衆議院選挙で与党が大勝した。静かに待っていた官僚たちが、いっせいに利権拡大へと蠢き始めた。
なかでも注目すべきは、経産省と防衛省だ。
12月14日、投開票。
12月15日、電源開発(Jパワー)が、建設中の大間原発(青森県)について、原子力規制委員会へ適合性審査の申請を行うと事前発表。
12月16日、正式に申請。
Jパワーは、経産省の最優良天下りの一つだ。選挙中の申請を抑え、与党大勝を受けて直ちに申請するように差配したのは経産省だ。
この申請には二つの意味がある。
(1)完成後最低40年、延長すれば60年は存続する。つまり、60年以上にわたり原発ゼロは実現しない、という宣言なのだ。今後の新・増設の先駆けになる。
(2)大間は日本初のフルMOX燃料の原発だから、この原発が完成すれば、再処理を止めるのは難しくなる。再処理は、死に体となった核燃料サイクル計画の根幹を成す。その死守宣言にもなっている。
同じ16日、関西電力が老朽化した高浜原発1、2号機(福井県)について、原則40年とされる運転期間を例外的に60年に延長するための特別点検の模様を報道機関に公開した。これにより、例外的60年運転への風穴が開くことになる。
翌17日、原子力規制委員会は、高浜原発3、4号機適合性審査について、事実上の合格書となる審査書案を公表した。
川内原発(九州電力)と違い、30km圏内の周辺自治体が反対する姿勢を示す中でGOサインが出た(重要)。高浜が稼働すれば、日本中の原発再稼働に道が開かれる。
同じ17日、経産省は、ある作業グループを開催した。
古い原発を廃炉にする際、資産だった原発が、逆にマイナスの資産(解体作業を必要とする)に転化する。
このコストに耐えられない(経営破綻する)、と関電などが訴えた。
そこで、負債と化した廃炉原発を資産として計上し続ける粉飾決算を認め、
会計規則を変えることによって、
その償却コストを消費者に転嫁する検討を行っているのだ。
破綻状態にあるのだから、消費者へのつけ回しの前に、株主や銀行の責任を問うべきだ。呆れ果てた「暴走」だ。
経産省に劣らぬ「暴走」をしているのが防衛省だ。
12月18日、計理装備局長が主催する会議を開いて、武器輸出推進のために国民の税金を投入する方針を打ち出した。
2014年4月、安倍政権は、これまで禁止されていた武器輸出を解禁した。
武器産業は潜水艦だ、空対空ミサイルだ、と威勢はいいが、慣れない商売だけに様々なリスクが伴う。
そこで、武器輸出促進のために、企業への補助金や低利融資の予算を獲得しようと動き出す、というのだ。
その先には、政府開発援助(ODA)を使って、病院や学校を作る代わりに、途上国に武器を買わせようという目論見まである。
安倍政権は、次の二つを成長戦略の柱としている。
①原発輸出
②武器輸出
②への税金投入により、武器産業が肥大化し、日本経済にとって大きなウェイトを持つ「第二の公共事業」が生まれる。防衛産業と強く結び付いた政治家や天下り拡大を狙う官僚が企業の意見を代弁して圧力をかける。
米国のように、防衛産業の振興や地域の武器工場維持のために社会保障予算よりも軍事予算が優先されることにつながる。
戦争ができる国になる・・・・どころではない。
世界中で戦争が起きることを望む国になってしまう。
安部総理の暴走を利用して、安部総理の暴走を超えるスピードで、官僚たちが暴走する。
「国家の暴走」が、止まらなくなってきた。
□古賀茂明「国家の暴走が止まらない ~官々愕々第137回~」(「週刊現代」2015年1月3・10日号)
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す」
「【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~」
「【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
「【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案」
「【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で」
「【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権」
「【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り」
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
なかでも注目すべきは、経産省と防衛省だ。
12月14日、投開票。
12月15日、電源開発(Jパワー)が、建設中の大間原発(青森県)について、原子力規制委員会へ適合性審査の申請を行うと事前発表。
12月16日、正式に申請。
Jパワーは、経産省の最優良天下りの一つだ。選挙中の申請を抑え、与党大勝を受けて直ちに申請するように差配したのは経産省だ。
この申請には二つの意味がある。
(1)完成後最低40年、延長すれば60年は存続する。つまり、60年以上にわたり原発ゼロは実現しない、という宣言なのだ。今後の新・増設の先駆けになる。
(2)大間は日本初のフルMOX燃料の原発だから、この原発が完成すれば、再処理を止めるのは難しくなる。再処理は、死に体となった核燃料サイクル計画の根幹を成す。その死守宣言にもなっている。
同じ16日、関西電力が老朽化した高浜原発1、2号機(福井県)について、原則40年とされる運転期間を例外的に60年に延長するための特別点検の模様を報道機関に公開した。これにより、例外的60年運転への風穴が開くことになる。
翌17日、原子力規制委員会は、高浜原発3、4号機適合性審査について、事実上の合格書となる審査書案を公表した。
川内原発(九州電力)と違い、30km圏内の周辺自治体が反対する姿勢を示す中でGOサインが出た(重要)。高浜が稼働すれば、日本中の原発再稼働に道が開かれる。
同じ17日、経産省は、ある作業グループを開催した。
古い原発を廃炉にする際、資産だった原発が、逆にマイナスの資産(解体作業を必要とする)に転化する。
このコストに耐えられない(経営破綻する)、と関電などが訴えた。
そこで、負債と化した廃炉原発を資産として計上し続ける粉飾決算を認め、
会計規則を変えることによって、
その償却コストを消費者に転嫁する検討を行っているのだ。
破綻状態にあるのだから、消費者へのつけ回しの前に、株主や銀行の責任を問うべきだ。呆れ果てた「暴走」だ。
経産省に劣らぬ「暴走」をしているのが防衛省だ。
12月18日、計理装備局長が主催する会議を開いて、武器輸出推進のために国民の税金を投入する方針を打ち出した。
2014年4月、安倍政権は、これまで禁止されていた武器輸出を解禁した。
武器産業は潜水艦だ、空対空ミサイルだ、と威勢はいいが、慣れない商売だけに様々なリスクが伴う。
そこで、武器輸出促進のために、企業への補助金や低利融資の予算を獲得しようと動き出す、というのだ。
その先には、政府開発援助(ODA)を使って、病院や学校を作る代わりに、途上国に武器を買わせようという目論見まである。
安倍政権は、次の二つを成長戦略の柱としている。
①原発輸出
②武器輸出
②への税金投入により、武器産業が肥大化し、日本経済にとって大きなウェイトを持つ「第二の公共事業」が生まれる。防衛産業と強く結び付いた政治家や天下り拡大を狙う官僚が企業の意見を代弁して圧力をかける。
米国のように、防衛産業の振興や地域の武器工場維持のために社会保障予算よりも軍事予算が優先されることにつながる。
戦争ができる国になる・・・・どころではない。
世界中で戦争が起きることを望む国になってしまう。
安部総理の暴走を利用して、安部総理の暴走を超えるスピードで、官僚たちが暴走する。
「国家の暴走」が、止まらなくなってきた。
□古賀茂明「国家の暴走が止まらない ~官々愕々第137回~」(「週刊現代」2015年1月3・10日号)
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【参考】
「【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す」
「【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~」
「【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
「【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案」
「【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で」
「【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権」
「【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り」
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
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「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
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「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」