語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】来年4月から始まる健康マークの幻想

2014年12月09日 | 医療・保健・福祉・介護
 健康マーク認証制度が2015年4月から始まる。
 スーパーマーケット、コンビニエンスストア、宅配から外食産業まで、どんな業種業態であろうが、国が決めた基準を満たせば「健康マーク」を表示することができる。

 この認証制度は、<消費者は、分かりやすいマーク(適切な情報)をもとに選ぶことで、手軽に「健康な食事」の食事パターンに合致した料理を入手し、組み合わせて食べることができる>一方、<小売業や外食産業は、作り手の優れた技術により質を保証した料理を提供し、そのことをマーク(適切な情報)で表現できる>のだ。【厚生労働省「日本人の長寿を支える『健康な食事』のあり方に関する検討会」報告書】
 国が認証した健康マークの食品を食べていれば、健康で長生きできる・・・・夢の制度に見えるが、むろん、健康はそんなに簡単には得ることはできない。
 認証マークを作った厚生労働省自身、「マークが表示された食品を食べれば健康になるということではない」とハッキリと、つれなくおっしゃっている。

 そもそも厚労省(国)は、以前から、健康21や食事バランスガイドなどで、1食分ではなく1日分での、バランスのとれた食生活を推奨している。
 しかも、年齢や運動量の差による違いも考慮した食事摂取基準を示している。

 今回の認証制度では、
 (1)塩分(食塩相当量)
 条件(基準)は1食3g未満=条件(基準)は1日3食分で9g未満
 ところが、2015年版食事摂取基準では、1日あたりの塩分目標摂取量は、12歳以上の
  ・男性は8g未満
  ・女性は7g未満
 よって、認証マークの食品・料理を食べると摂取目標値を上回る。

 (2)摂取カロリー
 1食分650kcal未満(1日3食分で1,950cal未満)。
 ところが、食事摂取基準では、1日あたりの推定エネルギー必要量は、18~49歳の
  ・男性は2,300~3,150kcal
  ・女性は1,650~2,300kcal
 よって、認証マークの食品・料理を食べるだけでは、多くの人が目標摂取量を確保することができない。
 厚労省が作った目標値を厚労省自身が破っているのだ。

 しかも、この制度は有機JAS制度のように第三者機関などが認証するものではない。認証に国や公正な機関が関わることがなく、あくまで自己認証の制度だ。小売店、製造業者、外食産業などの事業者が、基準を満たしていると思えば、勝手にマークを表示できる。

 では、国の基準が実際に守られているかどうかを厚労省などが監視、摘発するかというと、2015年4月からスタートするのに、まだ何も決まってない。よって、事業者のやりたい放題になる可能性がある。
 厚労省は、この制度の普及を本気で望んでいるのか?
 厚労省は、「認証マークの食品を食べれば健康になる、と誤解されて定着する恐れがある」ので、普及しないことを望んでいるのか?

 認証制度は、安部総理が成長戦略の一つとして強引に推し進めた。しかし、家庭料理より小売店で販売される弁当・総菜・外食を奨励することが健康につながるというのはマユツバだ。
 1日あたりの食生活全体で健康を考えてきた厚労省(世界的にも同じ)にとっては、今回の制度作りはこの上もなく迷惑至極な作業だろう。
 健康マーク食品を食べていれば健康になれる、というのは幻想にすぎない。

□垣田達哉「誰のため? 何のため? 来年4月から始まる健康マーク」(「週刊金曜日」2014年11月28日号)
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