公立小・中学校には(1)正規職員と(2)非正規職員があって、(2)は常勤と非常勤の二つに分かれる。
(a)常勤・・・・正規と同じくフルタイムで働き、担任や部活動を受け持つことがある。本来は病休、育休、産休などの代替要員だが、現在は「定数内講師」が増えている。
「定数内講師」とは、正規教員定数の欠員を補充する臨時教員のことだ。
臨時教員の任用は、「緊急の場合」または「臨時の職に関する場合」などに限られ、任用期間は6か月以内で、更新は1回だ(地方公務員法第22条)。しかし、年度末に「空白の1日」を設けることで雇用契約を反復する脱法行為が常態化している。
常勤講師は、1年ごとに勤務校が替わる。次年度の雇用の不安が常につきまとう。学校現場でものが言えない弱い立場だ。賃金は正規の7割の水準で、昇給も制限される。正規との生涯賃金お差額は1億円と言われる。
(b)非常勤・・・・契約した曜日や時間で働くパートタイムだ。授業の時間単価は2,500円程度で、学校を掛け持ちしても月収は10万~15万円。生活費を補うためのダブルワークや、生活保護を受けながら勤務を続ける人もいる。
こうした官製ワーキング・プアが公教育を担っている実体は、ほとんど知られていない。
非正規職員は、生徒の転出でクラス数が減ると、真っ先にクビになる。ようやく決まった仕事がキャンセルされることもザラだ。失職の不安から病休を取るのもためらう。妊娠しても、嬉しい反面、仕事を断れば次の職はないから、大きなお腹で仕事を引き受け、出産後はすぐ職場復帰する(育休中の正規職員の姿を見て惨めな気持ちになる)。
不安定雇用の一方で、学校現場では正規と同じ能力、責任、成果が求められる。
だが、研修には参加できず、一人前の教員として扱ってもらえない。
臨時教員は増え続けている。
2005年 (1)596,915人。(2)-(a)48,339人、(b)35,966人。(3)378人。
【注】(2)の計:8.4万人(12.3%)。(3)は再任用短時間勤務教員等。
2005年 (1)584,801。(2)-(a)63,695人、(b)52,050人。(3)2,812人。
【注】(2)の計:11.6万人(16.5%)。(3)は再任用短時間勤務教員等。
この背景には、義務教育費国庫負担制度の改悪がある。
2004年度に導入された「総額裁量制」は、国庫負担金の総額の範囲内であれば、給与額や教員配置を都道府県の裁量にした。正規1人に対し、複数の非正規を配置できるようになった。加えて、2006年度には国庫負担金を2分の1から3分の1に縮小した。国庫負担金の削減は都道府県財政を圧迫し、正規から非正規の置き換えが進んだ。
人件費抑制に拍車がかかる。
初任者研修で模範授業を行うほどの力量があっても、現場で経験や実績をどれだけ重ねても、採用試験にパスできない。かくて、「自分は無能だ」という自己否定に陥り、教育者としての誇りも奪われる。採用試験で不合格にしながら、臨時教員として来ようし続ける教育行政に「採用差別だ」との声もあがる。
採用試験には通らず、60歳の定年を迎えると、常勤講師にはもうなれない。時間給の非常勤講師になると、33万円ほどの手取り給与が半分以下になり、生活に窮する。退職金は、雇用の切れる年度末に1か月分が支給されるだけ。「空白の1日」があるから、毎年3月には社会保険や厚生年金から外されてきた。当然、年金は安い。
一方、年金制度の改定で支給年齢は65歳に段階的に引き上げられる。正規職員は65歳まで働くことができる。
雇用対策法第10条は、募集や採用に際して「年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と雇用の年齢制限を禁止している。第5条には、地方公共団体にも施策を講じることが明記されている。しかし、教育主管当局の動きは鈍い。
学校現場は「使い捨て」の臨時教員が増えている。教育行政は、臨時教員の善意を逆手にとって、劣悪な労働条件で雇用し続けている。学校がブラックな状態で教育の質が維持できるのか。【ある臨時教員】
□平館英明「臨時教員は潜在的失業者だ 「安上がり」教育が生む労働破壊」(「週刊金曜日」2014年11月21日号)
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【非正規】雇用の構図に大変化 ~企業と消費者のリスクも高まる~」
(a)常勤・・・・正規と同じくフルタイムで働き、担任や部活動を受け持つことがある。本来は病休、育休、産休などの代替要員だが、現在は「定数内講師」が増えている。
「定数内講師」とは、正規教員定数の欠員を補充する臨時教員のことだ。
臨時教員の任用は、「緊急の場合」または「臨時の職に関する場合」などに限られ、任用期間は6か月以内で、更新は1回だ(地方公務員法第22条)。しかし、年度末に「空白の1日」を設けることで雇用契約を反復する脱法行為が常態化している。
常勤講師は、1年ごとに勤務校が替わる。次年度の雇用の不安が常につきまとう。学校現場でものが言えない弱い立場だ。賃金は正規の7割の水準で、昇給も制限される。正規との生涯賃金お差額は1億円と言われる。
(b)非常勤・・・・契約した曜日や時間で働くパートタイムだ。授業の時間単価は2,500円程度で、学校を掛け持ちしても月収は10万~15万円。生活費を補うためのダブルワークや、生活保護を受けながら勤務を続ける人もいる。
こうした官製ワーキング・プアが公教育を担っている実体は、ほとんど知られていない。
非正規職員は、生徒の転出でクラス数が減ると、真っ先にクビになる。ようやく決まった仕事がキャンセルされることもザラだ。失職の不安から病休を取るのもためらう。妊娠しても、嬉しい反面、仕事を断れば次の職はないから、大きなお腹で仕事を引き受け、出産後はすぐ職場復帰する(育休中の正規職員の姿を見て惨めな気持ちになる)。
不安定雇用の一方で、学校現場では正規と同じ能力、責任、成果が求められる。
だが、研修には参加できず、一人前の教員として扱ってもらえない。
臨時教員は増え続けている。
2005年 (1)596,915人。(2)-(a)48,339人、(b)35,966人。(3)378人。
【注】(2)の計:8.4万人(12.3%)。(3)は再任用短時間勤務教員等。
2005年 (1)584,801。(2)-(a)63,695人、(b)52,050人。(3)2,812人。
【注】(2)の計:11.6万人(16.5%)。(3)は再任用短時間勤務教員等。
この背景には、義務教育費国庫負担制度の改悪がある。
2004年度に導入された「総額裁量制」は、国庫負担金の総額の範囲内であれば、給与額や教員配置を都道府県の裁量にした。正規1人に対し、複数の非正規を配置できるようになった。加えて、2006年度には国庫負担金を2分の1から3分の1に縮小した。国庫負担金の削減は都道府県財政を圧迫し、正規から非正規の置き換えが進んだ。
人件費抑制に拍車がかかる。
初任者研修で模範授業を行うほどの力量があっても、現場で経験や実績をどれだけ重ねても、採用試験にパスできない。かくて、「自分は無能だ」という自己否定に陥り、教育者としての誇りも奪われる。採用試験で不合格にしながら、臨時教員として来ようし続ける教育行政に「採用差別だ」との声もあがる。
採用試験には通らず、60歳の定年を迎えると、常勤講師にはもうなれない。時間給の非常勤講師になると、33万円ほどの手取り給与が半分以下になり、生活に窮する。退職金は、雇用の切れる年度末に1か月分が支給されるだけ。「空白の1日」があるから、毎年3月には社会保険や厚生年金から外されてきた。当然、年金は安い。
一方、年金制度の改定で支給年齢は65歳に段階的に引き上げられる。正規職員は65歳まで働くことができる。
雇用対策法第10条は、募集や採用に際して「年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と雇用の年齢制限を禁止している。第5条には、地方公共団体にも施策を講じることが明記されている。しかし、教育主管当局の動きは鈍い。
学校現場は「使い捨て」の臨時教員が増えている。教育行政は、臨時教員の善意を逆手にとって、劣悪な労働条件で雇用し続けている。学校がブラックな状態で教育の質が維持できるのか。【ある臨時教員】
□平館英明「臨時教員は潜在的失業者だ 「安上がり」教育が生む労働破壊」(「週刊金曜日」2014年11月21日号)
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【参考】
「【非正規】雇用の構図に大変化 ~企業と消費者のリスクも高まる~」