このたびの総選挙で誰に投票すればよいかと書いた【注1】後、各党の選挙公約がほぼ出そろった。メディアも型どおりに報道した。
しかし、報道自主規制のため、有権者にとって最も重要なことが伝えられていない。すなわち、安倍政権のこれまでの実績に関する評価が伝えられていない。
その結果、有権者は非常な混乱状態に陥る仕儀となる。
<例>この選挙ではアベノミクスを進めるのか、止めるのかが問われる・・・・と安倍自民党は言う。そこには、アベノミクスは一体として前進している、という前提がある。
しかし、アベノミクスの最大の問題は、第三の矢と言われた成長戦略の中身がないことだ【注2】。
「私のドリルで岩盤規制に穴を開ける」と安倍総理は胸を張っていた。しかし、そのドリルはずっと空回りしていた。誰も止めていないのに、自分が、既得権との戦いに怖気づいて、何もできなかったのだ。
つまり、日本再生の鍵となる改革を進められなかったのは、勇気のない安倍総理の責任だ。
その安倍自民党に引き続き政権を任せていいのか・・・・ということが、本当の争点なのだ。
国民に最も人気がある、と目されている自民党若手政治家Kは、2012年(自民党がまだ野党で、谷垣禎一・総裁のころ)、こう言った。
「自民党は、日本国民に対して、三つの滞在を犯した。
(1)900兆円超の借金大国にした。
(2)少子高齢化を放置し、社会保障の基盤を危うくした。
(3)原発神話を作り、福島の事故を招いた。
この三つについて、真剣な反省をして、それに関する政策を大きく変えることが必要なのに、残念ながら民主党の失政によって、何もしなくても政権が奪回できそうな状況だ。
しかし、国民は、自民党が生み出した「失われた20年」に愛想をつかして、民主党政権を選んだ。仮に自民党が、その失敗を省みず、単に民主党の失政につけ込むだけで、何も変わらないまま政権に就いたとしたら、どうなるか。
国民は、昔の自民党の失敗を完全に忘れたりはしない。今度は、自民党は変わっていないと、あっというまに国民に見透かされてしまい、非常に短期間で、また政権の座を追われることになるのではないか」
まったくそのとおりで、自民党が犯した最大の罪は、日本を成長できない国にしてしまったことだ。
実は、若き自民党のヒーローが2012年に懸念したことが、今まさに現実のものになりつつあるのではないか。
今露呈しているのは、「アベノミクスの失敗」という短期的な問題ではない。
もっと深刻な事態なのだ。
日本をダメにした自民党が、全く変わっておらず、決して改革を進められない、という事態だ。
そして、その原因は、むろん既得権層との癒着だ。
しかし、マスコミは、選挙前に政権批判をしてはいけないという「自主規制」をかけて、この本質的な問題を一切報じなくなってしまった。その結果、皮膚感覚では
「変われない自民党」
に気づきながらも、
「改革を進めようとしている安倍政権を支持するのかどうかが問われている」
という錯覚に陥る有権者が多いのだ。
政権与党の実績に関する批判的な評価(投票の前提となる最も重要な情報の一つ)を選挙前に報道しないなら、マスコミはその存在意義を自ら否定しているのと同じだ。
【注1】「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
【注2】前掲記事。
□古賀茂明「若手ヒーローK氏の言葉 ~官々愕々第134回~」(「週刊現代」2014年12月13日号)
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
「【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案」
「【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で」
「【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権」
「【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り」
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
しかし、報道自主規制のため、有権者にとって最も重要なことが伝えられていない。すなわち、安倍政権のこれまでの実績に関する評価が伝えられていない。
その結果、有権者は非常な混乱状態に陥る仕儀となる。
<例>この選挙ではアベノミクスを進めるのか、止めるのかが問われる・・・・と安倍自民党は言う。そこには、アベノミクスは一体として前進している、という前提がある。
しかし、アベノミクスの最大の問題は、第三の矢と言われた成長戦略の中身がないことだ【注2】。
「私のドリルで岩盤規制に穴を開ける」と安倍総理は胸を張っていた。しかし、そのドリルはずっと空回りしていた。誰も止めていないのに、自分が、既得権との戦いに怖気づいて、何もできなかったのだ。
つまり、日本再生の鍵となる改革を進められなかったのは、勇気のない安倍総理の責任だ。
その安倍自民党に引き続き政権を任せていいのか・・・・ということが、本当の争点なのだ。
国民に最も人気がある、と目されている自民党若手政治家Kは、2012年(自民党がまだ野党で、谷垣禎一・総裁のころ)、こう言った。
「自民党は、日本国民に対して、三つの滞在を犯した。
(1)900兆円超の借金大国にした。
(2)少子高齢化を放置し、社会保障の基盤を危うくした。
(3)原発神話を作り、福島の事故を招いた。
この三つについて、真剣な反省をして、それに関する政策を大きく変えることが必要なのに、残念ながら民主党の失政によって、何もしなくても政権が奪回できそうな状況だ。
しかし、国民は、自民党が生み出した「失われた20年」に愛想をつかして、民主党政権を選んだ。仮に自民党が、その失敗を省みず、単に民主党の失政につけ込むだけで、何も変わらないまま政権に就いたとしたら、どうなるか。
国民は、昔の自民党の失敗を完全に忘れたりはしない。今度は、自民党は変わっていないと、あっというまに国民に見透かされてしまい、非常に短期間で、また政権の座を追われることになるのではないか」
まったくそのとおりで、自民党が犯した最大の罪は、日本を成長できない国にしてしまったことだ。
実は、若き自民党のヒーローが2012年に懸念したことが、今まさに現実のものになりつつあるのではないか。
今露呈しているのは、「アベノミクスの失敗」という短期的な問題ではない。
もっと深刻な事態なのだ。
日本をダメにした自民党が、全く変わっておらず、決して改革を進められない、という事態だ。
そして、その原因は、むろん既得権層との癒着だ。
しかし、マスコミは、選挙前に政権批判をしてはいけないという「自主規制」をかけて、この本質的な問題を一切報じなくなってしまった。その結果、皮膚感覚では
「変われない自民党」
に気づきながらも、
「改革を進めようとしている安倍政権を支持するのかどうかが問われている」
という錯覚に陥る有権者が多いのだ。
政権与党の実績に関する批判的な評価(投票の前提となる最も重要な情報の一つ)を選挙前に報道しないなら、マスコミはその存在意義を自ら否定しているのと同じだ。
【注1】「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
【注2】前掲記事。
□古賀茂明「若手ヒーローK氏の言葉 ~官々愕々第134回~」(「週刊現代」2014年12月13日号)
↓クリック、プリーズ。↓



【参考】
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
「【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案」
「【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で」
「【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権」
「【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り」
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」