語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【議会】が農薬使用の指導強化を訴えた議員を問責処分 ~各務原市~

2014年12月11日 | 医療・保健・福祉・介護
 岐阜県各務原市の市議会、9月定例会、9月17日。
 杉山元則・議員が、農林水産省・環境省通知「住宅地等における農薬使用について」を取り上げ、各務原市の農薬使用指導に係る対策を質した。
 同通知は、農薬被害を受けた人たちからの要望に応えて発出された(改訂版2013年4月26日)。地方公共団体に、次のことを指導するよう求めたものだ。
 (1)公園・街路樹等の植栽管理
 (2)農耕地での農作物の病害虫防除のため、住宅地周辺で農薬を使用する場合の遵守事項
   ・使用量を減らす。
   ・散布時間帯の配慮。
   ・周辺飛散の低減化。
   ・散布内容の住民への周知。
   ・etc.
 杉山議員は、ミツバチ被害の原因として、EU諸国で2013年12月から使用規制されたネオニコチノイド剤や、その発達神経毒性に係る研究・学説などを紹介した。そして、農薬や化学物質で健康被害を受け、日常生活に困っている人がいることを市民に知ってもらい、環境意識を高めてもらうことが大切だ・・・・という思いから、農薬を適切に使うことだけでなく、公共施設で使用される衛生害虫・不快害虫用殺虫剤や、香料の使用自粛の対策強化をも求めた。

 この定例会から5日後、9月22日。
 市の水田農業担い手協議会など三つの農業団体から、先の議会発言の取り消しを求める抗議文が届いた。いわく、
  (a)ミツバチ被害は農薬が原因だとする大学教授の説は一例であり、国などが措置する動きはない。
  (b)発達障害の児童数の増加が、農薬散布と深く関わっているとしたのは、根拠となる資料と因果関係が不十分だ。
  (c)「農家」と発言したが、一般市民も農薬を使っている。農業従事者への理解ある言葉遣いがなかった。
  (d)今回の問題は、議員活動の中で、執行部との打ち合わせや調整などのうえ、広く市民に呼びかけるべきもので、わざわざ議会の場で発言する内容とは思われない。

 この抗議に対して、「発言の訂正・削除をするつもりはない」と杉山議員は回答した。

 前年のミツバチ被害件数69件のうち、岐阜県は全国第2位の9件だった。斑点米カメムシ防除のために使用された農薬に直接被曝したミツバチが大量死している可能性が強い。今後の対策として、農薬散布時のミツバチの巣箱の避難、散布時間帯や農薬形状の液剤から粒剤への変更。・・・・などが報告されている。【「蜜蜂被害事例調査中間取りまとめ」、農林水産省、2014年6月公表】
 また、農薬を子どもの発達障害等の危険因子であるとする疫学調査が多数ある。
 くだんの農業団体の(a)や(b)の主張はおかしい。

 抗議はしかし、杉山議員と団体の間だけの問題では終わらなかった。
 定例会、9月30日。
 杉山議員の議会発言に対して、問責決議を求める議案が提出された。「農業従事者に対し、配慮を欠けた発言として、不快感をもたられた事は誠に遺憾である。よって関係者の声に充分耳を傾け、誠実かつ適切に対処することを求める」うんぬん。
 質疑の過程で、議員のどの発言のどの点がふさわしくなかったかの充分な説明もなく、単に発言が不快だ、という抗議者の言い分をそのまま受け容れただけの決議案が、賛成18、反対4で可決された。

 各務原市議会は、国の指導内容を遵守するよう求めた議員発言を多数決で封じた。
 この愚行に対し、市民だけではなく、全国から批判の動きが出ている。

□河村宏(反農薬東京グループ)「農薬使用の指導強化を訴えた議員に市議会が問責処分」(「週刊金曜日」2014年11月28日号)
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