にならない。
選挙前に退職金引き下げ法案に反対できる政党はいない。だから、下半期開始で10月実施は、やる気になれば十分できる。逆に、どうしても先送りしたいなら、自然なのは来年度初めの4月だ。では、なぜ来年1月からなのか。ここに第4の事情が登場してくる。
(4)勝栄二郎・・・・退職金引き下げ発表とほぼ同時に、勝栄二郎・財務事務次官が近々退職すると報道された。勝次官は来年3月には定年で辞めなければならないが、実際には遅くとも年内には辞める、と言われてきた。現場の官僚としては、勝次官の退職金を下げる法案など、畏れ多くてとても作れない、来年1月実施としておけば勝次官の退職金には影響しない、と考えた。これこそ1月実施を決定づけた第4の事情なのだ(という怪説が霞が関を駆け巡っている)。
以上、古賀茂明「退職金引き下げ 逃げ切った勝事務次官 ~官々愕々第30回~」(「週刊現代」2012年9月1日号)に拠る。
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勝次官が8月中にも退任し、後任に真砂靖・主計局長を充てる方向で調整に入った、との報道が出ている。お疲れ様でした、これにてお役御免のタイミングだ。
財務省では、「増税は勲章・手柄」という“社風"がある。税率を上げれば、わかりやすい業績となる。税法の改正が必要で、バカな政治家を手玉にとった、という証明でもあるからだ。政治家より官僚が偉いことを示したものが、本当の「財務省の王」になるわけだ。
人のいい谷垣禎一・自民党総裁を洗脳して消費増税を吹き込み、他方、やることのない野田佳彦・財務相を洗脳しながら総理にまで仕立て上げ、野田・谷垣という増税派のツートップという惑星直列のような奇跡を演出したのが勝次官だ。今後「王」の座に君臨するためには、ここで辞める必要があった。
ただし、今の時代、すぐには天下りは無理だ。さすがの財務省も、ここ3代の次官はそれまでの特殊法人トップのような華麗な天下りはしていない。
とはいえ、勝次官は10年に一度の「王」なので、それなりのポストが確保されるまで、従来の例に倣って財務省顧問などで個室・車・秘書付きで一休みする可能性もある。もっとも、最近は役所の顧問職にも風当たりが強いので、役所に友好的な会社などに避難するかもしれない。
財務省は、近年、日銀総裁人事で苦杯を嘗めさせられてきた。事務次官級を3人も候補として出しながら、軒並み民主党に否定された過去がある。財務省としては、ここはたっぷりと利子をつけて返してもらいたいところ。来年4月に任期が到来する日銀総裁は、まさしく「王」にふさわしいポストだ。国際的には中央銀行総裁は経済学博士号取得者であるのが常識だが、日本では財務次官経験者は有資格者と見られている。
ドクターZ「勝栄二郎次官 気になる退任後の進路 ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2012年9月1日号)に拠る。
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